吉澤嘉代子×藤原さくらが“アコギ観”を語る|ギタージャンボリー特別対談

2026年3月7日(土)〜8日(日)に東京・両国国技館で行なわれる弾き語りの祭典“J-WAVEトーキョーギタージャンボリー2026 supported by 奥村組”。毎年、様々なシンガーソングライターがアコースティック・ギター1本を手に取って土俵に見たてたステージに立ち、音楽の素晴らしさを体現している。今年の出演者を代表して吉澤嘉代子×藤原さくらのふたりに登場いただき、互いのアコギ感をテーマに語り合ってもらった。

取材・文=菊池真平 撮影=鈴木千佳
【吉澤嘉代子】ヘアメイク=新井裕梨 スタイリング=松野仁美 シャツ,スカート=RYUKAGA

J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2026 ssupported by 奥村組
https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2026/ticket

街の中で歌っているみたいな感覚になれば自由にできるかな──吉澤

──最初にふたりが知り合ったのは?

藤原 最初に会ったのは、神戸のVARIT.ですよね?

吉澤 もう10年以上前で、デビュー前でしたね。

──デビューの時期が近いですよね?

藤原 デビューは近いですね。私が2015年で。デビュー何周年ですか?

吉澤 2014年だから今年12周年目かな。

──お互いにどんな魅力があるミュージシャンだと感じていますか?

吉澤 私が初めてさくらちゃんを拝見した時、若いのにスモーキーで深い歌声をすでに確立されていて。演奏も上手で、本物のミュージシャンって、こういう人なんだって。それからずっとリスペクトしています。

藤原 うれしいです。吉澤さんの曲が大好きっていうことはもちろんですが、ライブを観ていると1曲1曲の中に物語があって、聴いているとその物語の中に手を引いて誘ってもらえるような気分になります。

 音楽の力というか、魔法を使う方という感じ。本当に独特の世界観で、ほかにいないアーティストです。私のお姉ちゃんも大好きです。

吉澤 お姉ちゃん、ありがとう。

藤原 この前の福岡のライブにも行っていましたし、車でも吉澤さんの曲がかかっていて、ガチのファンですよ(笑)。

吉澤 うれしい(笑)。

──音楽のベースは、アコースティック・ギターで弾き語りでしょうか?

藤原 私はそうですが、嘉代子さんは普通にハンド・マイクで歌うことも多いですよね?

吉澤 そうですね。私たちがデビューした頃って、“ギタ女”というくくりがありましたよね?

藤原 あった、あった(笑)。

吉澤 ギターで弾き語りをする女性ミュージシャンがブームになって、私はそれに反抗するためにギターを手放しました(笑)。

藤原 尖ってますね(笑)。

吉澤 ひとつにくくられたくなくて、“ギタ女って言うな!”みたいな気持ちは当時ありました(笑)。ギターは今でも下手なんです。

藤原 弾き語りをする機会もあるんですか?

吉澤 そうですね。私もデビュー前は、弾き語りのストリート・ライブをやっていて。理由は、それを選ぶしかなくて。一緒に演奏する人がいないから自分でギターを弾かなきゃいけないし、お金がないからライブハウスにも出られない。だから道で歌っていました。

藤原 嘉代子さんが歌っていたら、みんな足を止めましたよね?

吉澤 そんなことないですよ。弾き語りの経験があっても、今回の(トーキョー)ギタージャンボリーは、百戦錬磨の猛者たちの集いだから、もうすでに痺れています。当日、緊張で弾けなくなりそう。

藤原 私たちの日も、出演者が猛者ばかり。好きな人しかいない。

吉澤 ね! 自分が同じ舞台に立つと思うとすでに震えが。

──吉澤さんは、初めての出演ですよね?

吉澤 初めてですね。

藤原 すごく楽しみ。私は嘉代子さんのライブをかなり観ていますが、ひとりで20~30分弾き語っているのは見たことがないです!

吉澤 デビュー以来、やったことないかも。

──藤原さんはギタージャンボリーの出演が3回目ですよね?

藤原 そうですね。Reiちゃんとも一緒に出ました。ふたりで出るのもアリなんですよ。

吉澤 そんなこともできるんだ!?

