メロディック・マイナー『アコギで音楽理論講座』第18回 by ドクターキャピタル

ドクターキャピタルによる実演動画

まいど! ドクターキャピタルです。Ex-1の最初のコードAm6(maj7)を弾くだけで部屋の雰囲気が一気に変わりませんか? このようなコードは、よくミステリー映画やドラマの音楽に使われます。

Ex-1 神秘的なミステリー

Ex-1

Ex-1の3つのコードを続けて弾くとやはり独特な複雑さと神秘的な美しさの香りが広がりますね。これが“メロディック・マイナー”の表現効果です。音楽要素にはさまざまな表現効果を持った仕組みがありますが、その中にメロディック・マイナーのきれいで不思議なサウンドは本当にユニークで素敵です。クラシック音楽で何百年も前から多く使われてきて、ジャズでは特に重要な要素で、実はポップやロックの名曲でも親しみのあるサウンドです。

ご自身の好きな曲をうまく弾けるようになるために、作曲や即興で表現力をアップするために、全体的な音楽の知識と楽しみを上げるために、今回はメロディック・マイナーの勉強と練習をしましょう!

スケールですか? コードですか? モードですか? はい、その全部ですね。もともとクラシック音楽理論から“メロディック・マイナー・スケール”がありますが、スケールの単音で弾いても、スケールの音で構成されたm6(maj7)などのコードを弾いても、同じような独特なムードが作り上げられます。本コラムの第1回で“モード”という音楽用語の由来は“ムード”(mood=雰囲気)からきているという話をしましたが、メロディック・マイナー・サウンドはまさにスケールやコードから出るモード感の雰囲気です。

メジャーとマイナーをミックス?

メロディック・マイナーの独特な不思議さには、ふたつ理由があります。そのひとつは、メジャーの雰囲気とマイナーの雰囲気をミックスしていることです。Ex-2でメロディック・マイナーのコードCm6(maj7)の構成音を確かめたら……。

Ex-2 謎の構成音

Ex-2

あれ? メジャー・スケールにない、マイナー・スケール(Ex-3b)にある♭3(短3度)を使用しています。しかし、同時にマイナー・スケールにない、メジャー・スケールの6、7(長6度、長7度)を使用しています。つまりミックスです!

Ex-3aの五線譜をご覧のとおり、Cメジャー・スケールに7つの音、ドレミファソラシが含まれています。最初の音が“ルート(root=主音)”なので、“ド”の下に“R”と書いてあります。残りの音に番号を付けて、メジャー・スケールの構成音を“R 2 3 4 5 6 7”で表わしています。

Ex-3a Cメジャー・スケール

Ex-3a

Ex-3bのCマイナー・スケールは、五線譜や構成音の数字を見たらわかるとおり、♭(フラット)が3つ付きます(♭3、♭6、♭7)。ちなみに、“マイナー”というワードを使うスケールはわりと多くて、普通の“マイナー・スケール”としてEx-3bの構成音になることが伝わるはずですが、“ナチュラル・マイナー”もしくは“エオリアン”と言うとより確実に伝えることができます。

Ex-3b:C メロディック・マイナー・スケール

Ex-3b

タブ譜を参考にしながら、交互にEx-3aとEx-3bを弾いてみて、それぞれの雰囲気を感じ取って、表現効果の違いを確認してください。

以前に本コラムの第13回でハーモニック・マイナー・スケール(Ex-3c)を紹介しました。ハーモニック・マイナーは、マイナー・スケールと共通して♭3と♭6がありましたが、7度はメジャー・スケールと同じでした。このミックスで独特な表現効果を持ち、ハーモニック・マイナーには濃い味があることをいろいろと実感しましたね。さて、メロディック・マイナーはどうでしょう?

Ex-3c

続きはアコースティック・ギター・マガジンVol.105本誌にてご覧ください。

第18回の内容

アコースティック・ギター・マガジン 2025年9月号 Vol.105

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ドクターキャピタル

どくたーきゃぴたる アメリカ出身大阪在住ギタリスト、シンガーソングライター。音楽博士号を持ち、名門/南カリフォルニア大学の教壇に立つ現役のプロフェッサーで、ソロやユニットなどさまざまな音楽活動を継続。日本文化にも精通し、バリバリの関西弁を駆使した“Dr. Capital’s JPOP講座”で、YouTuberとしても存在感を高めている。

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