井草聖二の15周年記念ライブで使用された、6本のギターと関連機材をレポート!

ソロ・ギタリストの井草聖二が、デビュー15周年とYouTubeチャンネル登録者数100万人突破を記念したワンマン・ライブ“井草聖二15th Anniversary Concert”を、2024年9月に開催した。

今回は、そのステージで井草が使用した6本のギターと関連機材をレポート。ソロ・ギター・スタイルからトラックを使った楽曲までをひとりで演出するために準備された、こだわりのライブ・ギアを見ていこう。

取材・文=角佳音 撮影=小原啓樹

aNueNue/LS-Seiji Igusa

aNueNue/LS-Seiji Igusa(前面)
aNueNue/LS-Seiji Igusa(背面)

“アコギらしいサウンド”を奏でる井草のシグネチャー・モデル

本公演におけるメイン・ギターは、2024年に誕生したシグネチャー・モデル=LS-Seiji Igusa。井草本人とルシアーの杉田健司氏監修のもとで製作されたモデルで、井草が以前より使用しているKenji Sugita Carrera 0-12Fに近いネック・シェイプやヒールなど、随所に杉田氏のエッセンスが散りばめられている。井草自身も、“Carreraに似た、弾き心地の良さを感じる”とコメント。

ボディの材構成は、トップにスイスムーン・スプルース、サイド&バックにマダガスカル・ローズウッド。ピックアップにはM-factoryのコンタクト・ピエゾとSUNRISEのマグネティック・ピックアップを搭載しており、デュアルで出力する。なお、弦はD’AddarioのXSシリーズを使用している。

サウンドは、“すごくナチュラルで、アコギらしい音がする”とのことで、オープニングを飾った「Lakeside」などのバラード調から、「Smile」や「Windill」などのアップテンポな楽曲まで、幅広いジャンルにおいて安定的な音色を聴かせた。

ヘッドの装飾
モザイク・パターンを木材で表現したヘッドの装飾も印象的

Martin/R-18

Martin/R-18(前面)
Martin/R-18(背面)

ビンテージ・マーティンで“世界旅行気分”を味わう

Martinの1933年製R-18は、2020年初頭に入手した1本。ボディ・トップにスプルース、バック&サイドにマホガニーを配したアーチトップのモデルだ。

本公演では、“世界旅行”をテーマにしたセクションの「Compass」が本器で奏でられた。この楽曲に本器を使用した理由について、“生で弾くとビンテージの乾いた音なんですが、ラインを通すと、えぐみのあるノイジーなサウンドになるんです。なので、民族音楽的な要素もあるこの曲で使うことにしました”と話してくれた。

また、本器入手後にピエゾ内蔵のブリッジに交換したようで、“古いギターなので、ネックもゴツくて弾きにくいんですが、ブリッジだけは現代らしいセットアップにしてあります”とのこと。弦はD’Addarioのニッケル・ブロンズを使用。

HAYASHI Guitars/HCOC

HAYASHI Guitars/HCOC(前面)
HAYASHI Guitars/HCOC(背面)

“動画映え”を意識した杢へのこだわり

ボサノヴァ・テイストの「Sprint」において、爽やかで軽快な音色を奏でたのが、井草によるオーダーで誕生したHAYASHI GuitarsのHCOCだ。

ボディ・トップは柾目のルッツ・スプルース単板で、サイド&バックは美しい木目のタスマニアン・ブラックウッド。“動画映えするように、木目にはこだわった”そうで、漆黒のエボニー指板とのコントラストや杢の美麗さを損なわないシンプルな意匠が印象的だ。

ライブでは、DPAの超単一指向性マイクロホン“4099”で収音して出力。また弦は、D’Addarioのクラシック・ギター用ノーマル・テンションを使用している。

SWITCH/00 Igusa Seiji

SWITCH/00 Igusa Seiji(前面)
SWITCH/00 Igusa Seiji(背面)

ライブのための工夫が詰まった00 Igusa Seiji

2020年に発売されたSWITCHによるシグネチャー・モデル第二弾が、この00 Igusa Seijiだ。第一弾のSCOM 3C DB Igusa SeijiはOMサイズだったが、長時間のライブでの使用を考慮し、00サイズのボディを採用、厚みも抑え、軽量化を実現した。さらに、ステージ照明の反射を軽減する“ラッカー・サテン・フィニッシュ”など、ライブのための工夫が詰まったモデルである。

サイド&バックにマホガニー、トップにスプルースという材構成で、それぞれがビンテージ材のため、“特にラインにつないだときに、ビンテージ材らしいドライなサウンドを感じる”という。

ピックアップにTRIALのコンタクト・ピエゾとDiMarzioのマグネットを搭載したデュアル出力仕様。弦は、D’AddarioのXSシリーズを使用している。

公演序盤の「monologue」、「kokoro」の2曲で使用され、ボディ・ヒットやアルペジオなどの多彩な奏法を交えながら、楽曲の世界観を鮮やかに表現した。

YAMAHA/SLG200S

YAMAHA/SLG200S(前面)
YAMAHA/SLG200S(背面)

