「ティアーズ・イン・ヘヴン」はかなり苦労してコピーしました。
──濵田
──ギターを始めたきっかけを教えてもらえますか?
神山 通っていたダンス・スクールの先生からアコギをいただいたことがきっかけです。ただ、初心者すぎて弦の替え方もチューニングのやり方も、ピックがどこに売っているかさえもわからなかった。楽器屋さんにも行ったことがない状態だったので、実際に始めるまでにはそれから1年ぐらいかかりました。
自分なりにいろいろ調べて、必要なものを買って、弦もなんとか替えてみて、中3ぐらいでようやくギターを弾くようになりました。まわりに楽器に目覚めてベースを始める子がいたりして、楽器ができたらカッコいいなって思ったんです。
──最初に弾いた曲を覚えていますか?
神山 最初に弾けるようになったのは、SUPER EIGHTの「Eden」でした。バレー・コードがバンバン出てきて、たぶん、初心者がやるような曲ではないと思うんですけど、なんとか最後まで弾けた時はうれしかったですね。
──濵田さんがギターを始めたきっかけは?
濵田 お父ちゃんにギターをもらったのがきっかけです。お父ちゃんはトラックの運転手をやっていて、運転手仲間たちとバンドを組んで、倉庫に楽器を持ち込み、BOØWYのコピーをやっていたんです。家にもギターがあって、“これ、いらんからあげるわ”ってアコースティック・ギターをくれたんですよ。
ネックがめっちゃ反っていて、弦もサビてて、最初の印象は“ギターってこんなに鳴らへんのや”でした。そのあとに初めて買ったギターは、タカミネのアコギで、それを弾いた時に“メッチャ弾きやすい”って思いました(笑)。
──ふたりとも最初に触れたのはアコースティック・ギターだったんですね。アコースティック・ギターの魅力って何だと思いますか?
神山 エレキ・ギターと圧倒的に違うアコギのポテンシャルっていうのは、1本でどこでもなんでもできるということだと思います。エレキはアンプがないと音が出ないけど、アコギはそれだけで成り立つ強みがある。
あと、エレキも個体差はあるけど、使われている木などにより顕著にキャラクターが現われるのがアコギのオモロイところやなぁって僕は感じています。
濵田 僕にとってのアコギの魅力は“チル感”ですね。アコースティック・ギターの音を聴いただけでストレスが飛ぶような感じがして、大好きです。楽器店に行ってもエレキよりもアコースティックばかり見ているかもしれない。
アコギをそのまま弾く音と、ラインからアンプを通して弾く音も違うので、それも面白いなって感じています。とにかく、“アコギの音”に魅力を感じますね。
──アコースティック・ギターを弾くギタリストで憧れた人はいましたか?
神山 この域には絶対に行けないなと思ったのは押尾コータローさんです。アコギの可能性を広げていると思いますし、あんなプレイはマジにできひん。ルート音を鳴らしながらフレーズを弾いて、ボディを叩いて、って普通は無理よ(笑)。
もちろん、布袋さんやMIYAVIさんにも憧れているし、すごいなって思うけど、アコギ1本でこんなことまでできるんだなって驚いたのは押尾コータローさんです。
濵田 僕は初めてコピーした曲がエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」で、あまりにも衝撃だったので、すごく印象に残っています。かなり苦労してコピーしました。
でも、意外とやっていることはシンプルなんですよね。そのあとにいろいろな曲を覚えていって、シンプルなコードとシンプルな弾き方で、こういうメロディが生まれていくんやって改めて気づいたことも多い。その最初のきっかけはクラプトンさんでした。
──神山さんはコピーするのが難しかった曲はありますか?
神山 全部難しかったですよ。ギターを始めたのは中3ですけど、本格的にやり始めたのはデビューしてからで。どっちかというとエレキを弾くことが多くて、布袋さんの曲もコピーしようとしたけど、難しくてできなかった。「BAD FEELING」を鬼のように練習したけど、いまだに弾けない(笑)。あの曲の完コピはむずい。それっぽくはできるけど、あんなにきれいに音が切れないです。
2本で合わせるほうが断然いい。曲の表情が全然変わります。
──神山
──昨年のツアーのアコースティック・セットの「しらんけど」では、ふたりでギター・パートを弾き分けていましたね。神山さんがベースっぽいライン、濵田さんが高音カッティングとなっていましたが、パートの分担はどのように決めるのですか?
神山 ライブ用にパート分けをしてもらって、それぞれで練習していきます。実際に合わせてみて、“ああ、そういうことね”ってわかる場合もある。僕はリードを弾くこともあるし、その場合は濵ちゃんがストロークを弾いてバッキングしてくれる。そういう時は、うぇーい!って盛り上がります(笑)。
濵田 そう、音を合わせた時って気持ちいい! ギターがふたりいるっていいよね。ギター2本だからアコースティック・コーナーが成立しているところはあります。
──「あじわい」は、神山さんがリード、濵田さんがバッキングを担当していましたね。
濵田 あれ、よかったっすよね〜。
神山 やっぱり、広がりを考えたらギターは2本あるほうが断然いい。曲の表情が全然変わります。多ければ多いほどいい。最低でも2本、欲を言えばもう2本あってもいい(笑)。
──カポタストをよく使っているようですが、こだわりはありますか?
神山 おしゃれでかわいいものを使いたいです。ライブではコール・クラークのギターを使うことが多いので、ポジションマークの青いインレイにマッチするように、シェルの模様が入っているタリアカポを使っています。ギブソンのギターを使う時はギブソンのロゴ入りカポを使うようにしたり。
