吉澤嘉代子の1927年製 Gibson L-1|AGM GUITAR GRAPH -Volume 98-

デビュー10周年のアニバーサリー・イヤーの締めくくりとして、2025年4月に日比谷野外大音楽堂で開催された“夢で会えたってしょうがないでショー”を成功させたばかりのシンガー・ソングライター、吉澤嘉代子。彼女が愛用する1927年製ギブソンL-1の詳細を見ていこう。

取材・文:鈴木伸明 撮影:小原 啓樹 
※本記事は、アコースティック・ギター・マガジンVol.104の「AGM GUITAR GRAPH -Volume 98-」を抜粋・再編集したものです。

Gibson/1927 L-1

Gibson/1927 L-1

吉澤の音楽を包み込む、貫禄の1本

2019年、吉澤嘉代子が自身のデビュー5周年の記念として手に入れ、大切に愛用しているのが写真のギブソンL-1である。年式は1927年製。100年近くの歴史を刻んできた貫禄溢れる外観と、彼女の柔らかな音楽性が、なんとも言えない絶妙のバランスで共存しているのが興味深い。

熱心なアコースティック・ギター・ファンであっても、1920年代のギターを弾いたことがある人はそう多くはないだろう。1927年といえば、日本は昭和2年。上野〜浅草間で国内初の地下鉄が開通した年である。それほど古くて貴重なギターに、ピックアップを装着して、ステージに連れ出してしまう気概がまず素晴らしい。

ギブソンのL-1は、1902年にアーチトップのギターとして発売された。1926年になって、アーチトップのボディ・シェイプを継承する形で、ギブソン初のフラットトップ・ギターとして大きく仕様変更されている。つまり、ギブソン・フラットトップの元祖がこのL-1なのである。最初期はメイプル・ボディが採用されていたり、アーチ・バック(背面にのみ微妙なアーチがつけられていた)になっているなど、仕様にバラつきがあったようだ。1926年にはオール・マホガニーのL-0も登場している。

1927年製のこの個体は、12フレット・ジョイント、ボディ・トップはスプルース、サイド&バックはマホガニー、ネックもマホガニーで、指板とブリッジはエボニーという仕様だ。

Lシリーズは、1929年頃にボディの下側がスクエアなシェイプにデザイン変更され、1932年には14フレット・ジョイントとなり、1937年に生産終了となる。その後のスモール・ボディ・ギターのスピリットは、LG、Bシリーズに受け継がれていった。

L-1の代表的な使い手といえば、やはりロバート・ジョンソンだろう。ギブソンからも何度か復刻モデルが発売されている。今でもブルース系のプレイヤーからは根強い人気を誇っているギターだ。


吉澤嘉代子が本器との出会いから入手にいたるまでのドラマを語ったコメントは、アコースティック・ギター・マガジン2025年6月号 Vol.104に掲載!

アコースティック・ギター・マガジン2025年6月号 Vol.104

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