マンドリンの魅力を語らせたら、日本トップクラスと評されている木曽誠さん(ドルフィンギターズ 大阪店スタッフ)の解説が好評の本連載。今回、取り上げるアルバムは、シグナルの『デイ・ドリームス/シグナルIII』だ。
楽曲データ
アーテスト:シグナル
収録アルバム:『デイ・ドリームス/シグナルIII』
マンドリン使用曲:「さよならMY LOVE」
名曲解説
“シグナルは歌謡曲やねん”とはメイン・ボーカルの住出勝則の弁、以前にご本人から直接聞いた記憶があります。1975年にポリドールより「20歳のめぐり逢い」でデビュー、日本のフォーク/歌謡シーンに大きな影響を与えました。
そんなシグナルの3枚目のアルバム、『デイ・ドリームス/シグナルIII』の中に収録されているA面6曲目「さよならMY LOVE」には、素晴らしいマンドリン・プレイが入っております。演奏は、石川鷹彦氏。
あまりの柔らかなトーンに“クラシック・マンドリンかな?”とも思いますが、氏のトレードマーク(?)のオーバル・ホールのGIBSON F-4を使っている可能性も十分にあります。
ややディレイ風味の斬新なイントロ、そして途中から挿入してくるカッティング伴奏の“もたつく感じ”は、ブルーグラス的には完全にアウトですが、ポップス的にはセーフ。いやセーフどころか超ベストマッチ。サビ部分でさり気なく聴こえてくる優しいトレモロは、もはや“人情”。石川鷹彦氏の演奏を研究することのできる重要曲であると同時に、歌伴奏におけるフラット・マンドリンの“在り方”を今一度考えるきっかけにもなるでしょう。
そのほかにも、力強いボーカルのロック・ナンバー「黄昏のあらし」や、怒りと憎しみを表現した(と思う)ピアノ・イントロに女心を切なく歌う「宿り木」、そして、ジェフ・ベックよろしくなポップで浮遊感漂うイントロが耳に残るアルバム・タイトル曲「DAY DREAM」など、どれもが聴きやすく、“これはフォークではなく、やはり歌謡曲のアルバムだな!”と思わせる内容。Z世代にもぜひ聴いていただきたい昭和の空気感が味わえる1枚でもあります。
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選盤・文:木曽誠(ドルフィンギターズ大阪店)