Breedlove(ブリードラブ)の新基軸“The Organic Pro Collection”×井草聖二

 アメリカ・オレゴン州を拠点とするハンドメイド・アコギ・ブランド/ブリードラブ。ブランドの新機軸となる中高級価格帯のオール単板ライン“The Organic Pro Collection”の実力や如何に、ということでフィンガースタイリスト井草聖二を招き、代表4機種を集めて試奏してみた。

井草聖二試奏動画

The Organic Pro Collectionとは

 1990年、オレゴン州ベンドで立ち上げられたブリードラブ。今回、USAメイドの洗練されたデザインと高いサウンドクオリティを受け継ぎながら、中国の工場で製作することで手に取りやすい価格帯を実現したThe Organic Pro Collectionが登場した。
 同シリーズは幅広いプレイ・スタイルに応えるため、マートルウッドをサイド&バックに採用したArtista Pro、ヨーロピアン・スプルース・トップのPerformer Pro、ウエスタン・レッド・シダー・トップ&サイドモニター・サウンドホールが特徴のSolo Pro、そしてエキゾティックな木目も印象的なオール・アフリカン・マホガニー・ボディのWildwood Proという、4種類ものシリーズがラインナップしている。シリーズによってボディ・シェイプにはバリエーションがあり、自身のスタイルに合った最良の1本を選べる点も魅力的だ。
 ボディはすべて単板で作られ、トップにはサウンド・オプティマイゼーション(=音の最適化)”と名付けられた、長年のプロセスから生まれたカスケード・ブレイシングが施されている。これにより、使われた木材や板厚などに合わせ、効率よくボディを振動させている。また各部の組み込み精度も高く、面取りやフレットのエッジ処理なども丁寧で、演奏性も高い。
 すべてのモデルに共通で、ナチュラルな出音のフィッシュマン製“Flex Plus-T”ピックアップが装備され、すぐにライブで使える実力も備えている。価格面も含め、初心者からプロ・ユースまで満足できる、まさにプレイヤー目線で作られたシリーズだ。

井草聖二×The Organic Pro Collection

 今回、The Organic Pro Collectionから4モデルを試させていただきましたが、どれもブリードラブらしいきらびやかな音が鳴り、弾きやすいですね。それにフィッシュマンのピックアップ・システムも付いているので、ライブで使える仕様も魅力です。あと、どのモデルも音の反応が抜群に素晴らしく、本当に、ストレス・フリーで弾けますね。
 音を鳴らすまでは、ピエゾのシングル・ピックアップだけのシステムでは、ピエゾ臭さもあるのかなと思っていましたが、想像以上にナチュラルで生々しい音を鳴らせます。ボディ・ヒッティングの音まで拾ってくれて驚きました。あと付属のチューナーも、合った瞬間に色が変わってくれるので、ライブでも視認性が高いと思います。それに何より、細かな点までプレイヤー本位で設計されていることを感じます。質の高いギターを求めやすい価格帯で販売し、さらにさまざまなモデルがあることも、このシリーズの大きな魅力だと思います。僕のようなスタイルでは、1本で2台分の音を楽しめる“Solo Pro Concert”、あと積極的な音作りがしやすいシン・ボディの“Performer Pro Concert Thinline”の2本を、オススメしたいですね。
 このシリーズは美しいルックスにも惹かれますが、プレイヤー目線で真摯に作られたアコースティック・ギターだと思うので、しっかり弾き込んで、どんどん自分のモノにしていってほしいと感じたギターですね。

Wildwood Pro Concertina Suede CE

ワイルドな木目が印象的なアフリカン・マホガニー単板がボディに使われた、Wildwood Proシリーズ。コンチェルティーナは、今回試奏した中では最も小型のボディだが、さらに小さなコンパニオンもある。スケールは24.75インチ(約628.7mm)で、12fジョイントも特徴と言えるが、カッタウェイが施された抱えやすいボディ・シェイプのため、ハイポジションも弾きやすい。音は温かみもありながらクリアで、各弦の粒立ちも美しい。

ボディ・タイプ:コンチェルティーナ
トップ:アフリカン・マホガニー単板
サイド&バック:アフリカン・マホガニー単板
ネック:アフリカン・マホガニー
指板&ブリッジ:オバンコール (ステイン・ブラック)
スケール:24.75インチ

価格:206,800円

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ボディが小型なので手に持った瞬間、抱えやすいと思いました。それから弦高はそこまで低くなかったですが、とても弾きやすい。スケールが短く、12fジョイントなので、ローポジションも近く感じます。このモデルは初心者にもオススメですね。音はオール・マホガニー・ボディの温かさもありながら、クリアさも同居しています。コードを弾いた時にも濁りがなくて、1、2弦のトップ・ノートの音もスッと伸びてくれて、テンション・コードも美しく響きます。

