HEADWAY GUITARS COFFEE GUITAR×モリシー

新たなトーンウッド“Coffee Tree”からなる“コーヒーギター”を、モリシーがテイスティング!

国産アコースティック・ギター・ブランドの雄/ヘッドウェイが提唱する新たなトーンウッド“Coffee Tree(以下:コーヒーツリー)”を用いた“コーヒーギター”。深煎りブラックとカフェラテバーストというユニークなラインナップを、自らのショップ“MORISHIMA COFFEE STAND”も営むコーヒー通/ Awesome City Club のモリシーにテイスティング(試奏)してもらった。その実力は如何に!?

コーヒーギターとは?

 和材やエキゾティック・ウッドなど、さまざまな材を使ったギターの開発を積極的に行なっているヘッドウェイより、コーヒーツリーをボディに使用したモデルが登場した。コーヒーツリーとは硬質ながらも軽量なアメリカ中東部原産の材で、レスポンスが速く、軽快な音響特性が特徴だ。コーヒーツリーとは言っても、一般に飲まれているコーヒーの実がなる木とは異なり、もともとはネイティブ・アメリカンがこの木から取れる実を食用や飲用にしていたのを見たヨーロッパの入植者がコーヒーの代用品としたのが、その名前の由来となっている。
 本モデルではコーヒーから連想される深煎りブラック(FBK)とカフェラテバースト(CLB)の2種類のカラーリングを用意。いずれも使用材は同じだが、深煎りブラックは、ノーマルのXブレイシングの交差位置をブリッジ側に寄せたアドバンスド・リアシフテッドXブレイシング。対象的にカフェラテバーストは、Xブレイシングの交差位置をわずかにサウンドホール側に寄せた’34セミ・フォワード・シフテッドXブレイシングを採用。このようにブレイシングを変えることで、FBKはキレのあるサウンド・キャラクターに、CLBはメロウな音色に仕立てており、各カラーと音色のイメージをマッチさせている。どちらもスモール・ボディのHF、ジャンボ・タイプのHJ、ドレッドノート・タイプのHDがラインナップ。指板にはコーヒー豆をモチーフにしたポジションマークがあしらわれている。

Specifications(共通)
トップ:シトカ・スプルース単板/サイド&バック:ケンタッキー・コーヒーツリー/ネック:アフリカン・マホガニー/指板&ブリッジ:リッチライト/定価:242,000円(税抜価格:220,000円)

深煎りブラック(FBK)

HF-531 Coffee A,S/STD

HJ-531 Coffee A,S/STD

HD-531 Coffee A,S/STD

深煎りブラックの印象は?

ブラック・コーヒーの色合いですね。ペグも金色で、程よい高級感があります。スモール・ボディのHFはけっこうブライトなサウンドですけど、小ぶりなボディのわりには、フワッと鳴っている印象です。指弾きよりもピックでジャカジャカと弾くほうが合うような気がしますね。ジャンボ・タイプのHJはスモール・ボディのHFに比べると、レンジが広くて、HFに低音が足されたような感じ。指弾きとピック弾きの音量差が少ないのが印象に残りました。力強く弾くと気持ちいいと思います。ドレッドノート・タイプのHDは低音域から高音域までバランスがいいです。とてもタッチが繊細なので、ソロ・ギターにもいいかもしれませんね。

カフェラテバースト(CLB)

HF-531 Coffee SF, S/STD

HJ-531 Coffee SF, S/STD

HD-531 Coffee SF, S/STD

カフェラテバーストの印象は?

こちらもまさにカフェラテを思わせるクリームテイストのカラーリングで、丸くまろやかな音色。指弾きをしていると、延々と弾き続けられそうです。スモール・ボディのHFは、普段弾いている小ぶりなマホガニー・ボディのギターと同じような鳴り方なので、個人的には一番安心して弾けますね。ジャンボ・タイプのHJはブラックのHJよりも音は丸いんですけど、ブラックのHJと同じように、ピック弾きと指弾きのダイナミクスがそろって聴こえます。このモデルのジャンボ・タイプは音圧が強く感じられますね。ドレッドノート・タイプのHDはやはりバランスが取れているなと。HJに比べると、低音が少し中音域に寄っているように感じました。

総評

 6本それぞれに個性があって面白かったです。それに深煎りブラックはブラック・コーヒーらしいキレのあるシャープな音、カフェラテバーストはカフェラテらしいマイルドな音と、ここまでコーヒーと音の鳴り方に親和性を持たせているところに驚きました。ブレイシングの位置を変えるだけで、これだけ音のキャラクターが変わるんですね。聞き慣れないコーヒーツリー材を使ったギターということで、どういう音なのかなと思いましたけど、これまで弾いてきたギターとまったく違う感じはしなかったです。むしろ自分好みの音だなと思いました。
 最近はギターに使える木が少なくなってきて、使用が制限されているとか、よく聞きますけど、ギター・メーカーさんもギターを作り続けていかないといけないわけですし、僕らもずっと弾き続けていかないといけないわけですよね。なので、こんな風に新たな材によるギター製作の取り組みをされているのは、プレイヤーである僕らにとってもありがたいことだなと思います。
 もともとコーヒーと音楽には親和性があると思っているんですよ。僕はコーヒー好きが高じて、2020年末に東京の永福町でコーヒースタンドを始めたんですけど、アコースティック・ギターの音って、コーヒーとめちゃめちゃ合うんです。だから家でギターを弾く時も自分でコーヒーを入れますし、レコーディングをする時もコーヒーを飲みながらやったりもします。いつかこのギターで店内用のBGMを作ってみたいですね。
 あえて今回のモデルをコーヒーに例えるなら、“ブラック”はコーヒー豆で言うと、マンデリン。もちろん深煎りの苦めですね。タバコに合う、みたいな(笑)。“カフェラテ”のほうは柔らかい感じなので、ブラジルとか。焙煎はフレンチかシティローストかな。コーヒーも豆の種類や焙煎によって、いろんな香りが楽しめるように、このギターもモデルによって、それぞれの味わいがあるので、弾き比べてみると楽しいんじゃないかなと思います。

アコースティック・ギター・マガジンVol.97 2023年9月号

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取材・文:関口真一郎 スチール&動画撮影:岩佐篤樹

モリシー

1987年、東京都生まれ。元ロック・バンドthattaのメンバーで、Macro_creaM 名義でのソロ活動も行ない、サポート・ミュージシャン、エンジニア、プロデューサー、作曲家として活躍。2013 年からAwesome City Clubに参加し、おもにギター、キーボード、コーラスを担当する。コーヒーには一家言あり、自らのショップ“MORISHIMA COFFEE STAND”を営むアザーサイドも持つ。 https://www.awesomecityclub.com

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