──吉澤さんに、藤原さんから何かアドバイスがあれば。

吉澤 ぜひ、お願いします!

藤原 私が前に出た時は、ステージがぐるぐる回ることに惑わされて、今自分がどっちを向いているのかわからなくて、出る方向を間違えてしまって。戻る時にカメラが待機していましたが、違う方向に走っていきました(笑)。

吉澤 迷うことなく、走ったの?

藤原 うん。だから入り口を把握しておけば、あとは何でも大丈夫(笑)。

──ふたりで出れば安心感もありそうですが、ひとりだと緊張しますか?

藤原 そうですね。ただ、弾き語りで47都道府県を回ったこともあるから、そこまで緊張していなかったかも。

吉澤 ええっ! すごい。

藤原 もうギター侍みたいな心境で。ギターだけを持って、全国行脚するみたいな。その時は、私なりの弾き語りのカタチが固まりましたが、今はもう、全部忘れてしまい……また新たな技を身につけないと(笑)。

──吉澤さんは、どうですか?

吉澤 15分以上、ステージでギターを弾いたことないから未知ですね。ただストリート・ライブをやっていた時は、ずっと何時間も演奏していたので、自分の原点に戻って街の中で歌っているみたいな感覚に、両国国技館のステージでもなれたら自由にできるかなと、今から想像しています。

藤原さくら、吉澤嘉代子
左=藤原さくら、右=吉澤嘉代子

すごく古いマーティンの1とか、小ぶりなギターもすごく好き──藤原

──愛用しているアコギは藤原さんがマーティン、吉澤さんがギブソンと対照的ですね。

藤原 確かに。エレキはギブソンやエピフォンも使いますが、アコギとガットは全部マーティン。

吉澤 私は、ギブソンしか持ってない。

藤原 どうやってギブソンに出会いましたか?

吉澤 デビュー5周年を迎えるタイミングで、自分が今欲しい運命の1本を買おうと思って探し始めて。ギターに詳しい弟と一緒にいろいろな街を旅して回って、半年くらいで出会いました。

藤原 それは、すごく時間がかかりましたね。

吉澤 そうなんです。で、ギブソンのL-1を御茶ノ水のウッドマンという楽器店で見つけて。弾かせてもらった瞬間、トキメキが走ったと言いますか。“何だこれ! 恋をしているみたいだ!”とひと目惚れして買いました。

──両国国技館でも、L-1を使いますか?

吉澤 抱えたいなと思っていますが、古いのでチューニングが少し狂いやすくて。でも、1曲くらいは両国国技館でも弾きたいです。

──L-1に惹かれたのは見た目ですか?

吉澤 弾いた時に枠がなくなった感じが大きかったかな。私は“枠のあるギター”と“枠のないギター”の種類があると思っていて。いつまでも弾いていたくなる心地よさというか、それが良いなって思いました。さくらちゃんは、どうやって選びます?

藤原 私は、マーティンに対しての憧れが強くて。YUIさんが好きだったんですけど、彼女がマーティンを使っていたのを見て憧れました。

 最初はお父さんからもらったギターを使っていましたが、自分でお金を貯めて初めてギターを買いに行く時に、黒澤楽器店でマーティン担当の福岡(司)さんと知り合って、いろいろと見せてくれることになったんです。何もわからない19歳の私がアレコレと試奏して選んだのが、今も使っている“000C Nylon”というガット・ギター。

吉澤 最初にガット・ギター?

藤原 そうなんです。最初はアコギを買おうと思っていたけど、やっぱりガットの音が好きかもって。その後は今日持ってきた、古いマーティンの00-17とか、ビンテージ・ギターをいろいろと買っていき……気づいたら、どんどん増えて(笑)。

──00-17は、1943年製だから戦中に作られたギターですね?

藤原 そうですね。だからトラスロッドが木材(エボニー)なんです。音が柔らかくて、温かみがあります。ガットとは色味も違うし、オール・マホガニーのボディがかわいいなって思って買いました。

吉澤 さくらちゃんのモヤがかった光の帯みたいな歌声にぴったりですね。

藤原 素敵な表現。うれしすぎます!

