日本再上陸を果たしたイーストマン。
1992年に設立され、ギターやバイオリンに加えて管楽器なども手がけるメーカーだ。
2019年にはボジョアを傘下に収め、そのラインナップは一新されている。
今回は森 恵にトラディショナル・シリーズのうち、熱処理を施したトップ材を採用するTCモデルを試してもらった。
森 恵が試すトラディショナル・シリーズ
オールドの質感を再現したトップ材を採用
E8-D-TC
サーモキュア処理をしたシトカ・スプルースをトップに採用した、ローズウッド・ボディのドレッドノート。仕上げはボジョアのノウハウを生かし、ラッカー系の質感と耐久性を両立したウレタン系のトゥルートーン・グロスだ。
Specifications
●ボディ・トップ:サーモキュア・シトカ・スプルース単板
●ボディ・サイド&バック:インディアン・ローズウッド単板
●ネック:マホガニー
●指板&ブリッジ:エボニー
●価格:オープン(実勢市場価格188,100円/税抜価格171,000円)
Dタイプとしては締まった低音で良いですね。私は声が大きくて、アンプラグドだとストロークで弾いても歌しか聴こえないこともありますが、このギターなら音質的にも音量的にも、歌をちゃんと支えてくれると思います。
マホガニー・ボディでスケール約632mmの1本
E6-OM-TC
トップはこちらも、従来よりも低めの温度での熱処理でセルロースの結晶化を促進する、サーモキュア処理を施したシトカ・スプルースを採用。ボディはマホガニーだ。型番はOMだが、スケールは632mmという実質000のコンパクトなモデルだ。
Specifications
●ボディ・トップ:サーモキュア・シトカ・スプルース単板
●ボディ・サイド&バック:マホガニー単板
●ネック:マホガニー
●指板&ブリッジ:エボニー
●価格:オープン(実勢市場価格156,200円/税抜価格142,000円)
新品なのにパッと弾いてもキーンと耳に響く嫌な部分がなくて、まろやかな音がしますね。家でちゃんとギターの音を聴きながら弾きたくなるようなギターです。トゥルートーン仕上げは手入れがラクなのも良いですね。
総評
私がもともと好きで弾き始めたのは低音がしっかり鳴るDシェイプで、レコーディングでは今でも使うことがあります。
ただ私は体が小さいので、見た目のバランスや楽器の取り回しを考えて、ライブでは00タイプを使っています。
00は最初、マホガニー・ボディを指弾き用、ローズウッド・ボディはコードをジャキジャキ弾くバンド用みたく使い分けていましたが、今回弾いたE6-OM-TCはマホガニー・ボディだけれど両方の用途に使えそうですね。
あと、私は手が小さくて指もあまり長くないんですが、ネックはハイポジションでも握り込めるし、どのポジションでも握り心地が変わらない感じでスムーズに移動できますね。
E8-D-TCのネックも、Dタイプのものにしては細めで握りやすいと思います。
2本の音質を比べると、E8-D-TCはDと言えど低音の抑制が効いていて、E6-OM-TCは中音域がしっかり出るので、良い意味で音質差が少なくオールマイティな感じがします。
特にE8-D-TCは扱いやすく、抱えても肩が上がる感じが少なくて、Dタイプとしてはかなり重宝する気がしますね。
弾き語りの時は声との相性が気になるし、アンサンブルの時は編成によっても楽器の選択基準は変わってきますが、この2本だと楽器のサイズ感や演奏する時の音量によって、どちらも選択肢に入れられるんじゃないでしょうか。
対応できる音楽の幅が広そうなので、使い方に悩むというよりむしろ、いろいろな可能性がある楽器だなあと、ポジティブに考えられる音だと思います。
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取材:坂本信 写真:八島崇