カポってそんなに変わらんやろうって思っていたけど、フレットぎりぎりに付けたほうがいいものもあるし、ちょっとずらしたほうがいいものもあって、カポにも個性があるんだなって気づきました。
──ふたりともステージでは、ギターを弾きながら歌うことが多いと思うのですが、弾き語りを習得するコツはありますか?
濵田 ひたすら練習しています。ギターから指が離れた瞬間に何を歌っているか、そういうことまで意識して、ひたすらやるしかないです。狂ったようにやるしかない(笑)。
神山 反復練習しかないですね。できるようになるまでやる。昔は全然弾けなかったけど、練習の積み重ねで、ここまでできるようになったと思います。
濵田 そうやね。右手、左手、口が全部違うことをやるから、とにかく練習。ギターの前にちょっとドラムをやっていたんですけど、足と手が違うことをやるので、あれは役に立っているかも。
──ライブまでの準備期間が短い場合も多いと思うのですが、どうやって練習時間を作っているんですか?
濵田 家に帰ってからひたすらやってます。
神山 僕は待ち時間があるような現場には、ギターを持って行って練習しています。それでも全然おっつかないですけど。
──新作『A.H.O. -Audio Hang Out-』ではメンバーそれぞれが関わった曲がありますね。濵田さんの「Rainy Rhapsody」は、Penthouseの浪岡真太郎さんと大原真帆さんによる曲です。
濵田 そうです! 僕が好きな曲はどういうタイプか聞かれて、Penthouseさんの「雨宿り」って答えました。ボーカルも、ギターの感じも、曲調も、本当に大好きなんです。
それならPenthouseさんに曲を作ってもらおうという流れになって。僕がギターを弾きながらでもライブで披露できるような曲を作ってくださいという難しいオーダーで依頼したら、シングルのM1でもおかしくないような素敵な曲を作ってくださって。僕にとっては最高にチルな曲です。
──この曲のギターはもう練習しているんですか?
濵田 むちゃくちゃ練習しています(笑)。あの曲をライブで弾けたらカッコいいと思うんですけど、まあ、むずい。コードが複雑で、転調するんですよ。もうね、転調しないままでもいいかなって思うぐらいむずい(笑)。でも、弾いていて死ぬほど楽しくて、すごく気持ちよくて、家でも飽きずに練習しています。
──今後、WEST.の中でギターでやってみたいことはありますか? 以前、濵田さんはライブでギター・バトルをやってみたいと言っていました。
濵田 ギター・バトルは面白い。絶対に負けるけどやりたい(笑)。あとは配信でギターの練習をしているところを流してみたいですね。どうやってふたりでギターを練習しているか1回見てほしい。一瞬しか出てこないディミニッシュ・コードが死ぬほどむずくて何時間もかかっているとか、ケラケラ笑いながら練習しているのを見てもらいたいな。
神山 それはやってみたいですね。あとは、ギターを始めたい人の質問に答えながらやるっていうのも面白いだろうし。やっぱり生演奏っていいなと思うんです。本当に、生きてるなって感じを味わえる。これからも、やれる時はできるだけ生演奏をしたい。楽器を弾いていたらむちゃ楽しいし、気持ちいい。だから、まずはギターがもっとうまくなりたいです。
──最後にメッセージをお願いします。
神山 WEST.はみんな音楽がすごく好きで、それぞれが楽器もやっていて、言ってみれば声も楽器だと思っていて、歌うのが大好きなんです。皆さんに全力で音楽を届けたいし、特にライブが楽しいグループだと思う。
その中にはギターを弾くコーナーもあります。まだまだ発展途上やし、もっと頑張らないといけないけど、音楽に対してはむちゃくちゃ真剣に向き合っているので、ほんまか?と思いながらでもいいので、ライブを観に来てもらえたらうれしいですね。
濵田 僕は歌が大好きで、アコースティック・ギターを始めてよかったなって思っています。どこを押さえたらいいのかわからんところから始めて、今ではライブのアコースティック・コーナーで楽器と歌と披露できるようになって。
ギターを始めようと思っている方は、僕でもできるんだから自信を持ってほしいです。『アコースティック・ギター・マガジン』は、わかりやすくコードを書いてある譜面が付いていて素晴らしい。コードを1〜2個覚えるだけでもギターを弾く喜びを知ることができると思うので、やってみてほしいです。
本当、アコースティック・ギターの音は気持ちいい。大好きです!
アコースティック・ギター・マガジン Vol.104

本記事はアコースティック・ギター・マガジン Vol.104にも掲載されています。誌面では撮り下ろしのソロ・カットも! 表紙&特集は『ギタリスト、ボブ・ディランの実像』。ぜひ全国の書店・楽器店にてチェックしてみてください。
『A.H.O. -Audio Hang Out-』WEST.

Track List
- A.H.O.
- アップルパイ
- まぁいっか!
- shhhhhhh!!
- TICKTOK
- Sweety
- Rainy Rhapsody
- それいけベストフレンド!
- ハート
- FATE
- WESTraight
- ティダ
- SOUTH WEST BEACH!!
- パワースポット俺
ELOV-Label/LCCN-0891(通常盤)/2025年3月12日リリース
「ウェッサイソウル! / BIG LOVE SONG」WEST.

Track List
- ウェッサイソウル!
- BIG LOVE SONG
- 春びより
- 僕だけの小さな花
ELOV-Label/LCCN-0900(通常盤)/2025年5月7日リリース