コードを知る前に、DADGADで弾いていた
──ギタリストとしてはメタルやプログレがルーツにあるというのは聞いたことがありますが、弾き語りのルーツはどういったところにありますか?
そもそも歌を始めたのが高校1年生の頃で、今のレーベルから声をかけていただいてからなんです。その前からアコギは持っていましたけど、歌ってはいなくて。なので弾き語り自体、自分の曲を作るようになってから始めたんです。
──では、それまで弾き語りでカバーをしたりは?
まったくないです。特殊なほうかもしれないですね(笑)。
──デビュー曲の「日日」はフィンガースタイル・ソロ・ギターのようなプレイですが、このスタイルのルーツはどうですか?
中学生の頃からJYOCHO、Daijiro Nakagawa(だいじろー)さんが好きで、ライブも観に行ったりしていて。だいじろーさんは基本はエレキですけど、ソロでアコギの作品を出していますし、ひとりで弾いているYouTubeの動画もめっちゃ好きだったんです。それを自分でもやってみたいと思ったのが最初ですね。
そこから彼のインタビューを読んだりして、ピエール・ベンスーザンとか、(ボディを)叩く系の人も聴いたりするようになりました。
──弾き語りをやるとなった時に、そういったフィンガースタイル系のギターと歌が一緒になるのは自然な流れだったんですね。
当時、自分にしかできないことって何だろうって考えて、ギターのおいしさを伝えつつ、歌もうまく混ぜることをテーマにしていたんです。で、その頃から何も考えないでDADGADチューニングで弾くっていうことを日常的にやっていたので、自然な流れだったんだと思います。DADGADは普通のチューニングよりも身体に近い感覚で弾けるんです。
オープンチューニングは制限される面もあるけれど、開放で弾いても音がはずれないので安心感があるというか。で、レギュラー・チューニングでのコードを知る前に、DADGADでギターを弾いていたんです。コードを覚えたのが本当にここ数年くらいで。
──え、そうなんですか!?
感覚的にはわかっていたと思いますけど、コードが何かはちゃんと理解していなくて。それを理解する前にDADGADが体に染みついていて、もしかしたら歌と合わせたら面白いんじゃないかなって思ったんです。
──エレキでプログレやメタルをやっている中で、アコギのそういったスタイルにも同時に触れていたんですか?
小学校6年生でギターを始めて、クラシカルなメタルやプログレを弾いたりしていたあとに、ギター・インストにハマったんです。それでCHONやプリニ、マテウス・アサトとかを聴くようになって、弾くジャンルも広がっていったんです。
で、その頃に地元の知床を離れて、その自然に対する郷愁を抱えていた中で、アコースティックなサウンドを求めるようになったというか。ボン・イヴェールやシガーロスのようなアコースティックっぽい要素が入った音楽を好んで聴くようになっていったんです。
弾き語りというジャンルは超人の音楽になっていく
──「日日」や「台風の目」は、印象的なフレーズから始まる、弾き語りをベースにした楽曲です。アコギで歌ものを作ろうと思って生まれるプレイではない気がするのですが、あれらのフレーズはどのように生まれたんです?
「台風の目」の場合は……例えば5弦の5フレットと4弦の0フレットは同じ音が鳴るじゃないですか。でも、同じ音だけど弦の太さが違うから、ニュアンスが少し変わるんですよね。
それを並べたフレーズをやりたいっていうところから始まって。ギター・ソロは、5弦と4弦でそれをやったら、次は4弦と3弦、みたいに展開していくんですけど、まずそこができてから“これを楽曲にできるかも”っていう流れで作った感じでした。エレキっぽいフレーズで、開放弦の感じは完全にマスロックですよね。
──「台風の目」は弾き語りでやる時もイントロやソロのフレーズはそのままですが、弾き語りでの単音弾きって、怖くてなかなかできないですよ……。
そもそも弾き語りをあまり知らなかったからできたんでしょうね。シンプルにギタリスト出身だったから思いついたもので、さらにテイラー(814ce)が弾きやすいギターだったから実現できた。
──ただ、フレーズの頭にコード・ストロークを一発入れていることで、ジャズのソロ・ギターのように成り立っている感覚もあります。
ギター1本で成り立たせたかった気持ちがあったんです。例えばこういうフレーズで、ひとりがジャージャッてコードを弾いて、もう片方が単音を弾くのでは、グルーヴが生まれないと思ったんです。ひとりで弾くからこそ出せるグルーヴを、かなり意識して作っていて。重心を感じさせながら速弾きもうまく入り込んでいるフレーズで、自分の中でもお気に入りですね。
──逆に「日日」は広がりのあるアルペジオで、全体で和音を感じさせるフレーズです。
あれはまた別の発想でチューニングを変えている曲ですね。DADGADでギターはアイリッシュっぽいんだけど、なぜか歌は歌謡曲のメロディで、音楽的に謎のことが起こってるみたいな感じにしたかったんです。
──例えば「大都会とアゲハ」の弾き語りではルーパーを使っていますが、バンドの曲を弾き語りにアレンジするのに苦労するところはありますか?
いえ、むしろ制約がないので楽しいですね。どれだけでも自分のタイミングで弾けるし、即興っぽいこともできる。ほかの楽器もいないから、音がかぶる心配もなく、自由にできますから。
──ルーパーもエド・シーランの登場以来、ポピュラーになりましたよね。ルーパーに限らず、弾き語りの可能性はどう感じますか?
いまだに新しい奏法で歌う人が出てくるっていうのがすごいですよね。自分もそうなりたいというのもあります。で、弾き語りは超人の音楽になっていくジャンルだと思うんですよ。頭ではわかっているけど、歌と違うリズムで右手を動かせない、っていうフレーズも、何回も練習すればできるかもしれない、みたいな。
本当に半分スポーツ的な要素も混じってきてると思っています。“もしかしたらできるかもしれない”が、たぶんほかのスタイルよりも多いと思うんです。それがギターで弾き語ることの面白いところですよね。ルーパーもエフェクターも新しいものが出てくるし……うん、可能性しかない。
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インタビューの続きは『アコースティック・ギター弾き語りの新時代』にてお楽しみください!

















