押尾コータローの壮麗なライブ・サウンドを生み出す、ギター&音響機材

2024年4月29日にビルボードライブ東京で行なわれた、アコースティック・ギター・マガジンの通巻100号記念ライブ“ONE NIGHT SESSION supported by ACOUSTIC GUITAR MAGAZINE 100th issue”には、押尾コータローと沖仁の2人が出演してくれた。ここでは、そのステージで押尾が使用したギターやエフェクターから、PAサイドのセッティングまでを紹介しよう。アコギ1本で会場全体を包み込む、壮大で美しいサウンドメイクの秘密とは?

文=福崎敬太 撮影=センキャメ

Greven Guitars Japan/Oshio-DC HR

Oshio-DC HR

グレーベンとの絆が生んだ、押尾モデル

ボディ・ヒットやタッピングなどの様々な奏法を駆使し、オープン・チューニングを多用する押尾は、曲ごとに違うチューニングや弦の寿命、ギターの疲労を考慮して、ライブでは複数のギターを持ち替える。ビルボードライブ東京のステージでは、2本が用意された。

上写真の1本は、ルッツ・スプルース・トップにホンジュラス・ローズウッドのサイド&バック、マホガニー・ネック、エボニー指板という材構成のOshio-DC HR。ピックアップにはSUNRISE製のマグネティック&TRIAL RAPTOR SYSTEMのピエゾを搭載している。

「オシ・オキ Time」、「スペイン」、「リベルタンゴ」、ソロで演奏した「Together!!!」、そしてアンコールの「My Way」で本器が使用された。

Greven Guitars Japan/Oshio-DC BR

Oshio-DC BR

渡辺香津美「UNICORN」のカバーなどで使用

この日のステージに用意されたもう1本は、Oshio-DC BR。サイド&バックにブラジリアン・ローズウッドを採用したモデルだ。

オープニングを飾った「Destiny」や本編ラストの「ボレロ」で登場したほか、療養のため本公演への出演がキャンセルとなってしまった渡辺香津美の代表曲「UNICORN」のカバーでも、本器が使用された。

なお、使用弦はどちらもErnie BallのEverlastで、ゲージはMedium Light(.12〜.54)。

Pedals

空間を揺らす低音から煌びやかな高音までを生むシステム

押尾の足下
①TRIAL/RAPTOR & New Old-D.I.(DI/A/Bスイッチャー)、②Rupert Neve Designs/5012 Duo Mic Pre(プリアンプ)、③KORG/Pitchblack Portable(チューナー)、④Vital Audio/VA-05 Mk-II(パワーサプライ)

押尾の立ち位置後方に設置されたシステム。ギターからDI/A/Bスイッチャー①にピエゾ信号とマグネティック信号の2系統で入力され、左にある2チャンネルのプリアンプ②を経由してPA卓側へと送られる。また、①にはギター交換時などに使うミュート機能が搭載されており、外部スイッチでギター・テックがステージ袖から操作することも可能だ。

④のパワーサプライは持ち回りやすい小型のモデルで、ユニバーサル電源のため海外でも使用。通常のソロ・ライブでは、エバ電子による特別仕様のマルチ電源ユニットを使用している。

5012 Duo Mic Pre
5012 Duo Mic Preのセッティング

続いて、PA卓の脇に設置され、楽曲に応じてエンジニアが操作するエフェクターを見ていこう。

PAサイドに用意されたエフェクター
⑤T.C. Electronic/D-TWO(ディレイ)、⑥Lexicon/MPX 500(マルチ・エフェクター)、⑦ZOOM/9200(リバーブ)、⑧Eventide/H9(マルチ・エフェクター)

3Uのラックには、上からディレイ⑤、マルチ・エフェクター⑥、リバーブ⑦をマウント。⑥はリバーブとして使用している。セッティングは曲ごとに細かく設定。

ラック上部のマルチ・エフェクター⑧は、普段はオクターバーやコーラスとして使用する。この日のライブでは、ソロ演奏の「Together!!!」で、マグネティック・ピックアップの信号に本機のコーラスをかけ、音の厚みを演出した。コーラスのセッティングは以下の写真のとおりだ。

Eventide/H9
Eventide/H9とエフェクトの設定画面

PA Setting

ダウン・チューニングにする曲があったり、ボディ・ヒットやタッピングなどの多種多様な奏法があったりと、押尾が奏でるサウンドの種類やレンジはとてつもなく幅広い。それらをピュアに再現するためには、PA側でのセッティングが非常に重要となる。

ボディの鳴り全体を出力するピエゾの信号と、弦の振動を収音したマグネティックの信号を、それぞれで細かくEQなどをセッティングすることで、押尾のシグネチャー・サウンドが生み出されているのだ。

注目は、ピエゾからの信号が分岐してPAへ送られている点。ボディ・ヒットの音だけにフォーカスするものと、弦によるサウンドにフォーカスするものとでEQを変えている。

PA画面
バス・ドラムのようなサウンドにするため、低域にフォーカスしたイコライジングに。この信号にはリバーブはかけていない
PA画面
もう一方のピエゾの信号は、ボディ・ヒットの低音部をカットし、ギターらしい帯域にフォーカス

また、テンポの速い曲などで高音弦がピーキーに鳴る時だけに、高音域にコンプレッションをかけるため、ボーカルの歯擦音にかけるプラグイン=DeEsserをかけている。

DeEsser
DeEsserプラグインの設定画面

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