トレーニング革命! ピッキング動作をデータとして可視化する夢のデバイスを体験

“もっと強く弾く”など、ギターの練習は抽象的に表現されることが多い。このように指示されても、“そうか! もっと強く弾けばいいのか!!”と思うことはまずない。結局は、試行錯誤をくり返し、自ら正解を導き出すしかない。

しかし、技術革新により、このような抽象的な表現が、具体的な視覚情報として示すことができるデバイスが登場した。

このデバイスによるギター演奏教育を推進する中心人物が、ギタリスト/ミュージシャン、ヒット教則本の著者として知られる加茂フミヨシ氏である。

このデバイス開発者の松下宗一郎教授の指導のもと、東京工科大学コンピュータサイエンス学部の大学生たちがこの研究に参画し、2023年3月に加茂氏が発表した博士論文におけるデバイスをさらに改善。そして先頃、現在の最先端の研究を集め、ブースで体験できるイベント“第28回 一般社団法人情報処理学会シンポジウムINTERACTION 2024”が開催され、本デバイスもデモンストレーション展示されていたので、ここではそのレポートを紹介しよう。

※注:2023年3月に加茂氏が発表した博士論文『ギター演奏の運動評価による技量獲得暗黙知の解明と教育への応用』のニュースは、ギター・マガジンWEB(https://guitarmagazine.jp/news/2023-0328-dr-fumiyoshi-kamo)で取り上げているので参照してほしい。


加茂フミヨシ
ブースでデモ演奏を行なう加茂氏。右手首に装着されているのが、ピッキング計測デバイスだ

装置の概要

右手首に装着するデバイス
右手首に装着するデバイス

まず、このデバイスについて説明しよう。写真のノートPC左側にある装置(白の四角に黒のバンドがついたもの)が、右手に装着するデバイスだ。非常に軽量で、装着時の違和感を感じることなくプレイができるのもポイント。

このデバイスのデータは無線でパソコンに送られ、以下のように表示される。

PC表示画面
このように、演奏がPC画面に示される

画面部分の主要ポイントを簡単に説明しておこう。

  1. 青&水色の丸がピッキング・ポイント。丸が大きいほど強いピッキングになる。赤系で示された場合、要改善の演奏となる。また、ダウン・ピッキングは上部に、アップピッキングは下部に丸が表示される。
  2. こちらもピッキング・ポイント。強さは線の高低で示されている。
  3. ピッキングの軌道を記したもの。ヘタな演奏は、不規則な図形を描く。
  4. モーション・キャプチャー。ピッキングをCG動画で確認できる。
  5. 演奏判定モード。よりシビアに判定するモードから、甘めに判定するモードという4段階で選べる。
使用中の様子
100分の2秒で反応するので、タイムラグは感じない。その場で確認できるので、迅速な改善につながる

※注:このデバイスの詳細は、“第28回 一般社団法人情報処理学会シンポジウムINTERACTION 2024”にて論文「腕時計型モーションセンサによるエレキギター演奏運動可視化システム」(https://www.interaction-ipsj.org/2024/program/#interactive1)にて報告されている。

使用しての私見

次に、実際にこのデバイスを付けて演奏した感想を述べさせていただきたい。

まず、何と言っても、自分の演奏の癖が把握できるのが面白い。私の場合、スナップを利かせたカッティングをしているつもりだったが、実際には手首の回転に依存した弾き方だった。このことを加茂氏に解説してもらった途端、演奏改善の手応えがあった。これを数分でも続けていれば、かなりの改善が得られたと思う。

また、プロ・ギタリストの比較もでき、自分との相違点が明確になるのもポイント。つまり、ゴールまでの距離が明確になるのだ。また、日々の改善が実感できるので、モチベーションも維持できるだろう。極端に言うと、ゲーム感覚で取り組めるので、ギターを弾かない人も楽しめる。

なお、気になる値段だが、お手頃価格で提供できる可能性があるという。あらゆる面で希望が持てる!

Profile

加茂フミヨシ

1997年よりミュージシャン/デジタルコンテンツクリエイターとして活動。テクニカルなギター演奏を得意とし、教則本「速弾きがうまくなる理由ヘタな理由」のベストセラーをきっかけに音楽教育メソッドの開発を始める。 ギタリストとして様々なアーティストと共演する傍ら、2005年~2024年まで専門学校日本工学院ミュージックカレッジの教員として数多くのアーティストを育成、2011年に行ったオンライン・ギターレッスンが「Largest Online Guitar Lesson」のギネス世界記録を達成。 2019年より実務と平行してデジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツ研究科に特別奨学生として入学し社会人大学院生として研究活動を始める。2021年にデジタルハリウッド大学大学院を首席修了、2023年東京工科大学大学院を早期修了。博士論文「ギター演奏の運動評価による技量獲得暗黙知の解明と教育への応用」を発表し博士(工学)となる。 2024年4月より玉川大学リベラルアーツ学部 講師としてポピュラー音楽演奏上の暗黙知解明と音楽を軸にしたSTEAM教育の研究に従事。

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