井草聖二 meets SHINOS INCLINE & incline Jr.
incline Jr.

incline Jr.は1チャンネル仕様のアコースティック・ギター用アンプ。ウーファーとツィーターの中心軸が一致する10インチ“同軸スピーカー”の採用により、サウンドホールから音が放たれるように、低音から高音までが同じ位置から出力される。
11バンドのグラフィックEQやハイパス・フィルター、ミュート・スイッチなども搭載。プリ/ポストDIアウトも備えており、ステージでPAにラインで送ることも可能。
Igusa’s Impression
“ピエゾってこんなに良い音がするんだ”と衝撃を受けました──井草聖二
incline Jr.は、まずアンプならではの力強さを感じました。このワット数(350W/外部スピーカー接続時は700W)のアンプを使ったことはなかったんですけれども、ヘッドルームが広いことによって、“ピエゾってこんなに良い音がするんだ”と衝撃を受けましたね。レンジも広くて、生で弾いているタッチのまま弾ける感覚です。それにピエゾの音を無理に生っぽくするのではなく、ピエゾの上質な音をそのまますっと出してくれるのが、弾いていて気持ちいいんです。
で、INCLINEは今回、2チャンネルそれぞれにインピーダンスの違うピエゾ・ピックアップとマグネティック・ピックアップをYケーブルを使って直で入れてみたのですが、まったくノイズが乗らない。しかもゲインが足りないとローがなくなってしまうんですけれども、これはしっかりとローも出ている。ここまでゲインの幅が広いことが衝撃でした。
どちらも、良いギターを持って、良いプレイをしたら良い音が出る……ある意味ごまかしが効かないアンプです。でも、このアンプの音を聴きながら練習をすれば、タッチにもさらに敏感になる。自分も成長させてくれるような機材だと感じました。
Talk Session
井草聖二× 篠原勝(SHINOS AMPLIFIER COMPANY)

プレーン弦の低い帯域もこのアンプは再現してくれる
──井草
──“ニューギア・サウンド・チェック”でもINCLINEとincline Jr.を弾いてくれましたが、その時もすごく驚いてしましたね。どんなところに違いを感じましたか?
井草 アコースティック・ギター対応のアンプって15〜30ワットぐらいが定番で、それはそれでスッキリした音が出て気持ちよかったりするんですよ。ただ、生音をマイクで録った時の音って、プレーン弦でも低い帯域のアタック音が乗っかってると思うんです。このアンプは大きさのおかげもあってか、そこを再現してくれるんです。
あとは低音を弾いた時に、軽量なアンプだと本体が揺れて音がねじれてしまう時がたまにあるんですけれども、しっかりと重量があるのでガツンと鳴らしても微動だにしない。それもあって、ハウリングにも強そうだと感じました。
篠原 キャビネットも普通はこんなにどっしりさせないと思うんですよ。重たいと持ち運びが大変になるので。でも、しっかりした木材でキャビネットを組まないと、おっしゃるように揺れちゃったりしてしまう。もともとプロがステージで使うという前提で作っているので、そういう妥協もなく、中の設計も全然違っているんですよね。スピーカーも超高級なものが入っていますし、オペアンプもあまりギター・アンプには使わないものを使っているんです。
井草 まったく歪みがなくて透明感があるのは、ステージで弾いていて安心感がありますよ。あと、スピーカーによってはステレオ感が強くて細く感じてしまう時もあるんですけれども、このアンプに関しては特にプレーン弦を単音で弾いた時の太さがしっかりと感じられるサウンドになっていますよね。
篠原 それは同軸スピーカーを搭載してるからかもしれませんね。同軸スピーカーはウーファーの真ん中にツィーターが入っていて、同じところから出てくれるんです。マイクで集音する時に、ウーファーとツィーターが違う位置にあると、1本では集音できないんですよ。INCLINEはステージ上でマイクで拾うことが前提だったので、同軸スピーカーは必須でした。
井草 たしかに、ギター・アンプはモニター用としてだけ置いていて、外音はラインでPAさんに送る場合が多いんですけれども、これならマイクをセッティングすればきれいな音が届けれらそうですね。
篠原 うしろにライン・アウトもついているので、DIアウトとしてPAさんに送ることもできます。もちろん、ラインとマイクで拾った音をミックスするっていうことも。
井草 うん、隙がないですね。
──普段はPAスピーカーから出力することが多いと思いますが、井草さんがギター・アンプを使うならどういう時でしょうか?
井草 PAを通すと広がりがある素晴らしい音は出るんですけれども、例えばホールだとその会場の響きっていうのは感じづらくなるんですよ。だから、自分が弾く楽器の位置におけるアンプは、そこから音が広がっていって、ホール全体に広がるようにできるんです。聴いている側も遠くのスピーカーから鳴るよりも、抱えているギターの近くから音が出ているほうがすごく自然に聴こえると思うんですよね。そういったシーンではこういうアンプが大活躍するんじゃないかなと思います。
篠原 ぜひホールで使ってほしいですね。あと音とはあまり関係ありませんが、ビジュアル的にギタリストの横やうしろに、支えになる同志がいてほしいというか。そこから音が鳴っていて、ミュージシャンを支えているっていうのが見た目的にもカッコ良いと感じるんです。
井草 特にソロ・ギターだとひとりでステージに立つので、自分とギターだけだとちょっとソワソワしちゃう時があるんです(笑)。近くにアンプがいてくれると心強いですね。
絶対にINCLINEでは故障を起こしたくなかった──篠原
──ほかに井草さんが気になったポイントはありますか?
