miwaが語る、15年の成長を詰め込んだベスト盤と、キャリアを支えたアコギという存在

miwaがデビュー15周年を迎え、ベスト盤『miwa』をリリース。キャリアを通じてギターを抱えながら歌う姿は多くの後進に影響を与え、アニバーサリー企画として2025年3月8日に開催した“路上ライブ祭り”には、彼女の楽曲をカバーする次世代アーティストたちが集結した。今回は15周年企画やベスト・アルバムの話を軸に、改めてmiwaとアコースティック・ギターの関係性について聞いていこう。

取材=アコースティック・ギター・マガジンWEB 撮影=佐藤薫

miwaを聴いて育ってくれた子が音楽を志してくれた

──15周年を迎え、さまざまなトピックがありますが、路上ライブは記憶に新しいです。2024年末からゲリラ的に路上ライブを行なっていましたが、久しぶりのストリートはどうでしたか?

 デビュー前はライブのチケットを買ってくれるお客さんがいない状態だったので、道行く人に聴いてもらいたいっていう思いから始めたことだったんです。でもデビューから15年が経って、改めて路上に立ってみると、たくさんのファンの方たちが待ってくれていてすごくうれしかった。でもそれだけじゃなくて、たまたまその日に曲を知っている人が通りかかって足を止めてくれたり。やっぱり路上ライブは出会いをくれる場所だなっていうことも感じましたね。

──デビュー前の路上ライブの思い出も聞かせてください。

 私が路上ライブをやっていた沖縄の北谷(ちゃたん)にある広場は、繁華街ではあるので人通りはあるんですけど、それぞれが自分の目的に向かっていく通り道なので、1曲でも足を止めて聴いてもらうのがすごく大変で。

 少しでも足を止めてくれる人がいると、音楽を目指す勇気にもつながっていましたし、逆に足を止めてくれる人がいなかったら、“自分の実力がまだまだだな”って思って、“もっともっと頑張ろう”っていうモチベーションにつなげていましたね。

──当時は、どんなセッティングでやってましたか?

 たしかレンタルの機材があって、マイクとアコースティック・ギターをスピーカーにつないでやっていたと思います。

──歌舞伎町の路上ライブでは、“miwaの日”のイベント(※1)の出演者と共演もしましたが、次世代のアーティストたちと触れ合ってみてどうでしたか?

※1:2025年3月8日に新宿歌舞伎町でmiwaの楽曲をカバーするストリート・ライブ・イベント(『Kabukicho Street Live』presents 3/8 “miwaの日”公認路上ライブ祭り)を開催し、19名のシンガーソングライターがパフォーマンスを披露した。

 “miwaの日”には私も実際に歌舞伎町に行って、ステージを少し観させていただいたんですが、まず、私の曲をカバーしてくれていることが、どこか信じられないような、うれしい気持ちでしたね。

 で、その子たちと少し話すことができたんですけど、小さい頃に私のライブに来てくれていた子もいたんです。11年前のライブで『ドラえもん(映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記)』の主題歌の「360°」の時に、“小学生は舞台で一緒に踊っていいよ!”っていうことをやったんですが、その時にステージに上がってきてくれた子が、そこから音楽を志して歌舞伎町のステージに立ってくれたそうで。

 あとは、まだ私も大学生だった13年前に、『オールナイトニッポン』のリスナーの中から前髪がぱっつんの女の子を集めて、“前髪パッツンズ”っていう一夜限りのバンドを結成したんですよ。そこでキーボードを弾いていた子が、その日をきっかけにギターを始めたらしくて。その子も出てくれて“ギターの弾き語りアーティストとして、13年ぶりに同じステージで歌えてすごく感動しました”って言ってくれたり。

──すごくドラマチックですね!

 miwaを聴いて育ってくれた子が、本当に音楽を志してくれたっていうことがうれしかったですし、光栄でしたね。私もアヴリル・ラヴィーンやシェリル・クロウへの憧れから始まったので、その子たちにとってはそれが自分なんだって思うと、信じられないような気持ちですし、15年やってきたことの意味をより深く感じることができました。

miwa

私も最初から今のmiwaだったわけじゃないんですよね

──ベスト・アルバム『miwa』はテーマを分けた『mi』と『wa』の2枚で構成されています。収録曲の決定に際してはファン公募もありましたが、どのような作品になったと感じていますか?

