第一部は世界各国のブランドが集結
アコースティック・ギター・マガジンの新製品レビュー企画“ニューギア・サウンド・チェック”。そのリアル・イベントとして、誌面でもレビュアーを務める井草聖二が2部にわたって全8モデルを試奏してくれた。
まずは2023年にインドネシアで創業したブロモ・ギターズのエレガット、BEN2Cをチェック! 生音は“低音もしっかりしていてシンラインのボディとは思えない鳴り。でもフルサイズのクラシック・ギターなどよりも抑えられているので、近所迷惑にはならない感じですね”。アンダーサドルとボディ内部に取り付けられた2種類のピックアップについて、“トランスデューサーが付いているので、デュアル・ピックアップを買わずとも、モダンな「叩き系」スタイルにも対応してくれます”と実演を交えてレビュー。

続いては、2025年に90周年を迎えたK.ヤイリから、“入門者や若い世代にも親しみやすい1本”をテーマに作られた記念モデル、LAPIS。小柄なシェイプは“右肘が上がらずに自然な姿勢で弾けます。それと635mmスケールなのでテンション感もありつつ、押さえやすいです”と弾き心地についてコメント。パッシブ・ピックアップのサウンドについては、“めちゃくちゃ生っぽいです。太さがしっかりとありますね。パッシブなのにノイズのなさが驚異的です”と賞賛。

3本目はイーストマンのドレッドノート、E20-D-TC-LSH。トニー・ライスの1935年製D-28をモチーフにした、“ラージ・サウンドホール”を持つ1本だ。第一印象は、“まず低音がドーンと来ます。「アコースティック・ギターの良い音」と言って最初にイメージする音”。また“トラディショナルなドレッドノートなのに、弾き心地はモダン。弦高も低く、テンション感もあまり強くないのでさらさら弾けます”とその弾き心地についても語ってくれた。

メイトンからはサウンドメッセ限定モデルのEBG808PF LTDがエントリー。通常の808よりも薄胴なのが特徴のひとつで、“ミドルが豊かで、特に3、4弦のロー・ミッドにピークがきている感じ。特にライン・サウンドは、シン・ラインの感じがすごく前に出ますね。低音がすっきりしていて、中高音の立ち上がりが速い印象です。粒立ちがはっきりしていて、どんなシチュエーションでも埋もれないと思います”とサウンドへの影響をわかりやすく教えてくれた。

さまざまなボディ・サイズの実力派をチェック
2部は、ギルドのTravel Spruceの試奏から開始。トラベル・サイズのボディに569mmのスケールを合わせたモデルで、“ミニ・ギターらしいポコポコした音かつ、アーチ・バックのおかげか低音もリッチな雰囲気”とコメント。また“このサイズだとピッチも気になるところですが、ハイ・ポジションまで手を抜いていない”と、老舗ブランドらしい確かな実力についても語ってくれた。

2本目は、米バーモント州にあるアイリス・ギター・カンパニーのThe BB MODEL(Tobacco Burst / Adirondack Spruce Top)。50〜60年代のアメリカでのフォーク・ブーム時に流行ったパーラー・ギターを現代風に再現したモデルで、“ビンテージ感がありつつ、ピックガードのカットはエッジが立っていて現代的”と井草談。サウンドの印象は“ミドルが強烈に前に出ます。フォークの時代のサウンドを感じるので、3フィンガーも合いそうです”とのこと。
最後は、ヤマハのアコースティック・ラインのフラッグシップ・モデルFS9 MX。“コンサート・サイズでボディが小さめだからか、生音はすっきりしている”とファースト・インプレッション。また本器搭載のピエゾ、コンデンサー・マイク、センサー・マイクをブレンドできるピックアップ・システム“Atmosfeel”について“完全にステージ向け。3ウェイだと操作がわからなくなることが多いですが、これは直感的に混ぜられます。エレアコの完成形みたいなピックアップ”と大絶賛。

総評として、多くの新製品ギターを試奏する中で感じることを聞くと、“個人的には、アコギはエレキの世界よりも混沌としているなと思います。ピックアップもどんどん最新のものが出てきますし、最新技術がより入ってくる感じがして。各社が答えを探して、どんどんアップデートしている感じが面白いです”と答えてくれた。
試奏ラインナップ
Bromo Guitars/BEN2C
EASTMAN/E20-D-TC-LSH
GUILD/Travel Spruce