和田唱&安田章大が語る、弾き語りとアコギの魅力|ギタージャンボリー特別対談

2025年3月1日~2日に両国国技館で行なわれる、弾き語りの祭典「J-WAVEトーキョーギタージャンボリー2025 supported by 奥村組」。その開催に先がけ、1日(土)に同じステージを踏む和田唱とSUPER EIGHTの安田章大による特別対談が実現! テレビ番組の企画でアコギ・デュオによる演奏も披露したふたりが、アコースティック・ギター愛と弾き語りの魅力、ライブへの意気込みを語る。

インタビュー/文=アコースティック・ギター・マガジンWEB 撮影=小原啓樹 協力=J-WAVE
安田章大スタイリング:ヘアメイク=山﨑陽子、スタイリスト=和田ユキヨ、衣装=Ground Y

TOKYO GUITAR JAMBOREE 2025
https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2025/ticket/

手に入れたばかりで使いたかったんでしょう(笑)
──和田唱

──ふたりは2019年に放送されたテレビ朝日『関ジャム(現:EIGHT JAM)』での弾き語り特集で、TRICERATOPSの「FEVER」をアコギ・デュオで演奏されましたが、あの時のことを聞かせてください。

和田 安田君が一緒にやってくれて嬉しかった。それに安田君のファンの方たちからも、僕のファンの人たちからも、両方から歓迎された印象で、それもすごく嬉しかったですね。

安田 僕たちはいつも緊張するんですよ。楽曲にはそれぞれの物語があって、曲を聴くだけでその当時に戻れたり、思い出が蘇る。そこに新参者が入るというのはなかなかシビれるものがあって……。

和田 こちらとしては大歓迎ですよ。それに、僕らも緊張しているから。ロックバンドの人たちってテレビによく出るわけじゃないから、ああいう慣れない環境に行くとガチガチになっちゃう。僕は今まで3回出演させてもらってだいぶ馴染んできましたけど、やっぱり緊張しますよ(笑)。

──あの時、和田さんはギブソンの52年製サザン・ジャンボを使っていましたが、枯れたサウンドがミュートしたカッティングにマッチしていましたね。

和田 僕はもういっぱいいっぱいで、自分らしさが出せればいいなっていうだけでしたよ。サザン・ジャンボはあの頃に手に入れたばかりで、テレビで使いたかったんでしょうね(笑)。

安田 そういう理由もあったんですね(笑)。

和田 そう、どちらかというとマーティンを使うことのほうが多いんだけど。

安田 マーティンをよく選ぶ理由はあるんですか?

和田 ビジュアル的にギブソンは好きなんだけど、いざ弾いてみると僕的には響きが違うんですよ。マーティンのほうがパーンと広がる感じで、ギブソンは狭く前に飛んでいくような。あれはあれでロックで好きなんだけど、弾き語りをやる時はマーティンのほうが僕はやりやすいんだよね。

──安田さんは佐賀の工房=ベフニック・ブレスワークが手がけたオリジナル・モデルを弾いていましたが、あのギターについて教えてもらえますか?

安田 スキマスイッチの大橋卓弥さんや石成正人さんとお話をする中で、佐賀に工房があるよっていう話を教えてくださって。で、自分は手が小さくて、親指で6弦がなかなか押さえられない。自分の手にフィットするネックが欲しいっていうところから、1本作らせてもらう流れになったんです。

──ネック以外にオーダーした内容は?

安田 立ち上がりの良い、ブライトな音が欲しいというのはお願いしましたね。自分の言葉がハッキリと伝わるように、あまりクセのない音が良かったんです。

和田 安田君モデルっていうことだよね?

安田 そうですね。“生命の誕生”をイメージした精子と卵子のデザインを描いて、指板インレイに落とし込んでいただいたり。

和田 (実器を見て)本当だ! めっちゃ泳いでいるね。

──使用されている木材は何ですか?

安田 ジャーマン・スプルース・トップで、サイドとバックがモンキーポッド、ネックがマホガニー、指板がエボニー、ブリッジがハカランダですね。

和田 本当にギターが好きなんだね。俺なんて木材は最近になってようやくわかるようになってきた感じ。

安田 僕も全然詳しくはないですよ! 工房の合瀬(潤一郎)さんにわからないことは聞いて、“明るい音がいいんです”って言ったら、“じゃあジャーマン・スプルースがいいかもね”って薦めていただいたり。で、今はパープルハートを使って製作したいっていう話をしていて。あの柔らかくて丸い、覆ってくれるような感じの音がいいなぁっていう話をしているところです。

僕にとってギターは、もうひとりの人生の代弁者
──安田章大

──和田さんがアコースティック・ギターをオーダーするならどんなものですか?

