コブクロ『QUARTER CENTURY』で使用されたMartin D-42と、アコギのサウンドメイク

25周年を迎えたコブクロの新作『QUARTER CENTURY』で使われたアコースティック・ギターと、マイキングなどのサウンドメイクについて小渕健太郎が語ってくれた。今回のレコーディングで最も使われたというD-42とともに見ていこう。

インタビュー/撮影=福崎敬太

Aura Spectrum DI Preamp、非常におすすめです

──『QUARTER CENTURY』のレコーディングで使用したギターについて聞かせてください。

 D-42の登場は多かったですね。あとは1938年製のD-28。プリウォーのギターで、爆発的にあれ鳴るんですよね。ストロークとかでけっこう使ったような気がします。あと、Taylorのギャラリー・シリーズの“GSTT”も使いましたね。

Martin/D-42
2000年代初頭に入手したMartinのD-42。「ここにしか咲かない花」でも使用されたコブクロのギター・サウンドを代表する1本で、『QUARTER CENTURY』のレコーディングでも多く使われた。

──最も使ったというD-42はどんなサウンドの特徴がありますか?

 アルペジオがすごく美しいですね。ハイ・フレットで弾いても、サステインが長くて。こうしても(7カポでアルペジオを爪弾く)まだまだ余白がある。ローとハイのバランスも良くて、ブリッジ部分がすごく鳴るんです。

──布袋さんとの「Soul to Soul」のMVではGibsonのHummingbirdをかき鳴らしていましたよね?

 あれはPVだけです。ちょっと色っぽいギターが世界観に合うなと思って。レコーディングでは硬い音が良かったので、たぶんTaylorで弾いたと思います。

──表紙を飾ったアコギ・マガジンVol.41(2009年)のインタビューで、目線の高さからマイキングするようになったと言っていましたが、今はどうしていますか?

 あの時は“直接音”を録りたくないと思って、高くしてやっていましたね。あれも良い音で録れていました。で、デビュー当時は15フレット狙いでマイキングしていて、最近またそれで録ってみたら良いんですよ(笑)。近さとコンプ感がすごく面白くて。「Blame It On The Love Song」も最初にジャラっていうストロークが聴こえるんですけど、あの近い感じの音で始まるのが気持ち良いんですよ。

──使うマイクは?

 だいたい(ノイマン)U67が多いかなぁ。僕がエンジニアの斉藤(敬興)さんに“このマイクにしてください”って言うことはほとんどないんですけど、やっぱり67が多いと思います。

──小渕さん自身で“これは良い音で録れたなぁ”というパートを今作で選ぶとすると?

 そうだなぁ〜……「Blame It On The Love Song」かな。自分でアレンジしたものを笹路(正徳)さんにリアレンジしていただいたんですけど、僕のアレンジはもっと音数が多かったんです。笹路さんはそれを間引いていって、“あ、イントロけっこう間引くんだな”って思ったんですけど、今聴いたらそれがすごく良いんです。この間、改めて自分のデモ・テープを聴いたら、“うわ、ダッサ! 多いな……”と思って(笑)。本当に必要最小限の状態にアレンジしていただいたので、全部の楽器の音が良いんですよね。

──最近のライブ用機材も気になるのですが、今のライブでこだわっているポイントはありますか?

 このツアーから、FISHMANのコンプEQのAura Spectrum DI Preampをかましてみたんです。そうしたら、見違えるように音がステージ上で広がって。ステージから降りてエンジニアと客席で弾いてみたら、“めちゃくちゃ良くなったね!”っていうのがあったんです。非常におすすめですよ。

──導入のきっかけは何かあったんですか?

 ピックアップをFISHMANのPrefix Pro Blend Pro-Man-P51に載せ替えたんです。それ自体はすごく好きなんですけど、ギターによって個体差があるんですよ。それで、最終リハの時に“テイラー、マーチン”とか言いながらストロークをして音を録ってみて、“抜けないかなぁ”と思うギターをどうにかしようと家の機材で色んなことやってみたんです。そしたら、“うっすらコンプだ!”って気づいて。専用のものを買ったほうが良いから、調べ上げて買ったんです。それが大当たりで、2台買いましたね。

『QUARTER CENTURY』コブクロ

Track List

  1. RAISE THE ANCHOR
  2. エンベロープ
  3. Mr.GLORY
  4. Soul to Soul
  5. Blame It On The Love Song
  6. 足跡
  7. ベテルギウス -Over the GLORY DAYS-
  8. 雨粒と花火
  9. Moon Light Party!!
  10. Days
  11. この地球の続きを

ワーナー/WPCL-13605(通常盤)/2024年9月4日リリース

SNSでシェアする

アコースティック・ギター・マガジン

バックナンバー一覧へ