自分の歌がちょっとした精神安定剤みたいになればいいなと思って
──どのように学んでいったんですか?
自分自身、ギターの音だけで感動した経験があるので、自分がソロ・ギターで発信することで“アコギを始めたい”と思ってくれる人が増えたらうれしいなという思いもありました。
自分の限界を超えようという思いがありました
──『TIDE LIVE -Acoustic 参-』は同名の配信ライブでの演奏をまとめた作品ですが、ライブ・シリーズ“TIDE LIVE”について教えてください。
“TIDE LIVE”は私が開催している弾き語りカバー・ライブ・シリーズのことで、これまでに配信ライブとフィジカル・ライブを合わせて4回開催しました。過去2回の配信ライブは1年で月が最もきれいとされる“中秋の名月”の日に行なったんです。
“TIDE”は“潮の満ち引き”という意味で、人は大潮になる満月や新月の日に精神面が不安定な状態になりやすいそうなんです。そんな誰かの不安な気持ちを自分の歌で癒したり、寄り添ってあげられるようなライブをしたいという思いで続けています。
自分自身も心が不安定になることがよくあるので、そういう時に助けてくれた曲、寄り添ってくれた曲をおもに選曲していて。名曲や尊敬するアーティストの楽曲をカバーするにあたり、自分なりに解釈をしつつ、そういう経験があるからこそ伝えられる何かがあるんじゃないかなと思って歌っています。
──どんなことを意識してアレンジしていきましたか?
アコギ1本で弾き語ることにおいて、自分の限界を超えようという思いがありました。「愛を伝えたいだとか/あいみょん」のアウトロや「からくりピエロ/40mP」のイントロのような特徴的なメロディは、これまでにソロ・ギターで培ってきた運指やピッキングを意識していますし、ボカロの曲は自然とノレるものが多いので、スラム奏法でリズム感をかなり強調しています。聴く人にすっと入っていくようなテイストを意識しました。
──「hazama/4na」、「絶え間なく藍色/獅子志司」などはかなりパーカッシブなアレンジですね。
「絶え間なく藍色」は、もともとバンド編成の曲で、ドラムのパーカッシブな部分がかなり伝わってきた印象だったんです。なので、パーカッシブかつ自然と首を振れるようなリズムを意識しました。
「hazama」に関しては、ストロークだけだと物足りなくてこの曲の良さをあまり活かせないと思ったのと、歌と重なり合うタイミングやキメなどは、スラム奏法のほうがよりキレがあって緩急をつけやすいと思いました。
──「からくりピエロ」や「絶え間なく藍色」のイントロなどで、ストロークしながらメロディ・ラインを弾く部分にソロ・ギターからの影響を感じました。こういったプレイのコツは?
一番大事にしているのは、ひとつひとつ丁寧に練習していくことですね。スラム奏法なら叩くだけのところから始めて、そこからコードを押さえてちょっと鳴らしてっていう感じでひとつずつ段階を踏んでいくんです。
ソロ・ギターならメロディだけ、コードだけで弾くところからレベルを上げていきつつ、それを全部重ねたあとで改めて客観的に聴いてみて“ここはもうちょっと詰められそうだ”と思ったり。そういう反復練習が一番大事だなと思っています。
唯一無二のものを今後さらに出していきたいです
──「誘導灯/梓川」と「空想少女/CIEL」にはバーチャル・ガールズ・グループのVALISからVITTEさんが参加していますが、どのようなことを考えてアレンジしていきましたか?
VITTEさんはダンスをされているのもあって、体を動かしてリズムを取る方なので、そのリズム感を自分が崩さないプレイにしたいということを最初から考えていました。そこからうまくすり合わせをして、最終的に出来上がった「空想少女」は、自画自賛なんですけど、本当に素晴らしいものになったなと思っています。
「誘導灯」は、サビのあたりでギターがメロディを弾く部分があるのですが、VITTEさんは歌を歌って、自分はギターで歌うみたいなイメージで、セッションとしての完成度を上げたいと思いながら演奏しました。
──「空想少女」は3連を含むリズムが続きますね。リズム表現に関してはどのようなことを意識しましたか?