井草 リバーブはミックスだけを変えられる仕様ですけど、このデフォルトの設定がすごくアコースティックにマッチしていると感じました。どういった種類のものが入っているんですか?
篠原 アキュトロニクスというメーカーのデジタル・リバーブ・モジュールで、そこだけパッケージされたものを搭載しています。というのは、実際のスプリングを搭載しているアンプも多いんですけれど、断線してしまったり、どうしても故障が多いんです。INCLINEでは絶対に故障を起こしたくなかったので、デジタルのモジュールを採用したんです。
井草 ディケイやプリ・ディレイの感じも、深くかけても全然いやらしくならず、アコースティック・サウンドをすっと支えてくれるようなリバーブ感がすごくいいです。
篠原 私からもひとつ聞かせてください。私が仕事をしてきたギタリストたちは、モニターからの返しに“ピエゾくさい”と言う人も多かったのですが、井草さんはモニターの返しについて“ここを改善したい”と感じたいことはありますか?
井草 “アコースティックの良い音”ってエレキほど確立されていなくて、人によってイメージが違いすぎるんです。なので、まず自分にとっての良い音をPAさんに伝えるのが難しいんですね。人によっては高音がシャリシャリした音がアコースティックだと感じる人もいれば、逆にローミッドがリッチな音が好きな人もいる。それを言葉で伝えるのはなかなか難しいので、僕の場合は普段あらかじめラインで録った音源をPAさんに渡したりして、こういう音が理想ですと伝えるんです。
60Hz以下のカットがデフォルトで入っていたりするので、そこを少し上げてもらって20〜30Hzより下をカットしてくださいって言ったり。特にローの処理は毎回ディスカッションしています。
篠原 井草さんの場合はひとりでやっているから、そこまで切る必要ないんでしょうけど、ドラムやベースがいて、アコースティック・ギターがアンサンブルの一部となる場合は、その低い帯域はいらなかったりするんですよね。PAさんによっては“アコースティック・ギター”というだけで、その帯域をカットしてしまうのかもしれません。
井草 そうですよね。そういう意味では、INCLINEであらかじめ低音も鳴らしておけば、PAさんに“このギタリストは低音が必要なんだな”ってことを伝えることができますし、そのひと手間がなくなるかもなって思いますね。
──最後に、INCLINE、incline Jr.はどのようなギタリストにオススメかを聞かせてください。
井草 ソロ・ギタリストにも2パターンいて、音圧の高いギターの音をダイレクトに届けたい人と、繊細な広がりのある音を届けたい人がいると思うんです。incline Jr.はドライなサウンドでドライブ感を出しながら圧を届けたいっていう、前者のような方にピッタリだと思います。で、INCLINEは逆に繊細なプレイをする方にオススメです。incline Jr.でもまったく問題はないのですが、よりダイナミック・レンジが広くて、指のタッチの音まで聴こえるような演奏にピッタリだと思いました。
SHINOS/incline Jr.
◎Specification
- 出力:350W(外部スピーカー接続時は700W)
- チャンネル数:1
- スピーカー:ベイマ製10CX300Fe
- コントロール:ゲイン、ハイパス・フィルター、ミュート、11バンドGEQ、リバーブ、マスター・ボリューム、ヘッドフォン・ボリューム
- 入出力端子:インプット、ヘッドフォン・アウト、プリDIアウト、ポストDIアウト、センド、リターン、フットスイッチ、外部スピーカー・アウト
- 寸法:430(W)×300(D)×540(H)mm
- 重量:22kg
◎価格
279,400円(税込)
※公式オンラインショップでの販売価格
https://shop.shinosamp.com/product/inclinejr/
◎問い合わせ
SHINOS AMPLIFIER COMPANY https://shinosamp.com/
SHINOS/INCLINE
◎Specification
- 出力:350W(外部スピーカー接続時は700W)
- チャンネル数:2
- スピーカー:ベイマ製12CXA400Nd
- コントロール:ゲイン×2、ミュート×2、11バンドGEQ×2、リバーブ×2、ボリューム×2、ロー・カット×2、マスター・ボリューム、ヘッドフォン・ボリューム
- 入出力端子:XLR/PHONEコンボ・インプット×2、ヘッドフォン・アウト、プリDIアウト×2、ポストDIアウト、センド×2、リターン×2、フットスイッチ×2、外部スピーカー・アウト
- 寸法:488(W)×300(D)×540(H)mm
- 重量:27kg
◎価格
462,000円(税込)
※公式オンラインショップでの販売価格
https://shop.shinosamp.com/product/incline/
◎問い合わせ
SHINOS AMPLIFIER COMPANY https://shinosamp.com/











