バンドマンの街・高円寺の隣で、秋にはジャズ・フェスで賑わう東京・阿佐ヶ谷に店舗を構えて10年。今年の3月には国内外の人気製作家やメーカーが特別モデルを30本以上出展した10周年イベントも成功させたLAST GUITARは、独自の哲学とロマン、ギター愛を柱とするギター・ショップだ。創業当初から常にマンドリンも店頭に置き、現在はレッスンも行なっているという。早速店長の那須さんに話を聞いた。
インタビュー 那須晃一郎(LAST GUITAR店長)
ウクレレみたいな感じで、なるべく手に取りやすいものにしたかったんです。
●LAST GUITARには常時何本ぐらいのマンドリンを?
○今は大体10〜15本ぐらいあります。創業して10年になりますが、マンドリンは立ち上げ当初から扱っていて、アーティストさんとの繋がりもあってイベントもやっていたので、大々的ではないですけど、ずっと継続して置いている感じですね。
●どのようなブランドが中心に?
○お買い求めやすいラスティングやイーストマンが中心です。ラスティングはお店のオリジナル・ブランドで、アコースティックワールドを主宰する岩本健さんというマンドリンの製作家とコラボした入門マンドリン的なモデルです。ヒット商品で、これまでかなりの本数を作っています。アーミーネイビースタイルという、もともとは戦時中に兵士が戦場へ持って行けるように作られた簡素なスタイルのマンドリンで、コストを抑えています。LAST GUITARはアコースティック・ギターを弾く方が多いので、弾き語りする時に使いやすかったり、いろんなシーンに入りやすいモデルがいいなと。温かい音がするので、いわゆるトラディショナルなブルーグラス・マンドリンとはまた違っていて、鳴らしやすいと思います。弾きやすさを重視して作ってもらっていて、テンションも、マンドリンはちょっときついというイメージがあるので、 なるべくハードルを下げる設計をしてもらいました。あとマンドリン・プレイヤーの竹内信次さんにレッスンをやってもらっているので、そういったプロの意見も聞いて、なるべく弾きやすいマンドリンを目指しました。ウクレレみたいな感じで、なるべく手に取りやすいものにしたかったんです。
●実際にマンドリンを始めたい、レッスンを受けたいという方はどういった層が多いのですか?
○わりと女性が多くて。生徒さんも、女性のほうが多いですかね。 もちろん年配の男性もいますし、ギターを弾いてらっしゃる方で、マンドリンのサウンドを取り入れたいという方も多いですね。ちょっとマンドリンをうしろに入れてほしいということになって、ギタリストの方が、初心者向けから中級モデルぐらいのを買われていくことがあります。
●皆さん、どのようにして習得していっているんですか?
○ギターとはチューニングが違いますけど、バイオリンと同じ音の並びになっていて、ちょうどギターと真逆な感じになるんですよね。そこをうまく変換できれば、そんなにハードルは高くないと思います。ギターのネックを握った感じと、マンドリのネックを握った感じは、サイズ感が違うので頭の中が切り替えられるみたいで、両方やっている方は、ネックを握った感じで切り替えできると仰っていました。
●中級者やトラデショナルなものを求めている人には、どんなものを?
○定番だとイーストマンのF5タイプはお勧めできますね。イーストマンは楽器が現代的なスタイルになっていて扱いやすいんです。フレットがちょっと太いとか、弦が張り替えやすいテイルピースになっていたり、実践的な要素が盛り込まれていて。価格も抑えられていますしね。あとジャパンビンテージも、けっこう人気があります。カスガやブルーベルとか、70〜80年代のブルーグラス・カルチャーの中心にあったようなマンドリンですね。当時の頑張って作っている感じが伝わってきますよね。特にジャンボ。田原楽器には、マーティンにものすごく詳しい方がいらっしゃって、マンドリン製作は鷲見英一(SUMI GUITAR)さんが行なっていたり、実際にジョン・モントリオーネが技術指導して、のちにケンタッキーになっていくっていう流れがあるので、当時のケンタッキー “DAWGモデル”などの古いモデルは素晴らしくて海外でも評価されていますよね。
●今は店頭にランディ・ウッドもありますね。
○こういうハイエンドなモデルもたまに入ってきます。マンドリン製作家として有名な御三家のモントリオーネとギルクリストとランディ・ウッドのマンドリンは、 一時代を席巻しただけの高級感と存在感がありますよね。こういったハイエンドなマンドリンも楽器としての魅力です。
ご自身の音楽ライフにマンドリンを取り入れてもらえたら嬉しいですね。
●修理や調整はどのように?
