コードのエキステンション『アコギで音楽理論講座』第11回 by ドクターキャピタル

4つ以上の構成音からなるコード

 まいど! ドクターキャピタルです。 前回はメジャー・スケールからできる7つのモードの構成、フィンガリングと表現力を徹底的に探って、たっぷり練習しましたね。お疲れ様でした! 今回は同じ7つのモードのさらなる大事な一面、エキステンデッド・コードとアルペジオをマスターしましょう。

 以前にも一緒に勉強したように、“C”のメジャー・コードや“Dm”のマイナー・コードはトライアド(3和音)になります。構成音が、ルート(1度)、3度と5度という3つです。トライアドは丈夫でわかりやすい表現性を出します。大抵のロック、ポップ、カントリーやフォークではほとんどのコードがメジャーとマイナーのトライアドであることは多いです。

 構成音を4つ以上に増やすと、トライアドではなくていわゆるジャズ・コードになります。Cmaj7のメジャー・セブンス・コードやDm7のマイナー・セブンス・コードもそうですし、Cmaj7(9)、 Dm7(9,11)、G7(13) など、ナインス、イレブンス、サーティーンス・コードとあらゆる組み合わせもあります。コード名のあとに付く数字はそのコードのルート、3度、5度(R 3 5)以外に含まれる音
のインターバルです。セブンスならR 3 5 7、ナインスならR 3 5 7 9という構成音になります。

“テンション”と“エキステンション”

 9、11、13の音を日本語では一般に“テンション・ノート”と言います。洋楽の従来の音楽理論でも“tension note”や“tension tone”と言いますし、間違っていませんが、僕や多くの海外のジャズや現代のミュージシャンは、普通の9、11や13を“tension”と言いません。“tension”とは緊張の意味で、決して“落ち着いていて気持ちがいい”という意味ではありません。ジャズや現代のポップスを聴き慣れたリスナーには、CメジャーのキーでしたらCmaj7(9)やDm7(9,11)は落ち着いていて気持ちのいい、緊張感がゼロな響きです。緊張感がゼロなので実はtension chord(緊張コード)と言いません。“テンション・コードと言わなかったら、何と言うの?……”

  9、11、13の音のことをコード・エキステンション(extension= 拡張)と言い、9、11、13を含むコードを“エキステンデッド・コード”(extended chord)と言います! “テンション”ではなく“エキステンション”のほうがジャズやポップ・ミュージックでは一般に使われていますし、僕も大賛成です。できれば日本でもこれから“エキステンション”を普及させたいです。“ええぇ?「テンション」と言ったらダメなの? まったく使わないの?……” いいえ! 使ってはいけないことはありませんが、使い分けが大事になってきます。

 G7(♭9, ♭13)からは緊張感がたっぷり出ますよね? こういう場合はテンション・コードと呼んでもいいです(ちなみに緊張感があってもなくてもエキステンデッド・コードと呼んでもOKです)。実際にCメジャーのキーでしたらG7(♭9, ♭13)の♭9と♭13は調の音以外の音なので、周りの音とぶつかる表現効果があって“テンション・ノート”と呼んだらピンときます。

 結論として、海外のミュージシャンとコードの話をする時、♭9、♯9、♯11、♭13なら“テンション”と呼ぶのは伝わりますが、緊張感のない9、11、13の音なら“エキステンション”と呼び、Cmaj7(9)やDm7(9,11)を“エキステンデッド・コード”(extended chord)と呼ぶのをお勧めします。そのほうが意味が伝わりますし、表現効果的にも正しいと僕は思います。

Ex-1a:Cイオニアン・モードとエキステンデッド・アルペジオ

Ex-1b:「Ⅰ」のコードの例(Cメジャー・キーで)

続きはアコースティック・ギター・マガジンVol.98本誌にてご覧ください。

ドクターキャピタルによる実演動画

誌面のエクササイズ譜例と合わせてチェックしてみてください!

第11回の内容

詳細はアコースティック・ギター・マガジン2023年10月号、Vol.98をご覧ください。

アコースティック・ギター・マガジン 2023年10月号 Vol.98

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ドクターキャピタル

どくたーきゃぴたる アメリカ出身大阪在住ギタリスト、シンガーソングライター。音楽博士号を持ち、名門/南カリフォルニア大学の教壇に立つ現役のプロフェッサーで、ソロやユニットなどさまざまな音楽活動を継続。日本文化にも精通し、バリバリの関西弁を駆使した“Dr. Capital’s JPOP講座”で、YouTuberとしても存在感を高めている。

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