 今まで出したシングル・コレクション(『miwa THE BEST』/2018年)やバラード・コレクション(『miwa ballad collection ~graduation~』/2016年)とも被らない、まだ聴いてもらいたいと思っている曲も収録できました。

 あとは高校生の時に作った音源をそのまま収録しているので、15年間の成長を感じてもらえる内容になっていると思います。現在のライブ版のアレンジで新たにレコーディングした曲(“Classic StudioLive ver.”)も入っているので、アコギに関しても高校生の時のプレイと今のスタイルの両方が聴いてもらえる。誰しもに始まりがあって、私も最初から今のmiwaだったわけじゃないんですよね。これから音楽を目指す人たちにも、そういう成長を感じてもらえたら、少しは勇気になるかなって思っています。

──そのインディーズ時代の楽曲だと「TODAY」がアコギの弾き語りで、4フレットにカポをつけたプレイですね。作った当時のことを教えてください。

 当時はギターを始めて間もないので、弾けるコードも少ないからカポを多用していた、っていうのはありますね。あとは、弾けるコードの中でどう曲を作るかという点で、転調をどうするかとか、1曲に仕上げる工夫をいろいろと考えていました。

──セルフ・レコーディングということですが、どのように録音したんですか?

 宅録で、Logicを使って歌とアコギを録っていましたね。ギターとボーカルでそれぞれマイクを立てて、自分でミックスしていたと思います。今もProToolsがありますけど、デモはスマホで録っちゃうんですよ。あの頃はちゃんと自分でミックスをして、エフェクトも自分で“エコーはこのくらい〜”とか考えながらやっていたと思うと、高校生の自分のほうがえらいなって(笑)。

──(笑)。逆に“Classic StudioLive ver.”は最新のライブ・アレンジですが、ギターのアレンジやレコーディングはどのように進めていきましたか? まず「ヒカリヘ -Classic StudioLive ver.-」のイントロは、弾き語りのバージョンが元になっていますよね。

 もう長年「ヒカリヘ」はあの弾き方で弾き語りをしていて、そこにみんなが乗っかってくれているという印象です。原曲とは違うんですけど、私の中では弾き語りでやるならこうかなっていうアコギのアレンジなんですよ。

 以前ラジオのゲストで押尾コータローさんに来ていただいた時に、いろいろなアレンジのバリエーションを教えていただいたんですけど、ライブでやるには勇気が必要なフレージングで。なかなかチャレンジできないまま、今も変わらず……それくらいずっと変えてないイントロとアレンジです。

──「don’t cry anymore」だと各弦が順に鳴るような大きなストロークから始まるのが印象的です。

 レコーディングではアコギと歌は別々で録っているんですけど、今回はいつものレコーディングみたいに丁寧に弾いたものじゃなく、ライブで歌っているものをたまたま場所をスタジオに変えて録ったというものにしたかったんです。なので多少荒くてもいいから、ライブのステージに立っているような勢いや緊張感、高揚感を入れたいなと思いながら録りましたね。

──最新シングルの「リアル」も収録されています。優しいアルペジオが印象的な楽曲ですが、どのように作っていきましたか?

 作曲の時にあのアルペジオがあって、松浦(晃久:プロデューサー/アレンジャー)さんがそこにピアノを重ねてくれました。デモの段階で、自分の中で決定と思っているわけじゃないけど、極力自分の中にあるイメージを入れておくようにはしていて、それが生きている感じですね。

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自分が好きなものを生み出すことに意味を持たせることが大事

──現在ギターで作曲する時は、どういう流れで作るのでしょうか?

 う〜ん……コードをだいたい決めてから、メロディを入れていくっていう感じですかね。あとは、アルペジオのフレーズなどはほぼ手グセみたいな感じで、イントロだけちょっと形を整えたりはします。

──その時に持つことが多いギターは?