──ビンテージ・ギターに惹かれる理由は?

藤原 私は見た目ですね。すごく古いマーティンの1とか、小ぶりなギターもすごく好き。

自分の歌に一番合うのは自分のギターしかない──吉澤

──吉澤さんはB-25も使っていました?

吉澤 それはお借りしたギターで、もう返却して。でも最近、もう1本新しく購入しました。それは1960年代のLG-1ですね。デジマートで見つけました。

──吉澤さんは、通好みなギターを使っていますね。エレキも金色のジャガーや古いグレッチだったり。

吉澤 贅沢ですよね。でもジャガーは、弟からの借り物です。

──藤原さんのエレキは?

藤原 エピフォンのオリンピックというモデルは、すごく好きで使っています。あとギブソンのES-339。最近は、エレキで弾き語りもしています。

──アコギとエレキの弾き語りに違いを感じますか?

藤原 違いますね。でも、包まれるような音が好きで、エレキで弾き語りをする時も、ディレイとかリバーブを深くかけて弾きます。曲によってもっと丸い音が欲しい時は、ガット・ギターとかアコギの柔らかい響きで弾き語るみたいに使い分けています。

──吉澤さんはL-1とLG-1の2本を使いますか?

吉澤 どうしようかな〜。

藤原 エレキという選択肢もある?

吉澤 エレキを弾きたい気持ちもあります。

──アコギとエレキどちらが歌いやすいとかはありますか?

吉澤 どっちですかね。ずっとアコギで弾き語りをしていましたが、この前初めてエレキで弾き語りをして。いろいろと音色を作れたりするので楽しいなって思いましたね。今はエレキ・ギターがいいなって。だから3本持っていっちゃうかも。

──普段はバンド編成でライブをすることが多いと思いますが、弾き語りだとステージ上での心構えは違いますか?

吉澤 違いますね。当たり前ですが弾き語りは、自分が止めたら止まる。私はギターが下手ですが、自分の歌に一番合うのは自分のギターしかないから、その時にお見せできる空気があると思っていて。それをお届けできたらいいなと。

──藤原さんはどうですか?

藤原 私は曲をギターで作ることが多いですし、アコギでライブをする機会も多くて。だから最初にギターなしで歌った時は、すごく不安になったんです。ギターを抱いている安心感が急になくなった時に、どうしようって(笑)。

 その時、私にとってギターって、お守りみたいな存在というか、自分の一部になっているんだなぁと思いましたね。私は弾き語りが原点だから、あまり気負わずギタージャンボリーのステージに立ちたいですね。

藤原さくら、吉澤嘉代子

ギタージャンボリーのために、7回はリハに入りたい!──藤原

──ところで、お互いに近々6枚目のアルバムもリリースになるようですね?

藤原 嘉代子さんも6枚目なんですね。フル・アルバムは5年ぶりですか?

吉澤 そうなんです。その間に、ミニ・アルバムが2枚あって。

藤原 『幽霊家族』っていうタイトルが気になります。

──確かに。この作品のテーマは?

吉澤 『幽霊家族』というタイトルは、オバケの家族ということではなくて。自分の子供時代の若いお父さんやお母さんだったり、まだ生きていたお爺ちゃんとか。今は交わらない時間とか、存在をたどるようなアルバムというか。記憶とか、憧憬をテーマに書きました。

 ギタージャンボリーでの弾き語りもそうですが、自分の原点というか、曲作りの根底にあるものに出会い直すようなアルバムにしたいなと思って作りました。

──藤原さんの新作『uku』は音楽性の幅が広くて、少し弾き語りは難しそうですね。

藤原 弾き語りは難しいかも(笑)。

吉澤 最近はトラックから作っていますか?

藤原 もともとはギターやピアノ、ウクレレとかで作っていて。その元曲を、こんなテイストにしたいとか、こんなリズムにしたいということを、石若(駿)さんに送ると、到底自分で再現できない曲になる。

吉澤 面白い!