和田 ずっと000-18がメインでしたけど、さらに小ぶりな00(ダブル・オー)が見た目的に好きなサイズ感で。41年製のギブソンL-00を持っているんですけど、サイズ的には同じくらいです。小さいくせに激鳴りで。ただ古過ぎてすぐ病院送り(笑)。だからオーダーするならこの大きさのギターが良いけれど、新品でこのサイズでボリュームやロー感を得るのは厳しいでしょうね。結果ライブでは、ローがしっかり出るビンテージのドレッドノートが今はメインで……難しい(笑)。

安田 やっぱりローも必要になってくるんですね。僕はギブソンのB-25がすごく好きで、ビンテージは高いですけど欲しいと思って買って。小ぶりで自分の手にフィットするし、ローが少し抜けはするけど、音も気持ちいいんですよね。でも、ひとりで弾き語るとなると、ローのあるドレッドノート系になってくるんですね?

和田 最近はそうだね。PAさんにちょっとローを膨らませてもらえば良いかなって思っていたんだけど、やっぱり元のボディから鳴ってくれていないとダメだってことに気がついたんですよ。で、ドレッドノートってスタンダードじゃないですか。みんな使っている。レス・ポールもそうだけど、スタンダードなギターは良いから残り続けているんだなって、最近改めて感じますね。

──安田さんはB-25以外にはビンテージは持っていないんですか?

安田 B-25だけなんですよ。僕はどちらかと言うと、新しいものに触れていく中で音が変わっていくのを楽しむっていうのがすごく好きで。

和田 いや、それもいいんだよな~。

安田 でも、変わっていくには、相当使い込まないといけないでしょ? それには保存状態も大事でしょうし、ネックの反りとかも含めてコントロールしないとダメじゃないですか。となると、やっぱりビンテージを買うのもいいんですかね?

和田 僕の印象としては、ビンテージのほうがチューニングが安定している。ずっとその状態で長い年月が経っているからね。

──さて、ふたりにとってアコースティック・ギターはどんな存在でしょうか?

安田 “ウタ”って、歌詞と自分の歌声で物語を語る、喋りたいことを喋るっていうことだと思うんです。で、ギターはそこに寄り添ってくれるお友達という感じなんですよね。僕の中では、自分の生き方を伝えるための友達、もうひとりの人生の代弁者、みたいなイメージです。和田さんは?

和田 う~ん……安田君以上に良いこと言えるかな……(笑)。アコギって難しいんですよね。ギターをこれから始める人にも取っつきやすいものでありながら、超奥が深い。僕もいまだにモノにできないですよ。そもそもモノにできている人はそんなにいないと思う。

安田 和田さんがそれを言うんですね。

和田 全然言っちゃいますね。いまだに“あぁ、くそ! 弾けてねぇな!”って思うこともいっぱいあって、だからこそやりがいがある。僕にとっても近くにいる友達であることには変わりないんですけど、まだ仲良くなりきれない。でも本当に練習すればするほどちゃんと答えてくれるんですよね。

──ふたりがこれまで聴いてきた弾き語りの中で、印象に残っているものを教えてください。

安田 僕はRickie-Gさんが大好きで、デパートの屋上とかでつま弾いている動画をYouTubeで観たりするとテンションが上がりますね。「Life is Wonderful」とかがすごく好きだったりするので。

──和田さんは?

和田 自分がソロでやる時にすごく参考になったのは、実はエド・シーランなんですよ。ルーパーをやってやろうと思ったのも、エドのおかげだし。トライセラの曲は循環コードやリフが続くような曲が多くて、実はルーパーを使うと効果的なんですよ。それに気づいて、“俺こそルーパーを使うべきなんじゃないか?”って(笑)。そこから必死で練習しましたね。

和田唱(左)と安田章大(右)

アコギで聴いて良くないと、エレキでも良くならない
──和田唱

──和田さんはエレキ・ギターで弾き語ることもありますが、アコギで弾き語る良さとは?

和田 エレキはボリュームも出ますし歪ませたりもできるから、アコギよりもパワフルだって思えちゃうんですけど、決してそんなことはなくて。自分のライブでもエレキでの弾き語りをたまにやるんですけど、アコギのほうが熱量が伝わるんですよ。エレキにはエレキの良さがあるけど、弾き語りに関してはアコギのほうがパワフル。やっぱりエレキはどこまでいってもバンド用ですよ。そのためのボリュームですし、ピックアップなので。

──安田さんも中学生の頃にエレキ・ギターから始めたんですよね?

安田 最初は全部セットで2万円みたいなフェルナンデスのエレキを買いましたね。学生の頃だったので、ゆずやMr.ChildrenのようなJ-POPを当たり前のように聴いていて、すぐにアコギを弾くようになりました。で、アコースティック・ギターに切り替わってからは、曲作りを始めて……。極論ですけど“エレキが嫌い”って言いたくなるほどに、アコースティックのほうが落ち着くんですよね。なので、僕は普段もアコースティック・ギターで曲作りをしますし、エレキの曲でもアコースティックでギターを作るんです。

和田 安田君は信用できるタイプだな。

安田 えっ、そうですか(笑)?

和田 やっぱりアコギで聴いて良くないと、エレキでも良くならない。素材が良くないと。アコギは一番元となるところを表現してくれると思うから、アコギで良くないと、ダメなんじゃないかなって思うんですよね。

──安田さんがエレキ専門のギタリストにアコギの魅力を伝えるとしたら?

