関取花にはじめましてのアコギ選びのコツを聞いてみました。


はじめてのアコギを選ぶ時の注意点

もともとギターを始めたきっかけは何でした?

高校生の時に軽音楽部に入って、アコギを弾き始めました。物理とかがとにかく苦手で(笑)。電気を通さずに、弾けば音が鳴る楽器を選ばないと練習する前に挫折してしまうと思って。それで迷わずアコギでした。

最初に買ったのはどんなアコギだったんですか?

店員さんが薦めてくれたスタッフォードです。当時はギターに対する知識もなく、今ほど使う用途もハッキリとしていなかったので、予算を伝えて、私は体や手が小さいので弾きやすいギターが欲しいとリクエストして選んでもらいました。アンプでも鳴らせるエレアコでしたが、生音も感動しましたし、部活の時にアンプに繋いで音を鳴らしたら、“まるでコンサートで聴く音だ〜!”って、すごく愛着が湧いたことを覚えています。ただそれと同時に、早くも自分の好みがわかるというか、もう少しナチュラルな音が出るギターが欲しかったって(笑)。たしか樹脂製のボディだったので。

アコギ選びのコツをアドバイスするとしたら?

まずは楽器店に行き、気に入ったギターを触らせてもらい、体にフィットするモデルを選ぶことかな。人によって体型が違うので、ボディの大きさやシェイプ、ネックに関しても、合う合わないがあります。自分に合ったギターを選ばないと、ギター本来の鳴りを生かせないですし、弾き続けることもツラくなると思います。

あと、自分のお金でギターを買うことをオススメしたいです。もちろんもらったギターもいいですが、自分のお金で買うと頑張って練習しようというモチベーションに繋がります。それからよくミュージシャンの友人と話すことは、値段ではなく、ルックスがカワイイとかカッコいいと思えることも大切です。それとアコギと一緒に、カポタストを買うこともオススメしたいですね。少ないコードでもいろんな曲が弾けるようになるので。

細かな仕様がわからなくても、直感が大事なんですかね。

そう思います。私がメインで使っているテイラーを買う時も、ずっと長く仕事でも使うギターだから予算もそこまで決めず、良いものに出会えたら頑張って買おうと思っていたんです。それでお店に行っていろいろと弾いた結果、直感でビビッときたのが、テイラーの中ではエントリー・モデルの“アカデミー・シリーズ(Academy12e)”だったんです。

購入方法としてオススメは?

できれば楽器店で、生の音を聴いて選んでほしいですね。今はネット通販ですぐに買えますが、初心者ほど生の楽器に触れる楽しみや音色を知ることは大切だと思いますよ。

エレアコはどんな人に必要でしょうか?

私みたいに電気が苦手とか、小物の管理が苦手な方で、将来ライブをしたい方はエレアコがオススメです。あと私が頑張って買った70年代のマーティンD-18にピックアップをあと付けしたことで、音が変わって後悔したことがあって。ピックアップをあと付けすると、生音が変わってしまうこともあるんです。

最後に、アコギの楽しさってどこにありますか?

私は、アコギを持って人前で歌うことが単純に楽しいですし、ライブの時にはなりたい自分になれる感覚があって。それに自分のことを素直に好きになることができるんです。それが気持ち良くて、ずっとアコギを弾きながら音楽を続けています。あと、私の曲は初心者の方でもコピーしやすいと思うので、オススメですよ(笑)。

はじめましてのアコギ・セレクションx5

初めてのアコギにぴったりの5本をセレクトした。
見た目や関取花のコメントなど、直感で気になるものがあればぜひチェックを!

BARTON ROUGE : AR11C/ACE

求めやすくクオリティの高いモデルをラインナップするドイツ発のブランド、バトンルージュ。ヨーロピアンなデザインで、上品なルックスも魅力。トップにはカナディアン・シダーが使われ、サイド&バックはマホガニーで温もりを感じる音色が特徴だ。スケールはクラシック・ギターに多い650mm。ピエゾとマグネティックが内蔵されたふたつのピックアップを備え、ソロ・ギターからバンドまで幅広いプレイ・スタイルに対応できる。

トップ:カナディアン・シダー単板
サイド&バック:マホガニー
ネック:マホガニー
スケール:650mm
指板幅:43mm
指板&ブリッジ:オバンコール
ピックアップ:BR2.1P
価格:66,000円(税抜価格:60,000円)
問:ロッコーマン

