LIVE REPORT
“弾き語りツアーをやるたびに、自分も知らなかったギターの可能性に出会える。ギターってすごく楽しいんだな、弾き語りっていいなと改めて気づいてもらえたら嬉しいです”。
11月12日、竹内アンナが“弾き語りTOUR 2022 atELIER -アトリエ-”の追加公演を、東京の淀橋教会インマヌエル礼拝堂にて行なった。
音源では華やかなポップ・アレンジが中心だが、バンド、弾き語り、ルーパー&サンプラーを使ったソロ・パフォーマンスと、多彩な編成で届ける彼女のライブ。それは遊び心と探究心を爆発させる場所とも言える。そのうち今回は、“大好きな建築物”をまわるコンセプト・ツアーとなっている。
天井高22m、窓から降り注ぐ日差しもあいまって、開放感に満ちた礼拝堂。そこに満面の笑みを浮かべて登場した竹内は、「ペチュニアの花」からライブをスタート。オープンDチューニングのマーティン00-18で、重厚かつあたたかな音を響かせる。続く「ICE CREAM.」では愛器マーティンOMJMへチェンジ。奏法もピックからフィンガーピッキングへ切り替える。初っぱなから、チューニングや弾き方の幅広さで、アコースティック音楽の深みへと観客を誘っていく。
自室の部屋をイメージしたというステージは、アロマ・ディフューザー、観葉植物などで彩られている。さらに私物を用意したという本棚には『The Princess Diaries』(著:メグ・キャボット)や、憧れだというジョン・メイヤー『Sob Rock』のレコードなども置かれていた。
弾き語りっていいなと改めて気づいてもらえたら嬉しい。
「No no no (It’s about you)」でカッティング、「Free! Free! Free!」でスラップを披露すると、一転カバー・コーナーへ。それも驚きの選曲で、ジャネット・ジャクソン「Rhythm Nation」だった。この曲はスライ&ザ・ファミリー・ストーン「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」のギター・リフがサンプリングされているが、そのニュアンスを見事にアコギへ落とし込んでいた。それにとどまらず、Adoの「踊」もプレイ。オクターブ下のエフェクトを足したスラップで、カオティックな音像を作り出した。
今回は3本のアコースティック・ギターが用意されていたが、それぞれについて竹内はこう語る。“私の好きなジョン・メイヤー・モデルのマーティンOMJMは、女性でも握りやすいネックです。ライブやレコーディングでこの子が大活躍しています。同じく00-18は小ぶりなので、ライブの時に動きやすくて使います。最後にもう1本、このツアーで初めて使うマーティンのガット・ギターです(000C Nylonだと思われる)。大きな違いはナイロン弦だということ。やわらかい音がします”。
ここからはナイロン弦ギターで3曲をパフォーマンス。指を弦にチャッと当てるストリングヒットでグルーヴを生みつつ、甘い歌声で魅了する「いいよ。」。ピアニッシモのタッチに会場中が耳を澄ませたボサノヴァ風の「泡沫SUMMER」。クラシカルなイントロが素晴らしい「TOKYO NITE」。声色も含め、弾き語りならではの抑揚をつけながら、レンジの広いナイロン弦ギターを弾きこなしてみせた。
終盤は9月に配信リリースされた「あいたいわ」などで駆け抜ける。“中学3年生の時からずっと、部屋の中で曲を作っています。自分の部屋で作った楽曲たちが、今まさに目の前の皆さんに届けられている。すごく嬉しいです。きっとこれからもお部屋の中で生まれる私の音楽は変わらないし、弾き語りツアーは私の原点なので、ぜひ毎年やっていきたいなと思っています”。そう語る竹内は、「手のひら重ねれば」でハンドクラップを促し、オーディエンスをひとつにして本編を締めくくった。
アンコールが沸き起こると、再び姿を見せた彼女。披露するナンバーは、ジャズ/R&Bを往来する「made my day feat. Takuya Kuroda / Marcus D」だ。ピック曲でも単にストロークするのではなく、ちょっとしたオブリやコード崩しを交えて伴奏を生き生きさせている。そんなスタイルにジョン・メイヤーの息吹を感じた。
現在3ヵ月連続配信リリース中の竹内だが、11月に配信予定の新曲をひと節披露する場面も。観客へのサービス精神を忘れない姿勢はステキなものだ。“まだまだアップデートして、みんなが驚くようなことをしていきたいと思うので、2023年もよろしくお願いします!”、そう語ると、ラストは「Love Your Love」。前半はマイクを通さず生声&生音でパフォーマンス。思いがストレートに伝わる素晴らしい演奏だった。
公演中、2023年2月に5枚目のEPをリリースすると発表した彼女。きっとこれからも、アコースティック・ギターのさらなる深淵を見せてくれることだろう。今後の活躍から目が離せない。
SET LIST
- ペチュニアの花
- ICE CREAM.
- No no no (It’s about you)
- Free! Free! Free!
- Rhythm Nation(Janet Jackson)
- 踊(Ado)
- YOU+ME=
- I My Me Myself
- いいよ。
- 泡沫SUMMER
- TOKYO NITE
- あいたいわ
- ALRIGHT
- RIDE ON WEEKEND
- 手のひら重ねれば
En1. made my day feat. Takuya Kuroda / Marcus D
En2. Love Your Love
GEARS
Martin OMJM
Martin 00-18
Martin 000C Nylon
PEDAL BOARD
ACCESSORIES
人物写真:浜野カズシ 文/機材写真:秋摩竜太郎(アコースティック・ギター・マガジン)