安田 自分が触った音がそのまま出てくれるところですね。タッチミスもハッキリと出てくれる。エレキで言うと、テレキャスターはそういう部分が鮮明に出ると思うんですよ。だから僕はエレキだとテレキャスターが好きなんです。

和田 “素材系”が好きなんだね。

安田 高校1年生の頃にインディーズ界隈にどハマりして、RIZEが大好きになったんですよ。で、足繁くライブに通うようになっていった中で、だんだんと“ハムバッカーだと音の粒が見えないなぁ”って感じるようにもなって。そこでシングルコイルが好きだと気がついて、“アコギと似てるのかな”って思うようになったんです。

和田 オトナですね。僕もだんだんシングルコイルが好きになっていったんですよ。ハムバッカーでデビューして、憧れとしてフェンダーのギターも持っていたけど、あまり弾きこなせなくて。そこからオトナになるにつれて“粒”が欲しくなってきた。あと“そんなに歪んでいる必要はないぞ”ってなって、徐々にフェンダー系のシングルコイルが好きになり、今ではいっぱい使うんですよ。その流れは、アコギを好きになっていくのと、ちょうど比例しているかもしれない。

──安田さんはギタージャンボリーに初登場で、和田さんは12年ぶりの出演です。安田さんから経験者の和田さんに聞いてみたいことはありますか?

和田 経験者も12年ぶりだけどね(笑)。1回目以来、誘ってくれないんですよ(笑)。

安田 1回目の時って、まだ構築されていないじゃないですか。答えがないというか。初回に出演されて、どうでしたか?

和田 360度お客さんに囲まれている中で、土俵ステージの上でひとりでやらなくちゃいけない。そういう特殊な環境だから、楽しいですよ。

安田 へぇ~。お客さんの声は聴こえるんですか?

和田 聴こえたはず。

安田 それがすごく楽しみで。

──ギタージャンボリーでは最後にセッションがありますが、和田さんと安田さんに加えて、宮田和弥さんなども交えて演奏するそうですね。

安田 その話、さっき聞いたばかりなんですよ! 個人的にはそんなことがあるとは思ってもいなかったので……僕でいいんですか? 

和田 お客さんが喜ぶからいいじゃん。

安田 何の曲をやるかも知らない状態なので……。

和田 じゃあ今決めようか(笑)! お客さんもみんなも知っていて……最後のセッションなので、ロックンロールをかまそうと思います!

Wada’s 1956 Martin D-18

和田唱の1956年製Martin D-18(前面)
和田唱の1956年製Martin D-18(背面)

20年の時を経てメインに昇格

和田唱がアコースティック・ギターのメインとして使用するのは、スプルース・トップにマホガニー・サイド&バックのマーティンD-18。ボディ・トップ下部に割れの修理痕があるため、1956年製にも関わらず約30万円という破格で購入。2004年頃に入手して以来、長らく楽屋用ギターだったものが、最近メイン器に昇格したという。

もともとクルーソン・デラックスだったペグはウェイバリー製に交換、ネック・ヒール部にはストラップ・ピンを増設。ピックアップにはハイランダーのピエゾ・ピックアップとInternal Micを搭載している。

“見た目は小さいギターのほうが好きなんですけど、ソロで演奏する時にサウンド的にローがないと寂しくて。そうなるとドレッドノートがなんだかんだで美味しい帯域が出てくれるんですよね”とのこと。

ペグ
ペグはウェイバリー製に交換済み。クルーソン・デラックスが搭載された痕も確認できる
ハイランダーのInternal Mic
ピックアップにはハイランダーのピエゾとInternal Micを搭載している

Yasuda’s Beffnick Brace Work Yasuda Custom Model

安田章大のBeffnick Brace Work Yasuda Custom Model(前面)
安田章大のBeffnick Brace Work Yasuda Custom Model(背面)

生命の誕生を祝福するカスタム・インレイ

安田章大が愛用する、合瀬潤一郎氏による佐賀県の工房=ベフニック・ブレスワークの1本。石成正人やスキマスイッチの大橋卓弥からの紹介から同工房でのオーダーに至り、2017年に完成した。

000サイズのボディに、“手が小さいので、自分に合ったネックが欲しかった”ため、細めのシェイプのネックを採用。ブライトなサウンドを目指して選んだ材は、ボディがジャーマン・スプルース・トップにモンキーポッド・サイド&バック、ネックがマホガニー、指板がエボニー、ブリッジがハカランダ。ピックアップにはフィッシュマンのアンダーサドル・ピエゾを搭載している。

最大の特徴は安田自身がデザインした指板インレイで、“生命の誕生”をイメージしたそう。指板上で受精の様子が描かれ、サウンドホール内のラベルで受精卵を表現した。

オリジナルのラベル
受精卵をイメージしてデザインされた、オリジナルのラベル
インレイ
卵子をモチーフとした12フレットのインレイ

J-WAVEトーキョーギタージャンボリー2025 supported by 奥村組

◎スケジュール/会場

◎出演アーティスト

2025年3月1日(土)

2025年3月2日(日)

◎チケット

https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2025/ticket/

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