吉澤嘉代子が語る、1927年製ギブソンL-1に惹かれた理由|AGM GUITAR GRAPH -Volume 98-

シンガー・ソングライターの吉澤嘉代子が2019年に手に入れた1927年製のギブソンL-1。本器と出会った時の思い出やサウンドの印象などを語ってもらった。


取材・文:鈴木伸明 撮影:小原 啓樹
※本記事は、アコースティック・ギター・マガジンVol.104の「AGM GUITAR GRAPH -Volume 98-」を抜粋・再編集したものです。

倍音がよく出ていて太い。小柄なのに深く響く

——L-1を手に入れた経緯を聞かせてもらえますか。

 デビュー5周年の記念に、ずっと大切にできるギターが1本欲しいと思ったんです。ライブでも使いたいという気持ちもあったけど、一番は“楽曲を作る時に自分をときめかせてくれるギターが欲しいな”って。

 いろいろなお店を回って、たまたま御茶ノ水のウッドマンでこのギターに出会いました。見た目からして小柄でかわいくて、ひと目惚れという感じでしたね。ある日、試奏させてもらったら、持った瞬間にトキメキが走ったんです。“このギターはほかとは違う!”と思って、それから何度もお店に通って、何回弾いてもトキメキが走る感覚があったので、“やっぱりこのギターに恋しているな”と確信したんです。

——L-1に恋してしまったわけですね。

 ただ、このギターを満足に弾ける自信はなくて。たぶん、これまでたくさんの方に弾かれてきて、ギターが上手な人に大事にされてきたんだろうな、と。私が弾きこなせるか不安はありましたけど、このギターにとって一番いい景色をこれから見せてあげたい。それならできるかもしれない。そう思って購入を決めました。

——それまで弾いてきたギターとは、何が大きく違いましたか?

 感覚的な話になるんですけど、ギターを弾く時には2種類の感じ方があって、“枠がある”のと“枠がない”のがあるんです。新しいギターには枠を感じることがあって、枠のないギターは自分にとって弾いていてストレスがない。L-1は何もストレスを感じなかったです。ほかのビンテージ・ギターを弾いて、近い感覚になったことはあったんですけど、やっぱりL-1が一番だったかな。

──ボディ材はトップがスプルース、サイドとバックがマホガニーですね。

 もともと、サイド&バックがマホガニーのギターを探していたんです。というのも、自分の声と合うのは、マホガニーのやわらかい音かなと思っていたから。マホガニーのせいなのか、L-1の音は落ち着いていて好みですね。

──ボディのシェイプも独特ですけど、最初からしっくり来ましたか?

 かわいいと思いました。ほかのギターと違うっていうのが大きくて、むしろ最初はこの見た目に惹かれたんです。

──購入後に改造した点はありますか?

 ピックアップを付けるためにエンドピン・ジャック用の穴を空けてしまいました。もともとエンドピンは付いていなかったんです。100年近く加工していないギターに手を入れるのはすごく悩みましたけど、ライブが控えていたので、ピックアップを入れて、ネック・ヒールにもストラップ・ピンを付けました。申し訳ない気持ちはあったんですけど、その分、いろいろなところに連れてゆくぞって思って。

エンドピン
入手後に装着したエンドピン・ジャック。もともとエンドピンも付いてなかったため、穴を空けることはかなりためらったそう
サウンドホール/ピックアップ
サウンドホールには、フィッシュマンのレア・アース・ピックアップを取り付けてある
吉澤嘉代子

本器を使ったレコーディングのエピソードなども含むインタビューの全編はアコースティック・ギター・マガジン2025年6月号 Vol.104に掲載中!

アコースティック・ギター・マガジン2025年6月号 Vol.104

SNSでシェアする

アコースティック・ギター・マガジン

バックナンバー一覧へ