アコースティック・ギター・マガジンpresents、ルーパー・コンテスト2023グランプリ発表

2023年3月31日まで応募を募集させていただいたルーパー・コンテスト2023

雑誌『アコースティック・ギター・マガジンVol.95』の特集、“未来の表現スタイルをその手に、アコギ弾きのためのルーパー活用術&製品ガイド”と連動し、YouTube動画で参加できるコンテストとして開催しました。

簡単にひとりふた役以上の演奏ができ、ソロ・アーティストの強い味方に。そしてそれ以上に、レイヤー・サウンドによる独特のタイム感やハーモニー、音像はアンサンブルとも、ソロ・パフォーマンスとも異なる無二の世界を創り出す——そんな魔法の箱、ルーパーをもっと盛り上げたいという主旨による企画です。

今回、たくさんのご応募が集まりました。参加いただいた皆さま、このコンテストを知り、見守ってくださった方、そして関係いただいたすべての方々に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

編集部による厳正なる審査の上、グランプリ1名を決定させていただきました。最も評価を集めたのは……新藤翔平さんです。新藤さんには賞品として、BOSS RC-600を進呈いたします。詳しい選出理由、新藤さんの演奏内容、そしてプロフィールは以下のインタビューをご覧ください。

改めて、今回の企画がルーパーの楽しさを知り、手に取っていただくきっかけのひとつとなれば幸いです。ルーパーがあれば、アコギ・ライフがもっと華やかなものとなるに違いありません。

新藤翔平さんの応募動画

グランプリ・インタビュー

●今回ご応募いただいた方の中からグランプリに選出させていただきました。動画を拝見すると、アコースティック音楽として素晴らしく、ルーパーによってハーモニー/リズムの点で最も創造性を広げておられたと思います。


○ありがとうございます。どちらかと言えばニッチな音楽をやっていると思っていまして、ライブをしてもたくさんの動員があるわけではありません。それでもありがたい声をいただくことはありますが、届く範囲が狭いと自分がやってきたものがどの程度受け入れられるのかわからない部分がありました。そんな中今回、客観的な視点で評価していただけたのは、“じゃあ間違ってなかったんだな”と自信になりました。ルーパーを使い始めてそれなりに長いので、そりゃあ最近始めた方に負けるつもりはないという気持ちもありましたが。


●応募いただいたのは「Tower」というオリジナル曲ですが、ルーパーを4つ使用されたとのことです。それぞれ説明いただけますか?


○VFEのKlein Bottleをパラレル出力のスイッチャー的に使い、4つのルーパーを使い分けています。まずChase Bliss Audioのblooperを、ループが1周するごとにピッチとスピードをどんどん上げる設定にしています。次にBoomerangのRang IIIはメインに据えているもので、基本的に伴奏フレーズをループさせます。ハーフ・スピードにしたりもしますね。electro-harmonixのGrand Canyonは、歌終わりの次の展開にいく際、blooperとBoomerangをまとめるような使い方をしています。またこれはフェードアウトの設定ができて、フェードアウト中はオーバーダビングせず、上から弾いた音も一緒に減衰させられる点も気に入っています。最後にHologram ElectronicsのMicrocosmは逆再生とかをする時に使います。エフェクトが豊富なのでエフェクターとしても重宝しています。


●ルーパーを含め多くのエフェクターを使いながらも、ギターの素の音も大事にされているのが印象的でした。今後アコギ界もペダル類の需要は増えるでしょうが、現状はまだ少ないはずで。ここまでのめり込むきっかけは何だったんですか?


○アコギを使っている以上はアコギの音を生かしたいですからね。特に海外ではアンビエント系の方ならいろいろなエフェクターを使いますが、自分はもともとはバンド出身で、ソロになってからエレキ・ギターでルーパーを使い始めました。そこからやはり生楽器、アコースティック・ギターのほうが音がきれいだなと切り替えまして。最初はルーパー1台でしたが、当初は即興演奏で、展開を広げることが難しいと感じていました。それで2台、3台と次第に増やしていきました。これは2011年頃の話で、当時は今ほどおもしろい機材は少なかったですけど、やりたい音楽を実現するにはこれが必要、あれも欲しい……そんな感じでのめり込みました。自分は音を拡張してくれるペダルが好きなんです。例えばEventideのPitchfactorはメジャーコードのアルペジエイター的に使うことが多いですけど、そういうものに興味がありますね。


●エフェクト・ボードを拝見すると、EmpressのZOIAがありますね。ギタリストとしては珍しいチョイスですが、これはどのように?