藤原 私がもともとデモで弾いていたギターとかは、消してくださいって言ったりしますが、それが使われていたり(笑)。適当に弾いたやつとかも、混ぜたらいい感じになるからって。

吉澤 リラックスした感じが曲に出ていそう。

──今作は上白石萌音さんとかnever young beachの安部勇磨さんがゲストで参加していましたね。声の重なり具合が絶妙で素敵でした。

藤原 うれしいです。今まで、誰かの作品に呼んでもらったりとか、そういうことはありましたが、私の作品でデュエットするとかはなくて。これまでは自分で完結したほうがいいって思っていましたが、今回チャレンジしてみて、何か自分の足りないところを補ってもらう感じがありました。

 例えば萌音ちゃんとの曲は、私は低いレンジで歌っていて、その1オクターブ高いキーで歌ってもらったり。お互いに支え合って補い合っているみたいな。それぞれに得意なことがあって、自分が足りないと感じた時は、お願いすればいいというカラッとした考え方になれました。そういう意味でも、色々と挑戦できたアルバムです。

──なるほど。ギタージャンボリーでは、お互いの新曲も聴きたいですが、何を演奏するか決まっていますか?

藤原 まだ決めていないですね。

吉澤 持ち時間が決まってからですね。私は15分の限界を超える挑戦なので(笑)。できれば新作からも演奏したい。

──楽しみですね。では最後に、ギタージャンボリーに向けた意気込みは?

吉澤 初めての体験になるので、それを噛みしめられるようなステージにしたいですね。360度にお客さんがいるのも初めてですし、ステージが回転するのも初めてだから、出口だけは間違えないようにして、胸を張って出ます!

藤原 私はギタージャンボリーのために、7回はリハに入りたい! 個人練をスタジオでやろうと思います。

吉澤 ワンマン・ライブより緊張しそうですよね?

藤原 最初のギタージャンボリーでは、当日、行きの電車の中で音楽を聴いていたら“これをカバーしたい”と急に思い立って、急いで練習をして演奏した記憶があります。

吉澤 えっ、それはすごすぎる。

藤原 訳がわからないですよね。あの時の勢いを取り戻したいです(笑)。

吉澤 きっと取り戻せますよ。私も緊張しそうですが、ギタージャンボリー自体のファンもたくさん集うと聞いて、ほかにはない空気だと思うので、その温かさも体験したいですし、今からとても楽しみです。

藤原さくら、吉澤嘉代子

J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2026 supported by 奥村組

◎スケジュール

  • 2026年3月7日(土)/東京・両国国技館
    12:30開場/14:00開演/20:30終演予定
  • 2026年3月8日(日)/東京・両国国技館
    12:30開場/14:00開演/20:50終演予定

◎出演者

3月7日(土):森山直太朗、竹原ピストル、TOSHI-LOW (BRAHMAN/OAU)、岸田 繁 (くるり)、後藤正文 (ASIAN KUNG-FU GENERATION)、KIRINJI、藤原さくら、吉澤嘉代子、幕間特別演目:杉本ラララ with 別所哲也(J-WAVE TOKYO MORNING RADIO) 全9組/順不同

3月8日(日):秦 基博、トータス松本、不足の美(YO-KING [真心ブラザーズ] & 峯田和伸 [銀杏BOYZ])、七尾旅人、川崎鷹也、竹内アンナ、たかはしほのか(リーガルリリー)、Leina、tonun 全9組/順不同

◎関連リンク
https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2026/

『幽霊家族』吉澤嘉代子

Track List

  1. Into the dream
  2. あの家はもうない
  3. おとうと
  4. わたしの犬
  5. ピーマン
  6. 幽霊
  7. うさぎのひかり
  8. ほおづき
  9. たそかれ
  10. 時の子
  11. メモリー
  12. Out of the dream

ビクター/VICL-66130/2026年3月18日リリース

『uku』藤原さくら

Track List

  1. Angel
  2. OK
  3. My summer
  4. girl of your dreams
  5. Interlude
  6. 深海
  7. one
  8. Carol
  9. だって ずっと このまま? feat. 上白石萌音
  10. Blue Blue Blue
  11. little baby feat. 安部勇磨
  12. scent of the time
  13. Every day

Tiny Jungle Records/TNJG-0006/2026年2月18日リリース

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