メトロノームを使いながら、楽曲に一番合いそうなリズム・パターンを探していきました。その中から“これはサビで使えるな”とか、“キメには3連を入れたほうが良いな”みたいなことを考えました。
──リズム・パターンの引き出しはどのように増やしていますか?
いのけんさんのリズムの取り方がすごくて、左手も一緒に使いながらネックでも音を出すんですよ。それを観て、“このリズムを入れたいな”と思ったフレーズはかなり覚えています。
あとは好きな洋楽を聴いて、“こういう裏のリズムの取り方があるんだ”とか、“これをギターで弾いたらどうなるんだろう?”みたいな研究はしていますね。
──ちなみに、どんな洋楽を聴くんですか?
映画のサウンドトラックなどが多いですね。歌が入ってない曲だと、楽器だけでどれだけ印象づけられるかが大事なので、リズムやサウンドのこだわりがより感じられるんですよ。例えば、映画『ワイルド・スピード』シリーズ(2001年〜)のサントラは、多種多様なジャンルの音楽的要素が入っていて、1曲を聴くだけでいろんな文化を知れるんです。そういったところはかなり刺激を受けています。
──「愛を伝えたいだとか/あいみょん」や「青のすみか/キタニタツヤ」、「おかえり/Tani Yuuki」などのJ-POP曲とボーカロイド曲とで、アレンジの考え方が変わる部分がありますか?
J-POP曲は、自分の中でかなり引き算をしています。パーカッションはそこまで入れないほうが良いなとか、ストロークも複雑なものはあまり使いたくなくて。例えば「愛を伝えたいだとか/あいみょん」はブリッジ・ミュートを使ってすごくシンプルな構成にしています。
──今作は全体的にリバーブ感がありますが、ライブにおける音づくりでこだわることは?
ライブのタイトルが“TIDE LIVE”なので、波や水の揺らぎみたいなものを表現したいと思うと、やっぱりリバーブが一番効果的なんですよね。
あと、自分が使っているギター(Headway/HJ-523 WX/STD)は本当に出来がいいので、ここの周波数をカットしようみたいなことはあまりせず、そのままの音を生かしています。
── 2024年11月に開催された“TIDE LIVE -四-”はバンド編成での公演でしたが、今後の展開として考えていることはありますか?
まだ自分の中の話ではあるのですが、アコギ1本で表現することに関してはこれからもずっと突き詰めていきたいなと思っています。弾き語りをする多種多様な方々がいる中で、自分だけが持っている唯一無二のものを今後さらに出していきたいです。
そういった思いもある一方で、前回の“TIDE LIVE -四-”では、素晴らしいバック・バンドの皆さんと一緒に奏でた感動もありましたし、歌は歌で磨いていきながら、アンサンブルの中でギターを弾くというところでも自分の良さを引き出していきたいですね。
──最後に、詩道さんにとってアコースティック・ギターはどんな存在なのか、教えてください。
たぶん今後も一生付き合っていく、家族みたいな存在だなと思っています。
『TIDE LIVE -Acoustic -参-』詩道

2025年5月26日デジタルリリース
- 愛を伝えたいだとか/あいみょん
- からくりピエロ/40mP
- HAZAMA/4na
- 透明な街/higma
- unravel/TK from 凛として時雨
- 絶え間なく藍色/獅子志司
- 誘導灯 feat.VITTE(From VALIS)/梓川
- 空想少女 feat.VITTE(From VALIS)/CIEL
- 青のすみか/キタニタツヤ
- おかえり/Tani Yuuki
公演情報
“跳亜+詩道 Acoustic 2man LIVE「RISE LIVE」”〈Special Guest〉水野あつ
◎スケジュール
- 2025年9月12日(金)/東京・渋谷近未来会館
18:15開場/19:00開演
◎チケット
- 一般チケット(先着):
販売開始:2025年7月4日(金)18:00〜
※オール・スタンディング
※未就学児童入場不可(小学生以上チケット必要)
◎関連リンク
https://tiget.net/events/409971