☎03-3980-1001

デジマートで探す

すごく音量があって、音に迫力もありストロークが気持ちいいですね。温かくて優しい音色です。女性が好むサウンドだと思います。それに私みたいな小柄な方でも、ボディのくびれが大きくフィットするシェイプですね。デザインもシックで高級感があります。それからピックアップを通しても、EQをフラットにすれば生音に近い感じが得られて好きな音色です。ただEQの効きが良くて、音の調整もできるので、バンドでも使いやすいと思いますよ。

GUILD: M-240E

ロック・ギタリストにも愛用者が多い老舗ブランド、ギルド。アーチ・バックと呼ばれる構造が特徴のひとつで、骨太で迫力のある音色が魅力と言える。このモデルは、ニック・ドレイクの使用でも有名なM型の抱えやすいシェイプが使われ、スケールも約629mmと短く、小柄な方でも弾きやすい。トップはシトカ・スプルースの単板で、サイド&バックはマホガニー。シンプルで使いやすいフィッシュマン製のピックアップも内蔵している。

トップ:シトカ・スプルース単板
サイド&バック:マホガニー
ネック:マホガニー
スケール:629mm
指板幅:43mm
指板&ブリッジ:ローズウッド
ピックアップ:ギルド/
フィッシュマン・ソニトーンGT-1
価格:88,000円(税抜価格:80,000円)
問:キクタニミュージック
☎0561-53-3007

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弾いた時にガラッと鳴る感じがあって、とても力強い音だと思います。ジャカジャカかき鳴らすと気持ちがいいですね。ボディ全体がしっかり鳴ってくれる印象があります。フォーク・ソングとか古いアメリカの音楽とかには、特に似合いそうなサウンドです。スケールが短く、ボディも小さいので女性にも弾きやすいと思いますよ。ピックアップを通すと、温かな音でロー感もあります。オリジナルのケースも、軽くてカワイイですね。

JOURNEY INSTRUMENTS : OF410N

ネックをはずし、折りたたむことでコンパクトに持ち運べるジャーニー・インストゥルメンツのギター。手の小さい人にも嬉しい指板幅42.7mmのナロー・ネックと、人間工学に基づいたThe Wedgeデザインのボディが相まって快適な弾き心地となる。またトップにはシトカ・スプルースの単板が使われ、その鳴りも本格的。電車の網棚に乗せることもできる専用の付属バックパックも優秀で、ノートPC収納部も備えている。

トップ:シトカ・スプルース単板
サイド&バック:アフリカン・
マホガニー積層板
ネック:アフリカン・マホガニー
スケール:622.3mm
指板幅:42.7mm
指板&ブリッジ:オバンコール
価格:82,500円(税抜価格:75,000円)
問:Journey Guitars Japan
☎️0422-66-2745

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すごく音量があって、音に迫力もありストロークが気持ちいいですね。温かくて優しい音色です。女性が好むサウンドだと思います。それに私みたいな小柄な方でも、ボディのくびれが大きくフィットするシェイプですね。デザインもシックで高級感があります。それからピックアップを通しても、EQをフラットにすれば生音に近い感じが得られて好きな音色です。ただEQの効きが良くて、音の調整もできるので、バンドでも使いやすいと思いますよ。

TAYLOR GUITARS: GS Mini-e Rosewood

幅広いラインナップで、常に満足度の高いモデルを作り続けるテイラー。独自のピックアップ・システムは、大きなステージでライブをするプロの現場でも評価が高く、これを求めてテイラーを選ぶユーザーも多い。GS miniは、かなり小ぶりなモデルだが、本格的なフル・サイズのギターのような演奏性とサウンドを誇る。スケールも約597mmと、子どもでも演奏しやすい。チューナー内蔵のプリアンプも、初心者には嬉しい仕様だ。

トップ:シトカ・スプルース単板
サイド&バック:レイヤード・ローズウッド
ネック:トロピカル・マホガニー
スケール:597mm
指板幅:42.8mm
指板&ブリッジ:エボニー
ピックアップ:ES B
価格:126,500円(税抜価格:115,000円)
問:山野楽器 商事部 海外営業部
☎️03-3862-8151