○すぐ近くに岩本さんがいるので、提携して調整してもらっています。これまで本数もかなりこなしていますし、この手の楽器の構造を熟知しているので、早いし、的確ですね。この辺も安心して相談していただけると思います。
●岩本さんはプレイヤーでもありますしね。
○そうですね、土地柄的にもブルーグラス・コミュニティみたいなものがあります。竹内さんもアコースティックワールドのマンドリンを使ってらっしゃいますし。
●マンドリンのレッスンがあるのは心強いですね。
○マンドリンだと、どうしてもブルーグラスに特化した感じの先生が多くなってしまうんですよね。岩本さんを通じて竹内さんとお話させてもらって、レッスンをやってほしいというお願いをしました。竹内さんはNHKの「ニャッキ!」とか子供番組でマンドリンを弾いていたり、馴染みやすい音楽をやっていて、いろんなジャンルに対応していただけるということで。
●実際、レッスンはどのようなことを?
○生徒さんそれぞれで全然違います。ポップスとか、弾き語りとか、やりたいことに合わせてマンツーマンでやっています。竹内さんご本人もロックっぽいことも弾くし、もちろんブルーグラスも弾かれますし。そういう意味では、いろんな方が入りやすいと思うんです。マンドリンって意外といろんな楽曲には入っているんですよね。ギター・ボーカルの人はけっこう普通に使っていて、BUMP OF CHICKENの藤原基央さんとか、奥田民生さんとかポール・マッカートニーもそうだし、敷居の高い楽器じゃないんだよ、ということを知ってほしいです。あと、マカフェリ・ギターとかもそうなんですけど、女性ボーカルの方で、ちょっと違ったテイストとして、マンドリンのサウンドや、マカフェリ・ギターのジプシー・ジャズみたいなテイストを入れたいっていう話を聞いたりします。華やかさというか、少しテイストが違う雰囲気を音楽に取り入れたいという方が増えてきた感じがしますね。
●最後にマンドリンの魅力とは?
○サイズ感的にもギターと違ってコンパクトですし、ウクレレまではいかないにしても、気軽に弾ける楽器だと思います。ギターをやってらっしゃる方でも、独特のアーチの感じとか、楽器としての芸術性も高いですし、サウンドもやっぱり華やかでコレでしか出ない音色を持っています。ご自身の音楽ライフにマンドリンを取り入れてもらえたら嬉しいですね。
お勧めの1本 Lasting Army Navy Mandolin
東京都杉並区に工房を構えるベテラン・ルシアー岩本健さんと当店のコラボ/フラット・マンドリンです。氏はフラット・マンドリンやアコースティック・ギターなどを中心に弦楽器を製作されており、特にフラット・マンドリンは、本場のブルーグラス・ミュージシャンにも高い評価を受けています。本器は、可愛らしいルックスと温かみのあるサウンドで人気が高いフラット・マンドリンArmy Navyをモチーフにしたモデルです。指板にアールが付けられており、テンションも柔らかくこれからフラットマンドリンを始められたい方や普段アコギを弾かれている方にもお勧めです。おもなウッドマテリアルは、スプルース単板トップ、メイプル単板サイド&バック、マホガニー・ネック、エボニー指板です。木の温もりが感じられるマットなラッカー・フィニッシュ。内部構造は、サウンドや耐久性を考慮した独自のものになっています。気軽につま弾けるとてもフレンドリーなマンドリンです。ソフトケースが付属いたします。
SHOP INFORMATION
〒166-0004 東京都杉並区阿佐谷南1-12-5 クリオレミントンハウス阿佐ヶ谷104-A
営業時間/12:00~19:00 定休日/水・木曜日
お問い合わせ:03-6824-3897
フラット・マンドリン入門書の紹介
フラット・マンドリンの入門書『はじめてのフラット・マンドリン~ブルーグラスからポップスまでを彩る魔法の楽器の鳴らし方』が弊社より発売中(税込み価格2,640円 )。アコースティック・ギター・マガジン編集部が、自信を持って世に送り出した一冊です。ぜひチェックして見てください!