 本当になんでもよくて、手もとにあるギターを使っている感じですね。今カナダにはテイラー(GS Mini-e Koa Plus)を持っていっているので、それを手にすることが多いです。それは軽いから持っていったんですが、本当は自分のテンションが上がるギブソンを1本近くに置いておきたいので、東京では(メインの)オリアンティのギター(Orianthi SJ-200)とも近いハミングバードを置いていますね。

──そういえば2024年にアヴリルの故郷でもあるカナダに移住されたんですよね。

 あ〜、“アヴリルの故郷だから移住先に選びました”って言えばよかった(笑)!

──(笑)。まだ1年も経っていないとは思いますが、カナダへの移住で自身の音楽への影響などはありますか?

 そうですね。例えばLAはすごく好きで行くことはあるんですけど、世界のトレンドというか、音楽市場でも一番大きなマーケットがあるので、ビジネス的な観点で感じるものが大きいんですよね。そこで活動しているライターの子たちもトップを目指していて、ヒット曲を生み出そうとしている感じがする。で、それはそれですごくいい刺激になるんです。

 だけどカナダに行くと、音楽マーケットがLAほど大きくないというのもあるんでしょうけど、トレンドを意識して曲を聴いているような空気を感じないんですよ。それぞれが好きなものを聴いていて、逆に“何が流行っているんだろう?”ってことが読めない国というか。初めて海外に住んでみて、それがけっこう衝撃で。

 “みんなK-POPを聴いているから”の“みんな”がいないから、縛られなくていいっていう自由さが気楽なんです。みんなが観ているものっていったら、アイスホッケーくらい(笑)。その自由さとお互いの文化を尊重する感じから、“音楽も自分の好きなものをやればいいんだな”ってマインドに変わって。

 もちろん仕事としてトレンドを意識することも大事なんですけど、それを追いかけることに今後どのくらいの意味があるかって考えるんですよね。そこで、これから先のキャリアは自分が好きなものを生み出すことに意味を持たせることが大事だなって気づかされたんです。それは日本にいたら、トレンドの中にいたら気づけないことだったなって思いました。

──さて、デビューから15年経って、改めて思うアコースティック・ギターの魅力を聞かせてください。

 アコギは自分のパートナーになってくれる。47都道府県を弾き語りで回った時も、アコギだからこそ一緒に回れたところが大きいんです。アコギを1本背負っていけば、どこでも自分のライブができる。カナダに行く時も、本当にギター1本を持って移り住んだので、それさえあれば自分の音楽がどこでもできるっていう安心感がありますね。

──最後にアコギ・プレイヤーや弾き語りアーティストたちにメッセージをお願いします。

 私はギターを買う時には一生使うと思って買っているんです。そういう一生モノって、私にとってはアコギくらい。どんなに高いギターでも、“別に一生使うなら、年で割ったら大した額じゃないさ”って言い聞かせて買うんですよ(笑)。でも、そんなものって人生でなかなか手に入れられないじゃないですか。

 だから私もそのギターをすごく大事にしているし、次世代の子たちにも気に入った1本を一生モノとして手に入れてほしい。私もこれからの15年をギターとともに歩みたいと思っています。

miwa

miwamiwa

SRCL-13244/2025年3月26日リリース

Track List

<Disc1>

  1. Wake Up, Break Out!
  2. again×again
  3. Storyteller
  4. ATTENTION
  5. Aye
  6. LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~
  7. ヒカリヘ
  8. リブート
  9. 醒めない夢
  10. いくつになっても
  11. ありえない!!
  12. DAITAN!
  13. Jexxxa
  14. hys-
  15. あなたがいないと世界はこんなにつまらない
  16. Sparrow
  17. アイヲトウ
  18. 321
  19. Our Time -miwa ver.-

<Disc2>

  1. リアル
  2. Napa
  3. 泣恋
  4. Who I Am -Classic StudioLive ver.-
  5. そばにいたいから
  6. それでもただ
  7. Love me
  8. ヒカリヘ-Classic StudioLive ver.-
  9. ぬくもり
  10. すべて捨てても
  11. 空っぽ-Classic StudioLive ver.-
  12. 君が好きです
  13. 僕らの未来
  14. Dear days
  15. don’t cry anymore -Classic StudioLive ver.-
  16. あまやどり
  17. TODAY -Self Recording-
  18. Song for you -Self Recording-

https://www.miwa-web.com/15th/best

miwa 15th SPECIAL ARTIST BOOK

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