本公演のために準備したサイレント・ギター

今回のワンマン・ライブに向け、公演当日の1週間前に入手したというサイレント・ギター=SLG200S。

これまで、本器と同シリーズのナイロン弦モデル=SLG200Nを愛用してきた井草。MCで“以前のクリスマスに、ギター(SLG200N)に電飾を取り付けて、ライトアップして演奏する動画を「絶対にバズる!」と思って公開したら、再生回数がまったく伸びなかったんです。しかも、電飾を付けたことでボディがぼろぼろになってしまって……。それで今回新しく買いました”と本器にまつわるエピソードを明かした。

そのトークを終えると会場が暗転。すると暗闇のなか、今回新しく入手したSLG200Sも光り始め(!)、「Advent Weath」が披露された。前フリの効いた演出に、会場からは思わず笑いが溢れた。ほかにも「Sunflower」、「good sleep…」で(電飾なしで)登場。

なお、本器搭載の“SRTパワード・ピックアップ”には、マイク・シュミレーターが内蔵されており、井草曰く“レコーディングした音に近いライン・サウンドが出て、面白いギター”とのこと。弦はD’AddarioのXTシリーズを使用している。

Ibanez/AFC-125-BKF

Ibanez/AFC-125-BKF(前面)
Ibanez/AFC-125-BKF(背面)

視聴者からも人気を集めるIbanezのフルアコ

井草のYouTubeチャンネルで最も登場回数が多いというIbanezのフルアコ、AFC-125-BKF。“今回のライブはチャンネル登録者数100万人記念もかねているので、視聴者からも評判が良い本器を使うことにしたんです”とのこと。

「keep it move’n」や「prism」、「Rainy Season」など、幅広いジャンルの楽曲にて使用。これらはエレキ・ギターとしてラインで出力されていたが、“本当はマイクをつけてアコースティックな音を届けたい”と語っており、「ラビリンス」の1曲のみ、DPA 4099より収音したサウンドをミックスして出力していた。

D’Addarioのフラットワウンド弦を使用している。

Pedals

本公演では、個々のギターそれぞれに異なるサウンド・システムが用意されていた。まずはそれらの機材を一挙に見ていこう。

プリアンプ
①②M-factory/PM-200 Tour(プリアンプ)
オーディオ・インターフェイス
③RME/Babyface Pro(オーディオ・インターフェイス)
PC
④MainStage(DAWソフト)
フットスイッチ
⑤IK Multimedia/iRig BlueTurn(フットスイッチ)
プリアンプ、エフェクター類
⑥TRIAL/RAPTOR-EQ(プリアンプ)
⑦M-factory/DDI-3(DI)
⑧Enfini Custom Works/R-Zero Traveler(プリアンプ)
⑨strymon/BigSky(リバーブ)
⑩strymon/TIMELINE(ディレイ、ルーパー)

続いて、ギターごとの機材構成とシグナル・ルーティングなどをチェックしていこう。

aNueNue/LS-Seiji Igusa

ギターから①M-factory PM-200 Tour(プリアンプ)を経由し、③RME Babyface Pro(オーディオ・インターフェイス)を介してMacBookの④MainStage(DAWソフト)へと接続。PCとBluetooth接続している⑤IK Multimedia/iRig BlueTurn(フットスイッチ)で、④のプリセットの切り替えを行ない、そこで調整されたサウンドが③からPAへと送られている。

Martin/R-18

システムはaNueNueと同様で、プリアンプは下段の②M-factory PM-200 Tour(プリアンプ)を使用。EQやボリュームを本器用に調整している。

SWITCH/00 Igusa Seiji

00 Igusa Seijiからデュアルで出力された信号は、⑥TRIAL RAPTOR-EQ(プリアンプ)にて各ピックアップのイコライジングを施し、ミックスされた信号をモノラルで出力。⑦M-factoryのDDI-3(DI)を経由してPAへと送られる。

Ibanez/AFC-125-BKF

AFC-125-BKFからは、⑧strymonのTIMELINE(ディレイ、ルーパー)を経由し⑨Enfini Custom Worksのプリアンプ=R-Zero Travelerのチャンネル1へと接続されている。また、⑨のセンドから⑩strymon BigSky(リバーブ)につながれ、ステレオ信号でリターン端子へと戻っており、⑨からPAへステレオで出力されている。

YAMAHA/SLG200S

SLG200Sは⑧のチャンネル2へと直接つながっている。FXループや出力はAFC-125-BKFと同様。

Other Items

カポタストは、SHUBBの井草聖二モデルを使用。フラットピックはWegen Picks製と、井草の15周年記念モデル。サムピックはJim Dunlop製のUltex Thumb Pick mediumを使用している。

カポタストとピック類

SNSでシェアする

アコースティック・ギター・マガジン

バックナンバー一覧へ