Performer Pro Concert Thinline Aged Toner CE

トップがヨーロピアン・スプルース単板、サイド&バックがアフリカン・マホガニー単板という組み合わせのPerformer Proシリーズ。幅広いプレイヤーから支持されているブリードラブを代表するボディ・シェイプのコンサート・シンライン・モデルだ。ボディ厚がテール部で3.62インチ(約92mm)と、薄胴になっている点が大きな特徴。そのため音の反応も速い。エイジド・トナーによるグロス・フィニッシュが施されている。

ボディ・タイプ:コンサート・シンボディ
トップ:ヨーロピアン・スプルース単板
サイド&バック:アフリカン・マホガニー単板
ネック:アフリカン・マホガニー
指板&ブリッジ:オバンコール (ステイン・ブラック)
スケール:25.3インチ

価格:231,000 円

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生音もラインを通した音も、いい意味でスッキリしています。だから、速いフレーズを弾いても1音1音が抜けてくれるので、テクニカルな演奏にすごくハマるモデルですね。ストレスなく速いパッセージが弾けます。あとパームの音も締まって響き、特殊奏法でも使いやすい。それから、ハイのきらびやかさもありつつ低音が締まっているので、アンサンブルでも音が抜けてくれるはずです。ボディ厚が薄くて、演奏性や抱え心地も抜群ですね。

Solo Pro Concert Edgeburst CE

The Organic Pro Collectionの中で、唯一ウエスタン・レッド・シダー単板がトップに使われた、Solo Proシリーズ。ギターに関してはコンサートのみで12弦やナイロン弦といったモデルもラインナップ。さらにコンチェルト・サイズのアコースティック・ベースもある。また、サイドのウェスト部分には、サイドモニター・サウンドホールが設けられ、ギターの音をモニターしやすい。さらに専用の蓋が付いているため、その有無で音色も変化する。

ボディ・タイプ:コンサート
トップ:ウエスタン・レッド・シダー単板
サイド&バック:アフリカン・マホガニー単板
ネック:アフリカン・マホガニー
指板&ブリッジ:オバンコール (ステイン・ブラック)
スケール:25.3インチ

価格:231,000 円

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すごく驚いたことは、サイドモニター・サウンドホールの蓋の有無で、ギターのサウンド・キャラクターがすごく変わったことですね。モニター以上の役割を果たしています。閉じた状態だとシダーのややダークな深い音を楽しめますが、開けた瞬間にきらびやかで開放的な音になります。1本でふたつの音色を使い分けられ、ラインでも同じ印象で、ライブやレコーディングで活躍すると思います。これは、オールマイティなギターですね。

Artista Pro Concerto Burnt Amber CE

ブリードラブを象徴するマートルウッドの単板が、サイド&バックに使われたArtista Proシリーズ。独特の木目と、陰影が強いバーント・アンバー・フィニッシュが、ルックス面でも目を引く。ボディ・サイズは最も大きなコンチェルトだが、スケールはコンサートと変わらず25.3インチ(約642.6mm)となる。トップはヨーロピアン・スプルース単板でサイド&バックとの組み合わせから、太く存在感のあるミドル・レンジを生む。

ボディ・タイプ:コンチェルト
トップ:ヨーロピアン・スプルース単板
サイド&バック:マートルウッド単板
ネック:メイプル
指板&ブリッジ:オバンコール (ステイン・ブラック)
スケール:25.3インチ

価格:264,000 円

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ボディが大きく、低域も高域もしっかり伸びていて、レンジ感が広いですね。ピックで強めに弾いても余裕を感じます。それから上下がありながら、ミドル・レンジにも特徴があり、届けたい音が入っている印象です。これだけレンジ感があると、演奏でダイナミクスを出したい方やシンガーの伴奏でも安心感を感じそうです。このギターは、アンサンブルやストローク中心の曲で思いっきりかき鳴らしたら、すごく気持ちがいいと思いますね。

*本記事は『アコースティック・ギター・マガジンVol.98』からの抜粋です。詳細はこちらへ。

アコースティック・ギター・マガジンVol.98 2023年12月号

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取材・文:菊池真平 スチール&動画撮影・音声・編集:岩佐篤樹

井草聖二

いぐさせいじ 1988年生まれ、兵庫県出身。牧師家庭に生まれ幼少より讃美歌、ゴスペルに親しむ。11歳でドラム、15歳よりギターを始め、20歳でプロとしての活動をスタート。2015年から韓国、中国などアジアでの演奏活動も開始。アコースティック/エレクトリックを問わずさまざまなギターを愛用し、ソロ·ギター界を牽引するひとりとして注目を集めている。 https://www.igusaseiji.com

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