Gibson/J-200N
阿部の歌声を温かく包み込む“キング・オブ・フラットトップ”
阿部のメイン・ギターは1966年製のGibson J-200N。ボディ・トップにスプルース、サイド&バックにメイプル、ネックはメイプルにローズウッドを挟んだ5ピース。またフィンガーボードと、J-200の特徴のひとつである“マスターシュ・ブリッジ(=口髭の形状をしたブリッジ)”にローズウッドという材構成となっている。
入手時にはブリッジにチューン・オー・マティックが搭載されていたが、ブリッジの木部を改造しアンダーサドル・ピックアップを追加、フィックスド・サドルに変更。なおピックアップは、今回登場するすべてのモデルに共通してL.R.BaggsのElementが使われている。またペグは、復刻版のワッフル・バッグへと交換してある。
2020年頃に入手した本器について、ギター・テックを務める山本キヨシ氏に話を聞いたところ、“以前から、真央ちゃんにはJ-200が合うんじゃないかと思っていたんです。で、一緒に楽器店に行った時にこれが置いてあって。試奏したらすぐに気に入ったみたいで、即断で購入していました。自分の音楽に必要だと思ったら、J-200でもすぐに買っちゃうのが真央ちゃんのすごいところ”と語ってくれた。
今回の公演では、「ロンリー」や「貴方の恋人になりたいのです」といったデビュー初期の楽曲から、「Maybe」や「Somebody Else Now」など、2024年8月リリースの最新アルバム『NOW』に収録された新曲にも使用。優しいタッチのコード弾きや穏やかで深く響くようなアルペジオを聴かせ、阿部の力強い歌声を温かなサウンドで包み込んだ。
Amrita Custom Guitars/F-Model
力強いピッキングにしっかりと応じるAmritaのF-Model
Amrita Custom GuitarsのF-Modelは、阿部が10年ほど前に入手した1本。サイド&バックに美しい杢目のブラジリアン・ローズウッドが使用されているゴージャスなルックスが印象的だ。
以前に比べると“よく鳴るようになってきた”ようで、後述する同ブランドのD-Modelとどちらを使うかは、その時の感覚で決定しているとのこと。
本公演では、阿部の“懐かしい曲をやります”という言葉から始まった「優しい言葉」や「どこ行った?」、また「Believe in yourself」など、早いストロークで力強くコードをかき鳴らす楽曲での使用が多く見られ、バランスの取れた鳴りを感じることができた。
Ibanez/AEL15E
「母の唄」のみで聴くことができる、長年の相棒の音色
阿部がプロ・キャリアの初期から長年使用しているIbanezのAEL15Eは、単独公演のラストで披露される、未収録楽曲の「母の唄」でのみ使用されるモデルで、今回も同曲にて登場。
本器について山本氏に聞くと、“長らく使い込んだギターだから、いろんなところの耐久性が持たなくて、ペグも何回か変えていますね。でも、あの曲(「母の唄」)にはこれを使うっていう決まりなんです”と話してくれた。
また、既存のピックアップ・システムは使用せず、L.R.Baggsを搭載しているため、エンドピンはジャック仕様に変更されている。
なお弦は、マーティン製のミディアム・ゲージを採用。ほかの3本にはライト・ゲージが張られている。
Amrita Custom Guitars/D-Model
かつてはメイン・ギターとして愛用していた1本
今回の公演では使用されなかったが、サブ・ギターとして控えていたAmritaのD-Model。先に登場するF-Modelとほぼ同時期に入手したモデルで、ボディ・トップにスプルース、サイド・バックにブラジリアン・ローズウッドが使用されている。
ベスト・アルバム『阿部真央ベスト』(2019年)などのジャケットにも登場していたりと、かつては阿部がメイン・ギターとして使っていたモデルで、サウンドホールの周りには弾き込んだ跡が見られた。
Pedalboard
“アコギがアコギらしく聴こえるセッティング”を目指したペダルボード
阿部のペダルボードは、左からGibson J-200N用、Amrita Custom Guitars F-Model用、Ibanez AEL15E用と3系統に分かれている。
J-200N用とF-Model用のシステムは同じ機材構成で、ギターからAmritaの Preamp D.I.を経由してPAへと送られている。このプリアンプは阿部が長年愛用しているもので、それぞれ“エレアコ臭さが出ないように、アコギがアコギらしく、よりナチュラルに聴こえるセッティング”に固定されているとのこと。なお、チューナーはプリアンプのSND/Tuner端子に接続。
またAEL15Eは、TC ElectronicのPolytune 3を経由してRadial J48から出力。Polytune 3はもともとホワイト・カラーのモデルだが、ペダルボードに馴染むように黒いテープを巻いてある。
Other Items
『NOW』阿部真央
Track List
- Hands and Dance
- Somebody Else Now
- Keep Your Fire Burning
- Everyday
- Maybe
- Go Away From You
- 進むために
- I‘ve Got the Power
- またどこかで会えたら
- Somebody Else Now -Acoustic ver.-
PCCA-06305/PONY CANYON/IRORI Records/KAGAYAKI RECORDS