20周年を迎えた森山直太朗のツアーは弾き語りの<前篇>、ブルーグラス編成の<中篇>、フルバンド編成の<後篇>と3つに分かれ、現在も継続されている。アコギマガジンWEBとしては、ブルーグラス編成の<中篇>は見逃せない! というわけで、ブルーノート東京へいざ出陣!
ブルーグラス編成で味わう森山直太朗の楽曲たち
森山直太朗の20周年オリジナル・アルバム『素晴らしい世界』には、「すぐそこにNEW DAYS」という楽曲が収められている。名手・西海孝がバンジョー、SSW齊藤ジョニーがギター、若き俊英・山田拓斗がフィドルという布陣を主軸に、ブルーグラス的なアレンジが施されたこの曲は、直太朗の新たな魅力を感じさせてくれた。その流れもあり、こういった編成でのライブ・セットが行なわれることになったのかなと推測しながらブルーノート東京へ向かう。
バンドマスター櫻井大介のピアノが流れ出すと、直太朗が会場の後方から「僕らは死んでゆくのだけれど」を歌い上げながら、ゆっくりと客席を抜けてステージへ。まるでフランク・シナトラのような大スターの立ち振舞にニヤリとしてしまう。続いて前述の「すぐそこにNEW DAYS」。齊藤ジョニーのギター(マーティン000-28)、山田拓斗のフィドル、林はるかのベース、櫻井のアコーディオンという編成だ。ブルーグラスの軽快なリズムで会場の空気が一気に明るくなる。「君のスゴさを君は知らない」ではバック3人のコーラス・ワークのうまさが際立つゴスペル/ソウル的なアレンジだ。名曲「愛し君へ」では直太朗がシェイデッド・フィニッシュのマーティンOM-40LEを手にして熱唱。「papa」ではジョニーがストラトを手に、直太朗の弾き語りに合いの手を入れる。「夏の終わり」はジョニーと拓斗のダブル・マンドリンという珍しいアレンジ。「boku」は再びジョニーがストラト、拓斗がパンディエロという意外なアンサンブルを聴かせてくれた。その後、直太朗のピアノによる「素晴らしい世界」、そして独演でのキラー・チューン「生きてることが辛いなら」で本編を終了させた。さまざまな楽器演奏が達者なメンバーならではの素晴らしいステージだった。
そして、お待ちかねのアンコールでは、メンバー全員が再び集まり、We Banjo 3を彷彿させるアイリッシュ・フィドル・チューンのような新曲「アンコール用アゲアゲソング(仮)」、ジョニーのバンジョーが活躍する新曲「バイバイ」で大団円を迎えた。
本編はあくまでも直太朗の既存楽曲に合わせたアレンジが施され、アンコールでは、このブルーグラス編成のメンバーでセッションしながら作った新曲を披露してくれたことが嬉しかった。直太朗自身のアコギ・プレイも新境地を見せていたように思う。このメンバーでのツアーが再びあれば、直太朗の新たな一面がもっと引き出せるのではと感じられたライブだった。
【ライブ情報】
10月から始まるフルバンド編成の森山直太朗20thアニバーサリーツアー「素晴らしい世界」<後篇>、そして好評に応え2023年1~2月に行なわれる<前篇>弾き語り追加5公演の詳細はこちら。