アコースティック・ギター・マガジンVol.87から始まった高田漣の新セミナー“あなたの知らないアコースティック弦楽器の世界〜ウクレレ、バンジョー、マンドリン、ラップ・スティールに挑戦〜”。高田漣と言えば、さまざまな楽器を操るマルチ弦楽器奏者として有名ですが、彼のようにウクレレ、マンドリン、バンジョー、ラップ・スティールと、さまざまな楽器を弾けるようになろう!というのが本企画の趣旨です。アコギマガジンWEBでは、連載記事の連動動画を、その概要とともに紹介していきます。ということで、第1回目は、各楽器のチューニングについて学んでいきましょう。
第1回:各楽器のチューニング
【ウクレレのチューニング】
チューニングはG-C-E-A
ウクレレは4弦からG-C-E-Aの調弦で、これはギターで言うと4〜1弦の5カポの状態です。
しかし、4弦目は1オクターブ上、つまり1弦の1音下になります。ウクレレに限らずバイリンガルに弦楽器を弾けるようになる最大の秘訣は“ギターだと……”という考え方を一切排することです。これは語学でも同じで、花を見た時に“花”から“フラワー”に英語翻訳するのではなく、花を見た時点で英語脳によって“フラワー”と認識することが重要です。
逆に言うとウクレレは構造上ギターとコードのフォームが似ていることが却って混同させる要因となります。“何となくギターと似ているから”と舐めて取り組むと手痛いしっぺ返しを食らうこととなりますのでご注意を。
【マンドリンのチューニング】
調弦はバイオリンと同じ!
マンドリンは8弦4コースで4弦からG-D-A-Eに調弦されます。これはバイオリン属とまったく同じで、ブルーグラスやケルト系のバイオリン奏者がマンドリンも弾けるのはインターフェイスが同じだからなのです。
両者が同じなのはそれだけではなくバイオリン属には音域に合わせてビオラ(調弦はヴァイオリンの五度下/C-G-D-A)、その1オクターブ下のチェロ(セロ)が存在するように、マンドーラとマンドセロがあります。しかし一説によればマンドリンの開発順位はマンドーラが先だとも言われています。
低音部から4度での調弦が主の(例外は3-2弦)ギター属と違い、全コースが5度調弦のマンドリンは完全に異言語と思われるでしょう。実際メロディを弾く際には相応の鍛錬が必要ですが、この調弦システムはギター属よりも近代のもので、圧倒的にラインが弾き易い構造で譜面も可視し易いです。
とは言えまずは初歩。実はこの調弦は図らずもギターの6~3弦のまったく逆の配置なのです。これを利用すると本職のマンドリン奏者では思いもよらぬ発想が産まれるかもしれません。
【5弦バンジョーのチューニング】
基本はオープンGチューニング
一般的な5弦バンジョーは5弦からG-D-G-B-DのオープンGチューニングでありますが、5弦目は1オクターブ高く、また不思議なことに5フレット目から突如現われます。
これに対してスウィング・ジャズなどで多用されるテナー・バンジョーは、基本C-G-D-Aのバイオリン属と同じ5度調弦です。5弦バンジョーはコードも弾きますが基本的にはパッセージをアルペジオで弾くのが常です。
【ラップ・スティール、オープンGのチューニング】
チューニングの可能性は無限大!
現在では奏法的に確立されたペダル・スティールとは違い、ペダルのないラップ・スティール(正式にはハワイアン・スティール・ギター/写真1)には無数のチューニングが存在し、さらに独自のチューニングをあみ出すことも容認されています(←誰にや、笑!)。
まずはオープンG(D-G-D-G-B-D)(写真2)。これはハワイでタロ・パッチ(タロ芋畑)と呼ばれるスラック・キー・ギターも含めての基本形です。ブルースでも多用されるこのチューニングの譜面は、そのままスライド奏法でも応用できます。
【ラップ・スティール、C♯mチューニング】
弦のゲージの呪縛から解き放たれよう!
ザッツ・ハワイ!と言えば、C♯mと言われるチューニング、6弦からE-B-E-G♯-C♯-E(写真1)となり、デレク・トラックスのオープンEチューニングの2弦が1音上となる、E6thとも言えるチューニングです。これをそのまま全音下げるとアコギ・インスト界のラスボス、中川イサト先生もご愛用のD6thチューニングです。6度が入ると俄然スティール・ギター然とします。
このふたつは通常のギターの6本のゲージそのままでもチューニングが可能で、もともとスティール・ギターが通常のギター奏法からの派生であったことを伺い知ることができます。
この次のステップは、このギターのゲージの呪縛から解き放たれることです。スティール・ギター界の最初の神ソル・フーピーが多用したC♯mは6弦からB-D-E-G♯-C♯-E(写真2)となり、つまり5弦目を4弦に、6弦目には5弦と似たような太さの弦を搭載するというモダンなチューニングでした。これにより響きは7th13thのようになり独特な南国感を味わうことができます。
詳細はアコースティック・ギター・マガジン2021年3月号、Vol.87をご覧下さい!