アコースティック・ギターのポテンシャルを最大限に引き出す
──そもそもブルーグラス・ギターにハマったきっかけはなんだったのですか?
クラレンス・ホワイトですね。バーズ時代のクラレンス・ホワイトは知っていたんですけど、なぜこの人が天才ギタリストと呼ばれているのか、最初はよくわからなかったんです。エレキ・ギターにしても、それほどすごいことをやっているようには聴こえなくて。
でも、そのあとにケンタッキー・カーネルズ(クラレンス・ホワイトが在籍していたブルーグラス・グループ)のライブ音源を聴いて、ものすごく衝撃を受けたんです。そこでフラットピッキングのギター・ソロを初めて聴いたんですけど、“アコースティック・ギターでこんなことができるのか!”とビックリして。
ただ、それまでアコースティック・ギターはずっと好きで聴いていて、ブルーグラスという音楽自体に出会ったきっかけはレッド・ツェッペリンなんです。
──そうなんですか。それはちょっと意外ですね。でも、アコースティック楽器もフィーチャーされていますものね。
マンドリンが使われている曲があって、そこからまずはバンジョーとかマンドリンに興味が行って。ブルーグラスのような音楽はテレビとかで聴いていて、そういう音色があることは知っていたんですけど、音楽の名前と存在がしっかりと一致したのはツェッペリンが初めてなんです。
その後、クラレンス・ホワイトに出会って、イーグルスみたいなロック・バンドの音楽にもバンジョーが入っているのに気づいたり、どんどんつながっていって。そうやって掘り進めていくうちに、シーンの規模としては小さいけれども、ブルーグラスはメジャーな音楽のルーツとして密接なつながりがあると気づかされたんです。それで、“これはブルーグラスをやっていて損はないな”と。
──なるほど。ブルーグラス・ギターを習得したことで、自身の演奏に恩恵は?
僕はかつて、Goosehouseっていうユニットを組んでいて、アコースティックでいろんな曲のカバーをYouTubeでずっとやってたんです。それで、J-POPの曲をギター1本で1曲持たせなきゃいけないってなった時に、ストロークひとつ取っても、ブルーグラスのニュアンスが入っているか入っていないかで全然違うんです。すごく音楽的になるんですよ。
ギターって闇雲にジャカジャカ鳴らすイメージが根強いじゃないですか。でも、ブルーグラスのギターって6本の弦それぞれの旨味を最大限に生かしながら弾くんです。その感覚があったおかげで、その後の自分のキャリアにつながったというか。だいぶ助けてもらいました。
音楽が本来持っていた原点。その極みのような音楽です
──読者にぜひ知ってほしい、ブルーグラスを習得するメリットとは?
まずは楽器をきちんと鳴らせるようになることですね。リズムはリズム、メロディはメロディ、歌は歌、コードはコードみたいな感じで、いろんな要素を切り離して認識しがちな人がけっこう多いんですよ。
でも、楽器をきちんと鳴らせるようになるだけで、それらが全部つながって、どんどん演奏全体が良くなっていく。楽器を良い音で鳴らせるようになるだけで、音楽の豊かさが根底から変わることを実感するはずです。アコースティック音楽をやる人であれば、ぜひそうした演奏の変化を体験してほしいですね。
──普段はどんな練習をしているんですか?
ブルーグラス・ギターはピックを持って弾くんですけど、大事な感覚はあくまで指なんです。親指と人差指の2フィンガーで弾く感覚が基本にあって、そこからオルタネイト・ピッキングの動きにつながっていくんです。なので、フレーズを親指でなるべく弾いてみたりすることはありますね。
──ブルーグラス・ギターというと、フラットピッキングのテクニックに注目しがちですが、指弾きの延長戦上にあるんですね。
そうなんです。ギターはピックで弾くものという先入観がありますけど、歴史的に見ても指で弾いていた時代のほうが長いわけですよね。ある意味、指弾きとピック弾きの間を取り持つようなところにブルーグラスはあるんです。そういう意味でも学ばない手はないなと思うんですよね。
それによく言うのは、コードがほぼ3つしかないし、みんなが思ってるよりも覚えるのは簡単だよって(笑)。でも、ブルーグラスは難しそうっていう人はけっこう多いんですよね。
──なかなかジョニーさんほど弾きこなせる人は少ないでしょうね。現在のブルーグラス・シーンはどのように感じていますか?
世界全体がAIとかデジタル技術に向かえば向かうほど、生の手触りとか、人間が音楽をやることの意味みたいなものが注目されてくるんじゃないかと思うんです。“生楽器を使って人間が声を重ねながらハーモニーを作る”という音楽の本来の原点に向かって、今、揺り戻しが起きているような気がしていますね。そういう意味でブルーグラスはその極みのような音楽です。基本的にPAで増幅したりせずに、それぞれの音を聴きながら楽器同士のバランスを詰めていくという。
言ってしまえば、音楽ってそれが当たり前だったはずなんですけど、今では何でもできるじゃないですか。リモートもできちゃうし、あとから切って貼ってとかいろいろ。みんなおもしろがってやってきましたけど、それが行き着くところまで行き着いた結果、これからは人力でやる温かみというか、自然な音楽の姿に戻っていくんじゃないかなと。
今、ビリー・ストリングスとかがアリーナ・クラスでコンサートをやっていますけど、これまでそんなブルーグラス・アーティストなんていなかったんです。ホントにおもしろいことになっていると思いますよ。生音で音楽をやる普遍的な価値がもっと見直されていくんじゃないかなと感じています。
──最後に、ジョニーさんにとってブルーグラス・ギターの魅力とは何ですか?
アコースティック・ギターのポテンシャルを最大限に引き出すノウハウが詰まっているところですね。ブルーグラスを学ぶことによって、それ以外の音楽を演奏する時にも必ず良い影響が出てくるだろうし、新しいインスピレーションも生まれてくると思うんです。
それとやはりアンプラグド・サウンドへのこだわりですね。アンプラグドであることによって制約も多いんですけど、その制約があるからこそ、逆に自由になれる。その奥深さ、底の知れないところに大きな魅力を感じています。









