矢井田 瞳が弾き語りツアーで使用するアコースティック・ギター&サウンドシステム

矢井田 瞳が、デビュー25周年となる2025年まで続くアニバーサリー弾き語りツアー“GUITAR TO UTA”をスタート。その初日公演が彼女の誕生日である7月28日に、東京は渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて行なわれた。そこで使用された2本のギターとペダルボード、本ツアーのキー・ビジュアルでも手にしているギブソンのDove Artistを、本人のコメントとともに紹介しよう。

撮影/文=福崎敬太

Guitars

Collings/OM-1G Koa

Collings/OM-1G Koa(前面)
Collings/OM-1G Koa(背面)

1曲を除くすべてを奏でた、弾き語りの相棒

矢井田がほぼ全曲で使用したのがCollingsのOM-1G Koa。2005年製のカスタム品で、ボディ・トップにジャーマン・スプルース、サイド&バックに木目の美しいハワイアン・コアを採用した1本だ。ピックアップにはL.R. BaggsのAnthemを搭載している。

客席で聴けたサウンドは、高音が煌びやかで、キリッとした低音の存在感も大きい印象。「Maze」では指による柔らかいタッチも交えてゆったりと深く、「My Sweet Darlin’」では疾走感のある刻みから大きなストロークまでダイナミックにと、幅広いサウンドをこの1本で奏でていた。

本器のお気に入りポイントとして矢井田は、“繊細で高音の伸びがとても綺麗。ボディが私の身体のサイズにちょうどよく扱いやすい。バンドの中でジャカジャカ弾いても、弾き語りで単体でも、ちょうど良い存在感”と教えてくれた。

L.R. Baggs/Anthem
ピックアップは後付けで、L.R. BaggsのAnthemを採用

Maton/EML-12 “Mini Maton”

Maton/EML-12 "Mini Maton"(前面)
Maton/EML-12 "Mini Maton"(背面)

“匂い”を演出する小ぶりな12弦

「明日からの手紙」のみで使用した、MatonのEML-12 “Mini Maton”。後述するとおりDI直でPAへと送られていたのだが、ビッグな鳴りとコーラスをかけたような広がりを感じた。このサウンドについて、“あえて1、2弦の複弦のチューニングを通常よりもずらすことで、コーラス感が出るようにしてあります”と秘訣を明かしてくれた。

長らく12弦を求めていたそうだが、フルサイズのギターでは“弦を押さえるのも一苦労と言いますか、指が痛くて心が折れる”ということで手を出せていなかったところ、小ぶりな本器と出会ったそうだ。

12弦を選ぶ時の理由としては、“ケルト音楽やインドの音楽など、民族楽器の入った音楽が大好きで、「明日からの手紙」ではレコーディング時に西川進氏の演奏よるエレキ・シタールを入れました。なので、アコギにエフェクターをかける方法では表現し切れない「匂い」みたいなものを演出したい時に使います”とのこと。

AP5 Original
純正のAP5プリアンプ・システム。トレブルを上げ目にして煌びやかさを演出している

Gibson/Dove Artist

Gibson/Dove Artist(前面)
Gibson/Dove Artist(背面)

2004年から愛用している希少なDove Artist

ライブでは登場しなかったが、サブとして用意されたGibsonのDove Artist。スリム・ドレッドノート・シェイプのCL-40 Artistの系譜を引き継ぎ、1999〜2006年の8年間のみ生産された希少なモデルだ。

シリアルナンバーから推察するに2003年製の個体で、美しい木目のフィギュアド・メイプル・サイド&バックや3ピース・メイプル・ネックが印象的な1本。

入手の経緯については、“本番前の楽屋ギターとして色んな有名アーティストさんの楽屋を旅していた子で、ローディさんに勧められてゲットした”そうだ。

ピックアップ・システムにL.R. BaggsのDual Sourceを追加しており、ステレオ出力で使用。曰く“ステレオの片方は素の音、もう片方は歪みの音にして混ぜる、といったやり方で、歪みなどをかけた際に、音自体がやせてしまうのを防いでいます”とのこと。

L.R. Baggs/Dual Source
コンデンサー・マイクとピエゾの信号をミックスできるL.R. BaggsのDual Source。ステレオで出力している

Pick & Capo

ピック
ピックはクレイトンのティアドロップ型で厚みは0.80mm
カポ
カイザーのクイック・チェンジ・カポが用意されていた

Pedalboard

矢井田瞳のペダルボード
①BOSS/TU-3(チューナー)、② BOSS/GT-1000 CORE(マルチ・エフェクター)、③Rupert Neve Designs/RNDI(DI)、④BOSS/FS-6(フット・スイッチ)、⑤IK Multimedia/iRig BlueTurn(フット・スイッチ)

ディレイを使ったバッキング・アプローチも

OM-1G Koaをつなげて使用した、矢井田のメイン・ボード。接続順は①〜③の番号順で、フット・スイッチ④はマルチ・エフェクター②のパッチ送り用、Bluetoothフット・スイッチ⑤はiPadに表示する歌詞の切り替えに使用している。チューナー①はミュート・スイッチ的に使うこともあった。

サウンドメイクの肝は②で、楽曲ごとにプリセットを組んでいる。サウンド感やリバーブの深さが曲ごとに細かく変えられていた印象で、8分音符で鳴るように設定したディレイでのバッキングや、リバース・ディレイのような空間的なアプローチも聴けた。

各音色の作り方については、“メインとなる音色(Default)のパッチを作成して、そこから各楽曲の世界観を表現するのに必要なエフェクトを選んで音色を作り込んでいきます。今回のツアーでは「ギターと歌」というとてもシンプルな編成での表現になってきますので、歌とギターとの「立ち位置」を意識した音を目指しています。歌を支えるギター、というイメージでしょうか。あとは前後の曲のつながりなどによって微妙に調整をしてあります”とのこと。

また②、スローな揺らぎを演出するロータリー・スピーカー・シミュレーターや、レンジを狭くするイメージでエレキ・ギター・アンプのシミュレーターを設定したパッチもあったそうだ。

なお、②のスイッチにはエフェクティブになる設定をアサインしており、“押すか押さないかは当日のノリだったりします”という。

DI③は、彼女が尊敬するHEATWAVEの山口洋からの薦めで購入。“音が太く、温かく強いです”とのことで、DIの特性を活かすためにも、つなぐエフェクターの数を極力少なくしている。

アンコールで登場した12弦ギター=EML-12 “Mini Maton”にはチューナーもつながず、DI直でPAへと送られていた。

Radial/J48
12弦用のシステム

Radial/J48(DI)は会場でのレンタルだが、“アクティブDIならではのレンジの広さ、ノイズの低さなど、アコギ・サウンドとの相性が良かった”とのこと。シールドにはKAMINARI GUITARSのAcoustic Cableを採用している。

“矢井田 瞳 弾き語りツアー 〜GUITAR TO UTA 24-25〜”公演情報

※★の公演は“矢井田 瞳 弾き語りツアー 〜GUITAR TO UTA 24-25 Billboard Live Special〜”

ツアー情報/チケット詳細:https://yaiko.jp/event/352684

最新リリース情報

矢井田 瞳「アイノロイ」各音楽サイトにて好評配信中

DL&Streaming:https://yaiko.lnk.to/AINOROI
Music Video:https://www.youtube.com/watch?v=faAD-YGNwKE

SNSでシェアする

アコースティック・ギター・マガジン

バックナンバー一覧へ