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いつもテイラーを使っているので、音に安心感があります。小型ボディですが、よく鳴ってくれます。音はふくよかで、低域もしっかり出ています。小さくても、フルサイズのアコギを弾いている感覚がありますよ。ほかのテイラーもそうですが、ピックアップの音は生音に近いのですが、すごく完成されたイメージで、マイクを通して歌う時の声との相性も素晴らしい。ケースも使いやすく、ポケットが大きい点もポイントが高いですね。

Yamaha : FS820

日本のトップ・ブランドとも言えるヤマハのアコースティック・ギター。やはり日本人に合わせた弾きやすいギターが多く、そのサウンドも馴染みやすい。初めて購入するギターとして安心してオススメできる。このモデルは、紹介するターコイズ以外にもさまざまなカラー・バリエーションがあり、好みの色を選べる。トップはスプルースの単板で、パワフルな生音も魅力十分だ。くびれが大きくやや薄いボディは、抱えやすく演奏性も高い。

トップ:スプルース単板
サイド&バック:マホガニー
ネック:ナトー
スケール:634mm
指板幅:43mm
指板&ブリッジ:ウォルナット
価格:40,700円(税抜価格:37,000円)
問:ヤマハミュージックジャパン
お客さまコミュニケーションセンター
ギター・ドラムご相談窓口
☎️ 0570-056-808

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木目が透けて見えるシースルーの水色で、とてもカワイイです。音がすごくフォーキーで、どこか懐かしい印象ですね。ついマイナー・コードを弾きたくなります(笑)。日本語の歌が似合いそうで、特にフォーク・ソングの強い歌詞はすごくハマりそうな音色。これは欲しいですね。レコーディングで、こういう音が必要な時があるんです。カラー・バリエーションも豊富で選べますし、とても弾きやすいので女性にもオススメしたいですね。

トータルインプレッション

エントリー・クラスのモデルでしたが、すべてのギターに個性があってビックリしました。生音で一番驚いたのは、バトンルージュですね。ボディが大きいということもあると思いますが、キレイな響きが印象的でした。家のインテリアがナチュラルなテイストの女性とかも、きっと好きだろうなと思うデザインもいいですね。それからテイラーとギルドは小型のモデルで似ていましたが、テイラーのほうがキラッとした印象で、ギルドはガラガラと力強く鳴ってくれて面白かったです。メーカーによって個性が分かれますね。あとヤマハは、欲しい音です(笑)。ヤマハのギターは、これまであまり触ってこなかったのですが、今回改めてその魅力に気づきました。あれだけマイナー・コードを弾きたくなるギターは、ほかにはないかな。ジャーニー・インストゥルメンツの折りたためるギターは異色でしたが、とても遊べる範囲が広いモデルだなって感じました。

これだけ各モデルで印象が違うと、やっぱり実際に弾き比べて買ってほしいと思いました。あと、それぞれのモデルにさまざまな工夫が凝らしてあることも知れて、そういうことがわかれば、よりギターに愛着が湧きますよね。私もテイラーのスタッフの方々とお話をすると、なるほどと思うことがたくさんあって、共感できるとギターがすごく好きになります。それからエレアコも多かったですが、ぜひアンプで鳴らす音も楽器店で試してほしいですね。専門店は独特の雰囲気があって初心者だと少し勇気が必要ですが、店員さんも優しいので頑張ってみてください。最初の1本にどんなギターを選ぶかで、その後の音楽性にも影響があると思うので、妥協せずに選んでほしいです。例えばコードをひとつだけ覚えて、それだけで試奏してみても、自分との相性もきっとわかるはずですよ。

Hana's Equipments

愛器はテイラー・アカデミー12e。手頃な価格帯で、ストレスなく弾けるフルサイズのギターとして開発されたアカデミー・シリーズのグランド・コンサート・ボディ。エントリー・モデルだが、自身の声と相性が良く、またコンター加工(左写真参照)されているため、とても弾きやすいという。

はじめましてのアコギ弾き語りブック

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撮影:岩佐篤樹

関取花

せきとりはな● 1990年、神奈川県横浜市出身。2009年の“ 閃光ライオット”で審査員特別賞を受賞し、2018 年にはアラバキ、フジ、ライジング・サンと主要なフェスに出演。2021 年に、ユニバーサル・シグマよりメジャー1stフル・アルバム『新しい花』をリリースした。
https://www.sekitorihana.com

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