阿部真央がデビュー15周年記念の弾き語りライブで用意した4本のアコースティック・ギター

2024年にデビュー15周年を迎えたシンガー・ソングライターの阿部真央。その節目を記念して開催された“15th Anniversary Abe Mao Solo Live Tour 2024”の東京公演にて、阿部が愛用するアコースティック・ギター4本とその周辺機材を取材した。

取材・文=角佳音 撮影=星野俊

Gibson/J-200N

Gibson/J-200N(前面)
Gibson/J-200N(背面)

阿部の歌声を温かく包み込む“キング・オブ・フラットトップ”

阿部のメイン・ギターは1966年製のGibson J-200N。ボディ・トップにスプルース、サイド&バックにメイプル、ネックはメイプルにローズウッドを挟んだ5ピース。またフィンガーボードと、J-200の特徴のひとつである“マスターシュ・ブリッジ(=口髭の形状をしたブリッジ)”にローズウッドという材構成となっている。

入手時にはブリッジにチューン・オー・マティックが搭載されていたが、ブリッジの木部を改造しアンダーサドル・ピックアップを追加、フィックスド・サドルに変更。なおピックアップは、今回登場するすべてのモデルに共通してL.R.BaggsのElementが使われている。またペグは、復刻版のワッフル・バッグへと交換してある。

マスターシュ・ブリッジ
マスターシュ・ブリッジ
ワッフル・バック・ペグ
復刻版のワッフル・バック・ペグ

2020年頃に入手した本器について、ギター・テックを務める山本キヨシ氏に話を聞いたところ、“以前から、真央ちゃんにはJ-200が合うんじゃないかと思っていたんです。で、一緒に楽器店に行った時にこれが置いてあって。試奏したらすぐに気に入ったみたいで、即断で購入していました。自分の音楽に必要だと思ったら、J-200でもすぐに買っちゃうのが真央ちゃんのすごいところ”と語ってくれた。

今回の公演では、「ロンリー」や「貴方の恋人になりたいのです」といったデビュー初期の楽曲から、「Maybe」や「Somebody Else Now」など、2024年8月リリースの最新アルバム『NOW』に収録された新曲にも使用。優しいタッチのコード弾きや穏やかで深く響くようなアルペジオを聴かせ、阿部の力強い歌声を温かなサウンドで包み込んだ。

Amrita Custom Guitars/F-Model

Amrita Custom Guitars/F-Model(前面)
Amrita Custom Guitars/F-Model(背面)

力強いピッキングにしっかりと応じるAmritaのF-Model

Amrita Custom GuitarsのF-Modelは、阿部が10年ほど前に入手した1本。サイド&バックに美しい杢目のブラジリアン・ローズウッドが使用されているゴージャスなルックスが印象的だ。

以前に比べると“よく鳴るようになってきた”ようで、後述する同ブランドのD-Modelとどちらを使うかは、その時の感覚で決定しているとのこと。

本公演では、阿部の“懐かしい曲をやります”という言葉から始まった「優しい言葉」や「どこ行った?」、また「Believe in yourself」など、早いストロークで力強くコードをかき鳴らす楽曲での使用が多く見られ、バランスの取れた鳴りを感じることができた。

Ibanez/AEL15E

Ibanez/AEL15E(前面)
Ibanez/AEL15E(背面)

「母の唄」のみで聴くことができる、長年の相棒の音色

阿部がプロ・キャリアの初期から長年使用しているIbanezのAEL15Eは、単独公演のラストで披露される、未収録楽曲の「母の唄」でのみ使用されるモデルで、今回も同曲にて登場。

本器について山本氏に聞くと、“長らく使い込んだギターだから、いろんなところの耐久性が持たなくて、ペグも何回か変えていますね。でも、あの曲(「母の唄」)にはこれを使うっていう決まりなんです”と話してくれた。

また、既存のピックアップ・システムは使用せず、L.R.Baggsを搭載しているため、エンドピンはジャック仕様に変更されている。

なお弦は、マーティン製のミディアム・ゲージを採用。ほかの3本にはライト・ゲージが張られている。

以前のプリアンプのセッティングが動かないように、テープで固定してある
以前のプリアンプのセッティングが動かないように、テープで固定してある

Amrita Custom Guitars/D-Model

Amrita Custom Guitars/D-Model(前面)
Amrita Custom Guitars/D-Model(背面)

かつてはメイン・ギターとして愛用していた1本

今回の公演では使用されなかったが、サブ・ギターとして控えていたAmritaのD-Model。先に登場するF-Modelとほぼ同時期に入手したモデルで、ボディ・トップにスプルース、サイド・バックにブラジリアン・ローズウッドが使用されている。

ベスト・アルバム『阿部真央ベスト』(2019年)などのジャケットにも登場していたりと、かつては阿部がメイン・ギターとして使っていたモデルで、サウンドホールの周りには弾き込んだ跡が見られた。

サウンドホール周りに見られる弾き込みの跡
サウンドホール周りに見られる弾き込みの跡

Pedalboard

阿部真央のペダルボード
J-200N用:
①DigiTech/HT-6 Polyphonic Tuner(チューナー)
②Amrita/Preamp D.I.(プリアンプ/DI)
F-Model用:
③DigiTech/HT-6 Polyphonic Tuner(チューナー)
④Amrita/Preamp D.I.(プリアンプ/DI)
AEL15E用:
⑤TC Electronic/Polytune 3(チューナー)
⑥Radial/J48(DI)

⑦Vital Audio/VA-R8(パワーサプライ)

“アコギがアコギらしく聴こえるセッティング”を目指したペダルボード

阿部のペダルボードは、左からGibson J-200N用、Amrita Custom Guitars F-Model用、Ibanez AEL15E用と3系統に分かれている。

J-200N用とF-Model用のシステムは同じ機材構成で、ギターからAmritaの Preamp D.I.を経由してPAへと送られている。このプリアンプは阿部が長年愛用しているもので、それぞれ“エレアコ臭さが出ないように、アコギがアコギらしく、よりナチュラルに聴こえるセッティング”に固定されているとのこと。なお、チューナーはプリアンプのSND/Tuner端子に接続。

またAEL15Eは、TC ElectronicのPolytune 3を経由してRadial J48から出力。Polytune 3はもともとホワイト・カラーのモデルだが、ペダルボードに馴染むように黒いテープを巻いてある。

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ギター・ピック
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『NOW』阿部真央

Track List

  1. Hands and Dance
  2. Somebody Else Now
  3. Keep Your Fire Burning
  4. Everyday
  5. Maybe
  6. Go Away From You
  7. 進むために
  8. I‘ve Got the Power
  9. またどこかで会えたら
  10. Somebody Else Now -Acoustic ver.-

PCCA-06305/PONY CANYON/IRORI Records/KAGAYAKI RECORDS

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