○キーボードのモジュールでGのメジャー・スケールを設定しているのと、MIDIコントローラー的な使い方もします。それからノイズゲートを噛ませて、ボードの最終的な出力をまとめています。


●Cusack MusicのPedal Crackerも気になったのですが、これは何ですか?


○XLR端子があり、マイクの音をボードのエフェクターに送れるんです。もちろんスルー・アウトとの切り替えもできます。弾き語りの方で声などをループさせたい場合、歌用のメイン・マイクと別にルーパー用のマイクを使うケースが多いですけど、それが1本のマイクで済むということです。また、ギターの最終的なアウトはPedal CrackerのXLR端子から送っていて、これにはゲインなども付いているので、DI的にも使っています。


●それは便利ですね! ここからは、プレイヤーとしての歩みも聞かせてもらえますか?


○ギターを始めたのは高校生の頃で、BLANKEY JET CITYが好きでした。あとヴェルヴェット・アンダーグラウンドとかも、実験的なところに惹かれましたね。とは言え、始めた一番の理由はギターを弾けたほうが曲作りが捗るなということでした。なのでいろいろな曲を作って録音していました。アコギで歌うことに関しては、七尾旅人さんなどの影響はあったかなと。あとはフリー・フォークの頃のアニマル・コレクティヴ、デヴェンドラ・バンハートの近辺の人たちですかね。


●なるほど。現在はどんなご活動をされていますか?


○実は2013年〜2020年ぐらいまで音楽を休んでいました。再開にあたり、一番大きかったのはコロナです。コロナ禍により在宅で仕事ができるようになって、以前より時間が作れるようになった。そして子供がいるんですけど、封印していた機材で一緒に遊ぶのも悪くないかなと引っ張り出してみたら、“ああ、やっぱり楽しいな”と。そこから機材を買い直したり、部屋で勘を取り戻したりしながら、昨年12月に久しぶりにライブをしました。今回の応募動画はその時の映像です。


●わかりました。6月にもライブをされるということで、今後のご活動も楽しみにしております。最後に、自身の演奏で伝えたいことは何でしょうか?


○もともと伝えたいことはあんまりなくて、どちらかと言うと音楽はあくまでも音であってほしいです。自分の音を聴いて、“いいなあ”と思ってくれたら嬉しいですし、それで十分ですね。

新藤翔平さんの使用機材

Taylor Guitars K22ce

右下からHologram Electronics Microcosm(ルーパー )、Chase Bliss Audio blooper(ルーパー )、VFE Klein Bottle(ルーパー ・ミキサー)、Boomerang Rang III(ルーパー )、electro-harmonix Grand Canyon(ルーパー )、MXR M199(タップ・テンポ・スイッチ)、ELECTROGRAVE beat happening(パッド・シンセ)、Empress ZOIA(モジュラー)、Kinotone Audio Ribbons(マグネティック・テープ・エミュレーター)、Drolo FX. Stretch Weaver(サイドチェイン)、Eventide Pitchfactor(ハーモナイザー)、Cusack Music Pedal Cracker(マイク・エフェクト・ループ)、Animals Pedal 1927 HOME RUN KING COMP.(コンプレッサー)、electro-harmonix Superego(サステイナー)、Chase Bliss Audio MOOD(グラニュラー/ルーパー/ディレイ)、Chase Bliss Audio Habit(ディレイ)、electro-harmonix Triple Foot Controller(フット・スイッチ)

新藤翔平

1986年生まれ、東京都出身。高校生でギターを始め、同時に作曲にも目覚める。当初はエレキ・ギターでバンド活動をしていたが、ソロ転向後ルーパーとアコースティック・ギターを使用するスタイルに。最も影響を受けたジャンルはフリー・フォーク。現在は各配信サービスやSNSでオリジナル曲を発表する傍ら、ライブ活動も精力的に行なう。次のライブは6月17日(土)、Antenna Books & Cafe ココシバ(埼玉県川口市芝5-5-13)にて、18時頃よりソロ公演を開催予定だ。

アコースティック・ギター・マガジン 2023年6月号 Vol.96

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